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複数の箱を作ることができる展開図

ここは「2つの異なる箱を作ることができる展開図」を公開しているページです. たとえば以下の図を見て下さい.

左端の展開図は,中央の青い線にしたがって折ると,1×1×5のサイズの箱ができますが, 右の赤い線にしたがって折ると,1×2×3のサイズの箱ができます. 表面積は同じで,体積が違うところがポイントです. 最近読んだ本 「Geometric Folding Algorithms: Linkages, Origami, Polyhedra」 (by Erik D. Demaine and Joseph O'Rourke) の図25.53にこうした性質の展開図が2つ描かれています. これ以外にもこうした展開図はないだろうか,と思ったのがこの研究の発端です. 今のところ,こうした展開図が2000個以上あることがわかりました. (2008年8月現在,9000個以上(!!)あることがわかりました. 以下のCCCG 2008の 予稿の長いバージョンに詳細が書かれています.)

本研究については,以下のところで発表しました.それぞれで使用した原稿などを公開しておくので, 詳細はそこを御覧下さい.

Gathering for Gardner(マーチン・ガードナーを囲む会)
2010年3月24日〜28日にアトランタで開催されたG4G9で この展開図を紙のパズルとして製作したものを配布しました. 私が選んだパズルとしての展開図のパターンを公開(PDF, EPS)しておきます.これらはパズルとしてかなり楽しめます. 実際のパズルは右の写真の通り,1mmの凸凹や折りのための切れ込みがつけてあり, 折った部分が噛み合って自立するようになっています. パズルの製作は東京紙器さんにお願いしました. とても精巧な加工をしてくれるので,とても助かりました.
第4回折り紙の科学・数学・教育 研究集会
2008年6月22日(日曜日)の朝一番の発表です. 無事に発表が終わりました. 当日使ったパワーポイントのファイルを置いておきますので, 興味のある方はどうぞ.
The 20th Canadian Conference on Computational Geometry (CCCG 2008)
2008年8月13日〜15日の期間,カナダで開催された国際会議です. 8月13日の朝に発表が無事終わりました. 予稿には短いバージョン長いバージョンがあります. 英語なのですが,図が多いので許して下さい.

以下の各ページでは,面積別に展開図の一覧を表示しています. 展開図として有効なのか無効なのか,微妙なものがあるのですが, 判断基準は次の通りです.

角がくっついているとき
これは有効です.角でつながってるだけなら,大丈夫です. 次に例をあげておきます.
        
        
        
        
        
辺がくっついているとき
箱を組み立てるときに,辺を切らないといけない場合です. ここではこれは無効と判断しています. 一般に2つの別々の箱を作るためには違う辺を切らないといけないので, これはいけないだろうと思っています. 解答の中にはもしかしたら「同じ辺を切ると別々の箱ができる」 パターンもあるかもしれませんが,チェックしていません. 次に例をあげておきます.
        
        
        
        
        
        
四角形が重なっているとき
箱の一部の四角形が重なっている場合です.以下の例では,面積22のはずなのに, 四角形が21個しかありません.つまり重なりがあります. しかも2通りの組み立て方では,一般に重なっている部分が違います. これは有効な展開図とは言いにくいです.
        
        
        
        
        

なお,上記の「無効な展開図」をプログラムでチェックしてはじくことは簡単です. 具体的には

  1. 四角形の数を数えて,足りないものは無効
  2. 内部に穴の空いているものは無効(これは外周をぐるりと回って面積を調べて, 想定している面積と比較すればすぐわかります.)
とすれば効率良くはじくことができます. 今回それをやらなかったのは「はたしてこういうパターンはどれくらいの頻度で現れるのだろう」 という興味があったからです.正しい展開図2136個に対して無効な展開図29個ですから, かなり少ないことがわかりました.

面積22のとき
正しい展開図:538個, 無効な展開図18個; すべての展開図

[追記] 2011年3月に松井寛彰くんが面積22のケースの全探索に成功しました. 面積22の展開図で1×1×5と1×2×3の両方の箱が折れる展開図の個数は2263個 あることがわかりました.すばらしい. 本当の意味でのすべての展開図も公開します.ただしデカいので要注意です.

面積30のとき
正しい展開図:72個, 無効な展開図1個; すべての展開図
面積34のとき
正しい展開図:708個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積38のとき
正しい展開図:41個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積46のとき
正しい展開図:660個, 無効な展開図8個; すべての展開図
面積54のとき
正しい展開図:3個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積58のとき
正しい展開図:37個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積62のとき
正しい展開図:5個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積64のとき
正しい展開図:56個, 無効な展開図2個; すべての展開図
面積70のとき
正しい展開図:14個, 無効な展開図0個; すべての展開図
面積88のとき
正しい展開図:2個, 無効な展開図0個; すべての展開図
合計
正しい展開図:2136個, 無効な展開図29個.

なお,それぞれの展開図からどうやって2通りの箱を作るのか,という具体的な折り方は, このデータには入っていません.パズルとして,簡単なものからかなり難しいものもありますので, そこはお楽しみ下さい :-)

[追記] 2008年8月11日に伊藤剛志さんが 上記の展開図の中に3通りの箱を折ることのできる展開図がないかどうかを プログラムでチェックしてくれました.結局見つからなかったそうです. また,面積22のときの無効な展開図は当初は15個と書いてあったのですが, 正しくは18個でした.ご指摘どうもありがとうございます.


Last modified: Thu Aug 21 13:47:40 JST 2008
by Ryuhei Uehara (uehara@jaist.ac.jp)
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