総括

岩間一雄
京都大学大学院情報学研究科

NHCのプロジェクトはメンバーの皆様の頑張りで至極順調である.申請書の段 階から何回かミーティングを持ち,普段中々出来ない我々の研究の本質的目標 に関する議論を重ねることが出来た.それが良い結果につながったと信じてい る.取りまとめをさせて頂いたことで,私自身大きな勉強にもなったし,こう いったプロジェクトのコツのようなものもちょっと分かって来た様な気がして いる.しかし,まあそういった事を書くのは少なくとも今は勘弁して頂きたい. ということで,以下は全く関係無いのであるが,最近(質の悪い)週刊誌に目 を通していて「なるほどな...」という文章に出会った.

世の中の人を大雑把に分類するとすれば,結局は,人品骨柄の卑しからぬ人と 卑しい人に二分されてしまうのだそうである.例えば,若い人はご存じないか もしれないが,犬猿の仲であった福田赳夫と田中角栄,更に歴史を遡れば織田 信長と豊臣秀吉などはその典型であろう.我々の近辺でも,思い浮かべて見れ ば,あの人とあの人は前者,あの人とこの人は後者,というように比較的簡単 に見分けがついてしまう,ニヤニヤ...(勿論,この分類はそのコミュニティ の中ではという意味で,あるコミュニティで後者人間が別のコミュニティに行 けばたちまち前者に昇格する場合もあるし,また逆もある.更には歴史の浅い 国,例えば米国等ではあまり気にしない様である.)

例えば,「賞」の類いは大抵前者人間がもらうことに決まっている.その理由 は単純で,後者人間に賞を渡すには真面目に理由を考えないといけない(従っ て明白な理由がある場合は勿論このような分類は関係ない).前者人間の場合 も理由が全く必要ないとは言わないが,まあ当たり障りの無いものをくっつけ ておけば多くの人が納得する.推薦委員会の人も結構忙しいので,楽な方向に 走るのは仕方がないのである.同じアイデアであるが,他人に推されるという 場面でも前者人間は後者人間に比べて圧倒的に強い.

しかし勿論,社会は前者人間だけでは動かない.後者人間の一つの特徴は「恥 をかくことを恐れない」ことである.従って,結構ダイナミックに行動をする ことが可能で,それが目論見通りの成功に結び付くことも少なくない.という か,直接成功を狙いに行くのが行動の基本である.(世間はそれほど甘くはな いので,多くの場合はうまく行かないのではあるが....)前者人間はやは り「失敗しないことが成功に結び付く」というのが基本的姿勢であるから,ど うしてもダイナミズムに欠ける面がある.但し,失敗しないで行動しておけば 確率的に成功(しかも結構大きなやつが)が飛込んでくることも少なからずあ るので,成功することが少ないとも言えないのである.

前に挙げた田中角栄と豊臣秀吉であるが,いずれもその末期はあまり誉められ たものではなかった.これは成功した後者人間の顛落の代表的パターンであっ て,本人だけでなく,多くの人に被害をもたらす.いずれも,本人の責任が大 部分である(年を取って若い時の判断力が鈍った結果である)のは言うまでも ないが,それに加えて前者人間の復習(復権)という面も否定できない.これ は,それが良い悪いという事ではなく,社会というのは自然とそのように動く のだそうである.上のお二人も,この法則が分かっていたら,あるいはそれを 分からせる良い側近がいたら,別の結果になっていたかもしれない.

こういう文章が目に留まってしまうのも年をとった証拠である.本特定研究の 場合は,是非「成功を直接狙って」ダイナミックに行動して頂きたいと願って いる.たとえうまく行かなくても,それを回りがうまくサポートして,「転ん でもただでは起きない」体制を作れるのが組織の力であると考えている.


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Last modified: Thu Jul 21 08:15:48 JST 2005
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