第9回シンポ 概要一覧

一般講演 1 ネットワーク指標と実応用

O1-1:山形与志樹、瀬谷創、村上大輔(国立環境研究所)
題目:グリーン成長の国際ネットワーク波及:主成分空間相関マトリックスを用いた要因分析
概要: 経済成長だけではなく自然環境の悪化なども考慮したグリーン成長に関する国際的な時系列データを用いて、グリーン成長の国際波及に関する要因分析を、地 理、貿易、宗教、国際関係などの複数の空間相関行列Wの主成分を説明変数として扱うことができる新たな空間計量経済モデルを構築して行った。分析の結果、 従来手法では見いだすことのできなかった、国際社会ネットワーク関係(の成分)がグリーン成長の国際波及に影響していることが示された。

O1-2:越前谷直之,白山晋(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)
題目:電力ネットワークの効率性及び耐障害性に対する発電機位置の影響
概要: ネットワーク分析によって電力網の構造の調査やその耐障害性評価が広く行われている.また,大規模なネットワークの分析のために構造に基づいた効率性の指 標の提案がなされている.しかし,電力網においては,構造だけでなく電力の流れも重要な要素であり,この電力の流れは発電機の位置により大きく変化する. 既存研究には,電力工学で用いられる手法によって電力の流れを考慮し耐障害性評価を行っているものもあるが,そこでは発電機の位置は固定されている.一 方,次世代型電力網では,分散型電源が各所に配置されるものと予想されるため,発電機の位置を考慮にいれた分析を行うことは重要である.本研究では,電力 工学における手法を用いて発電機の位置に応じた電力の流れを計算し,効率性と耐障害性に発電機位置が与える影響を明らかにする.

O1-3:小林博樹(東京大学空間情報科学研究センター), 岩井将行(東京大学生産技術研究所), 瀬崎薫(東京大学空間情報科学研究センター, 東京大学生産技術研究所)
題目:野生動物装着型センサノードの伝書鳩指向な空間情報センシング機構
概要: 本研究は野生動物装着型センサノードの伝書鳩指向な空間情報センシング機構の実現を目的としている。従来の野生動物装着型センサは装着可能な重量の制限か ら高度化が困難とされていた。ここでは動物行動を利用した「動物間ネットワークシステム」や「動物用ワイヤレス給電システム」で解決を試みる。この場合重 要なことは、単なるセンサの小型化や高度化ではなく、野生動物の生態をも利用することである。

O1-4:大森崇弘,白山晋(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)
題目:視線計測を用いたグラフレイアウトの視認性評価
概要: 手作業によるグラフレイアウトの修正には個人差があるが,視認性を高める傾向があるとされる.本研究では,視認性の高いレイアウトの特徴を明らかにするた めに,修正作業時の視線を計測し,いくつかのネットワークの定量的指標と関連付けて分析する.

一般講演 2 ソーシャルネットとコミュニティ

O2-1:臼井翔平(名古屋大学情報科学研究科社会システム情報学専攻), 鳥海不二夫(東京大学工学系研究科システム創生学専攻) , 平山高嗣, 榎堀優, 間瀬健二(名古屋大学情報科学研究科社会システム情報学専攻)
題目:生成モデルがネットワーク構造に与える影響の分析
概要: 近年,SNSの利用の拡大に伴って,実社会において観測することの困難な人間関係を,電子的なデータとして具現化することが可能となり,人間関係の本質を 捉えることを目指した研究が進んでいる.また,ユーザー間の友人ネットワークの構造を表現するためにネットワーク生成モデルも数多く提案されている.本研 究ではそれぞれの手法がネットワーク構造にどのように影響を与えているかを分析することによって,より多くの友人ネットワークをより高精度で表現可能にす ることを目的とする.

O2-2:小島一浩(独立行政法人 産業技術総合研究所)
題目:東日本大震災の復興における支援ネットワークの状況に関して:気仙沼市の実践例
概要: 2011年3月11日に発生した東日本大震災に対して、政府、地方自治体、NPO/NGO間の連携支援の重要性が問われている。そのような状況において、 政府機関の一部である独立行政法人産業技術総合研究所は、独自プロジェクトとして、被災地の人の絆再生を目的として、「気仙沼絆プロジェクト」を実践して きた。2011年1月28日にインフラ自立型トレーラハウスを、気仙沼市の最大仮設住宅近隣に設置、地元NPOと協働し、人と地域・人との関係性再構築実 証実験を行ってきた。本発表では、この1年間で行ってきた活動の中間報告を行うものである。

O2-3:岡本洋(富士ゼロックス(株)研究技術開発本部)
題目:離散マルコフ過程に基づくネットワーククラスタリング
概要: 離散マルコフ過程に基づいてネットワークをクラスタリングする方法を提案する。この方法は、重なりを持つクラスタ(コミュニティ)構造をネットワークから 抽出する。さらにこの方法によれば、リンクに方向や重みがあるネットワークのクラスタリングも可能である。クラスタリング実行のための計算量は、(リンク 数)×(クラスタ数)に比例する。

一般講演 3 ネットワーク生成と頑健性

O3-1:豊泉洋(早稲田大学)
題目:Generating Uncorrelated and Markovian Complex Networks
概要: To analyze complex networks and the phenomena happened on them, it is important to find a specific method to generate many statistically identical complex networks that share certain statis- tical properties. We give a new generation method to give an uncorrelated network and a Markovian complex network that has exactly same statistical features as the marginal degree distribution and degree-degree correlation of a real target network. In addition, we give a new method to generate a completely-uncorrelated scale free network.

O3-2:澤井秀文 (情報通信研究機構 未来ICT研究所)
題目:階層型 n-Star ネットワークにおける頑健性の評価
概要: 著者は先に、ACO (Ant-Colony Optimization)からヒントを得た方法から、平均経路長Lが絶対的に小さくなるスモール・ワールド・ネットワーク(n-Starネットワークと 呼ぶ)を自己組織的に創発する方法を提案した。そして、このネットワークの実世界応用の一つとして、次世代における世界の航空網の再編に利用できる可能性 を示した。また、n-Starネットワークは、従来提案されている2極次数分布ネットワークやスケール・フリーネットワークと比較して、故障と攻撃の両方 に強い特性を持つだけでなく、故障確率が相当大きい場合でもスモール・ワールド性を保持できることを示した。さらに、n-Starネットワークを様々なタ イプの階層型ネットワークに拡張し、各ネットワーク構造の理論解析を行って、総ノード数N, 平均次数, 平均経路長L, クラスタリング係数Cなどの様々なネットワークパラメータを、スター・ノード数n, 周辺ノード数N0, 階層数lにより一般的に求める公式を導出した。本論文では、新しいフラクタル型のネットワークを提案すると共に、次数相関rをこれらのパラメータ(n, N0, l )により一般的に求める公式を導く。そして、これまで提案したn-Starネットワークとそれに基づいて拡張した6種の階層型n-Starネットワークの 特性を、ランダムグラフ、スケール・フリーネットワーク(BAモデル)、2極次数分布ネットワークの計10種のネットワークと共に比較するため、リンク故 障やノード故障時における各ネットワーク構造の頑健性を、平均経路長L, クラスタリング係数C, 次数相関rとの関係に着目しながら評価する。

O3-3:盛田雄輝, 川端豪(関西学院大学)
題目:アタック及びエラー耐性に注目した複雑ネットワークの成長メカニズム
概要: 近年、社会には様々なネットワークが構成されており、私達にとって必要不可欠なものとなっている。これらのネットワークは、規則的でもなくランダムに結び ついていることでもなく複雑ネットワークとして様々な研究が行われてきた。その結果、これらの実社会ネットワークの多くは、スケールフリーネットワーク構 造となることがしめされている。本研究は、バラバシ氏らによって提案されたネットワークの頑健性の評価方法、アタック耐性、エラー耐性に注目したネット ワークの成長メカニズムの解明を目的とし、ノードに対する次数制限、平均最短距離の維持、優先的選択の改良、などの種々の試みをネットワークの成長シミュ レーションに対して行い、エラー耐性、アタック耐性についての評価をし、効率かつ頑健なネットワークの成長メカニズムを検討する。

O3-4:小牧 嵩征, 林 幸雄(JAIST)
題目:非同期な情報交換を行うメッセージフェリーを用いたルーティング手法
概要: 動的な通信環境を想定したDTN(delay/disruption-tolerant networking)において, 情報を蓄積し運搬する役割を果たすメッセージフェリーを用いた 種々のルーティング手法がこれまで提案されてきている. 我々は,複数のメッセージフェリーがノードを介して非同期に交渉する 方法に着目して, 人口分布のように偏ったノードの空間配置を持つネットワーク上で 経路探索するアルゴリズムを提案し, その効率性を議論する.

ポスター発表

P1:鈴木崇史,田之上貴之(東洋大学社会学部)
題目:複数の中心性指標と中心化傾向を用いたQ&Aコミュニティネットワークのカテゴリの特徴分析
概要: Webの発達にともないQ&Aコミュニティ上での知識交換がさかんになっている.本研究では,Q&Aコミュニティの質問者-回答者グラフ を質問カテゴリごとに作成し,4種類の中心性指標にもとづく中心化傾向を計算,カーネル主成分分析を適用した.その結果,ノード数上位のカテゴリが大きく 3つのグループに分かれることが明らかとなった.これは,それぞれのカテゴリのネットワーク構造の違いをあらわし,コミュニケーションスタイルの違いを反 映するものである.

P2:牛丸元, 四本雅人(明治大学)
題目:企業間ネットワークのディスコース分析
概要: 本研究は,「スターアライアンス」というコールマン型の企業間ネットワークと,「ポイ探と」いうステータス型の企業間ネットワークにみられる,ディスコー スの差異分析をしたものである。その結果,次の3点の仮説的発見が導出された。  1)仮説的発見1:「ネットワークの型が異なれば,ネットワーク内におけるディスコースにも差異がみられる」。スターアライアンスのようなコールマン型 ネットワークでは,互恵的ディスコースが使用され協力的関係がみられた。一方で,企業ポイントグループのようなステータス型ネットワークでは,競争的な ディスコースが展開されていた。  2)仮説的発見2:「不確実性が低い場合にはレシプロカルなディスコースが多用され,協力関係が構築される。一方,不確実性が高い場合には競争的なディ スコースが展開され,非協力が選択される」。航空業界のように会社数が限られているような業界では,ネットワークの大きさも予測可能で,協力的なディス コースを用いることを選択する行為がみられた。一方,企業ポイントのように企業数が無限に存在するようなところでは,ネットワークの大きさは予測不可能 で,ユニレイテラルなディスコースを用いることを選択することが考えられる。  3)仮説的発見3:「コールマン型ネットワークに所属する企業においても,高いレントを獲得している企業は,ステータス型のような他の特性を有するネッ トワークに所属する可能性が高い」。コールマン型ネットワークでは,各企業は平均的レントしか獲得できないが,ステータス型ネットワークでは,ステータス の高い企業は,高いレントを獲得できる。

 
P3:松井加奈絵(慶應義塾大学メディアデザイン研究科), 山形与志樹, 砂原秀樹(国立環境研究所地球環境研究センター)
題目:電力自由化ゲーミングシミュレーションの提案と検証
概要: 東日本大震災後の電力需給の逼迫に伴って、電力自由化の導入など電力における社会システムの在り方が大きく変化する可能 性がある。本研究では、欧米などで既に導入されている電力自由化に着目し、 日本において電力自由化が実現した社会をゲーミングシミュレーションにて体験 できるシステムをネットワーク上に構築した。 本システムにおいて参加者は、世帯/事業体どちらか立場の最終消費者としての 役割を持ち、どのような電力利用を行うのか意思決定を行い、それが支出、CO2といった結果 として換算される。これらの意思決定のプロセス、結果のログを元に、今後想定される社会的変化が起こった場合、人はどのような情報に対して反応 し、 意思決定を行うのかを検証した

P4:豊田規人(北海道情報大学)
題目:Network 上のParrondo’s paradoxの原因についての考察
概要: 主にスケールフリー上で,どういったことがparrondo paradox が引き起こされるのか考察し,新たなからくりがあるのではないかということを議論する.

P5:豊田規人,西出充伸(北海道情報大学)
題目:Dorogovtsev-Mendes networkに於けるBraess like paradoxの考察
概要: Dorogovtsev-Mendes networkに於いて交通量に関するBraess like paradoxについて,理論的及びそれに立脚したコンピューターシミュレーション実験によって議論する

P6:河本弘和, 田村光太郎(東京工業大学), 高安秀樹(ソニーCSL), 高安美佐子(東京工業大学)
題目:企業間取引ネットワークにおける脆弱性の解析
概要: 一つ一つの企業をノードとみなし、企業間の取引関係をお金の流れに沿って有向リンクとみなすことで、たくさんの企業は大規模な複雑ネットワークを形成して いる。企業間取引ネットワークは次数分布が累積で1.3乗のベキ分布となる典型的なスケールフリーネットワークである。このような企業間ネットワークにつ いて、構造的な頑強性の研究は、経済現象を新たな視点から捉えなおすことになる。そこで、今回は主に、100万社の企業間ネットワークのリンクを除去した ときに、どのように構造が崩壊していくのかをシミュレーションで解析した結果を示す。また、シミュレーションの結果をスケールフリーネットワーク上のパー コレーションの平均場近似解と比較し、議論する。

P7:杉澤優馬, 伏見卓恭, 斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:株価時系列データによる変化点検出法の評価
概要: 尤度比検定に基づき、再帰的に変化点を求める方法について、株価時系列データを用いて評価する。 本論文の実験では、東証1部の830社の年ごとの株価のデータを用い、各銘柄ごとに求まる変化点数の分布を年ごとに評価していく。

P8:小林えり, 伏見卓恭, 斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:オブジェクト間の非類似度の違いによる全体類似度構造の分析
概要: 複数のレビューサイトに対してコサイン類似度やカイ自乗値などを用いてオブジェクト間の類似度を求める。オブジェクトをノードとみなし、非類似度の小さい ノードのペアから順にリンクを付与して構成される成長ネットワークの全体構造を分析する。 実験ではアニメ、漫画に関するレビューサイトに着目し、アニメ、漫画などをオブジェクトとして使用し、ノード数や連結成分数、ジニ係数などの変化曲線を評 価する。

P9:木村唯香, 伏見卓恭, 斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:レビューサイトによる時間減衰ダイナミクスを持つTDVモデルの評価
概要: レビューデータを用いた時間減衰ダイナミクスをもつTDVモデルの評価について報告する。これまでのTDVモデルは化粧品レビューサイト(@cosme) のデータをもとに比較分析された。本論文では書籍レビューサイト(ブクログ)のデータを用い、モデルを評価し、化粧品レビューサイトでの結果との違いにつ いて考察する。

P10:Xing Binbin, 林幸雄(JAIST)
題目:Onion-like構造とネットワークの頑健性及び通信効率
概要: onion-like構造は同次数または近い次数を持つノード同士が結合やすく、高Assortivityを持つネットワーク構造である。次数分布が冪乗 分布に従う場合、無相関と比べてonion-like構造は高い頑健性を持つことが解析的に近年示されている。しかし、onion-likeネットワーク の通信効率(最短経路の平均ホップ数)や、次数分布が冪乗分布ではない場合で次数相関が通信効率や頑健性に与える影響は明らかになってない。本研究では、 コンフィグレーションモデルでonion-likeネットワークを生成し、冪乗分布と指数分布のそれぞれについて通信効率及び頑健性を調べた。

P11:小牧 嵩征, 林 幸雄(JAIST)
題目:レビィ飛行的な探索構造が埋め込まれた地理的ネットワークの効率性
概要: 人口分布を用いた再帰分割により生成される地理的ネットワークを提案する.そのネットワーク上の一様乱歩によるリンクの訪問頻度がべき乗分布に従うことか ら,レビィ飛行的な構造が埋め込まれていると言える.レビィ飛行は,位置が全く不明な餌を探すには効率が良く, 生物の最適戦略として知られている.そこで,上記の地理的ネットワーク上の乱歩探索と,四角格子でのレビィ飛行による探索を比較した結果,人口分布に従っ た非一様な餌分布において提案したネットワークがより効率的であることがわかった.

P12:安藤美都, 田中敦(山形大学)
題目:地域型スーパーにおける同時購入商品ネットワークの分析
概要: インターネットで商品を購入する際、関連商品へのリンクが載っていることが多く、近年物と物の繋がりは非常に重要となってきている。そこで本研究では、地 域型スーパーにおける同時に購入された商品の繋がりからネットワークを作成・分析を行い、その結果を報告する。また、年齢別・曜日別等によって、消費者の 購買行動がどのように変化するのか、それぞれどのような特徴が見られるか等についても言及する。

P13:田村光太郎, 三浦航(東工大院総理工), 北島聡, 後藤隼人(株式会社帝国データバンク), 高安秀樹(ソニーCSL), 高安美佐子(東工大院総理工)
題目:企業間ネットワークにおけるお金の輸送と局在
概要: 企業間ネットワーク上におけるノード間の相互作用から輸送方程式をくみ上げる。この輸送方程式の定常状態における解が、実際の売上に対応する量であるとさ れている。企業間ネットワークの特徴的なスケールフリー構造と、企業の財務量の統計性の間の関係を説明するモデルとして考えられている。 この輸送方程式は、輸送の性質として空間構造に依存した相転移を起こすことが理論的にわかっている。相転移は輸送の拡散性に基づくものであり、解(お金) の局在性に強くかかわる。空間構造に依存して、この解がどのように局在するかについて注目した。実際の企業間ネットワークにおいて、お金 が局在する範囲が企業間のどのような関係によって構成されているのかについて調べる。

P14:小出明弘, 斉藤和巳(静岡県立大学), 風間一洋(和歌山大学), 鳥海不二夫(東京大学)
題目:情報拡散軌跡の基本統計量分析
概要: 本稿では,Twitter上でのリツイートを対象に,その基本統計量を分析する.具体的には,観測されたリツイートをフォローネットワークなどに流すこと により,ツイートの拡散系列を作成し,その特徴を分析する.

P15:上之原剛, 今井哲郎, 田中敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目:複雑ネットワーク手法によるサッカーの試合に見られる動的ネットワークの研究
概要: 近年,スポーツの科学分析が一般化されており,我々が扱うことが可能なデータも多様化してきた.本研究ではサッカーの試合に於ける,時間経過毎に変化する 戦況の変化と試合の勝敗の相関に着目し,その中でも試合の重要な要素の一つであるパス交換を基に作成したネットワークを用い,動的な分析,評価を行った. 動的なネットワークの一つとして,試合全体を一つのテンポラルネットワークとして評価した場合に付いても言及する.

P16:伏見卓恭,斉藤和巳,池田哲夫(静岡県立大学),風間一洋(和歌山大学)
題目:道路ネットワークでの機能コミュニティ抽出による地域特性分析
概要: 本稿では,交差点をノード,交差点間の道路をリンクとした道路ネットワークに対して,類似した機能を有するノード群を抽出する手法を適用する.地形的特徴 や地域の機能などに合わせた構造の道路が敷設されていると想定され,それらの機能ごとにノードを分類し,地域特性を分析する.静岡市と浜松市の道路ネット ワークを用いた実験では,機能コミュニティとして,駅周辺や山間部,商業地域など,類似した特性を持つ地域を抽出できることを示す.

P17:近藤俊宏, 林幸雄(JAIST)
題目:都市道路網の歴史的変化 -東京23区
概要: 都市道路網が時代によってどのように変化していったのかを東京23区の江戸、明治、現代の地図をもとに道路網で囲まれた土地の面積分布について調べた

P18:鈴木努(情報・システム研究機構)
題目:社会ネットワークと概念ネットワークの中心性比較―地域SNSの日記コメントを題材に
概要: SNSには会員がそれぞれ日記を書いたり、またお互いの日記にコメントを付けたりするコミュニケーション機能がある。本報告では地域SNSにおける会員の 日記とそれに対するコメントのデータから、誰が誰にコメントしたかというコメント関係ネットワークと日記や書き込みで使われた語の共起ネットワークを抽出 し、それらのネットワーク間の関係を分析する。コメント関係ネットワークは一種の社会ネットワークであり、中心性指標を用いてコメントのやりとりにおける 中心性を評価することができる。しかし、この中心性は必ずしも書き込まれた内容の話題としての中心性とは一致しない。話題における中心性は語の共起ネット ワークから算出することができるが、コメント関係ネットワークと語の共起ネットワークの中心性はそれぞれノードとなる要素(人や語)が違うため単純には比 較できない。そこで、各会員が書き込みに使用した語の中心性を反映した得点を与え、それと各会員のネットワーク中心性を比較することで、コメント関係ネッ トワークの中心性と語の共起ネットワークの両方を使った中心性比較が可能になる。同様にそれぞれの語の使用者がどのようなネットワーク的地位を占めている かを分析することもできる。これらの中心性比較の方法やその可視化についてある地域SNSの実例を用いて示す。

P19:ブイ・スアン・フォン, 上野雄史, 榊原源基, 斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:株価変動のネットワーク分析
概要: 本研究では2001年から2011年までの東証1部の株価データを対象に、株価変動の類似度を用いて、業種内外での傾向について評価実験を行う。実験結果 はMantegna(1999)と同様の結果となり、経済的な取引を行っているもの同士で、例えば、機械、非鉄、自動車、総合商社、鉄鋼などで高い類似性 を示すことを確認した。企業間の経済的な類似性を検証することにおいて株価データは有効である可能性が高いことも確認した。

P20:澤井秀文 (情報通信研究機構 未来ICT研究所)
題目:レジリエントなスモール・ワールドネットワークの提案
概要: 著者は先に、ACO (Ant-Colony Optimization)からヒントを得た方法から、平均経路長Lが絶対的に小さくなるスモール・ワールド・ネットワーク(n-Starネットワークと 呼ぶ)を自己組織的に創発する方法を提案し、このネットワークが故障と攻撃の両方に強い特性(頑健性)を持つだけでなく、故障確率が相当大きい場合でもス モール・ワールド性を保持できることを示した。本報告では、さらにこのネットワークが故障したり、外部からのサイバー攻撃を受け致命的な被害を受けてバラ バラに分断され、もはやネットワークとしての機能を果たせなくなった場合でも、残された機能ノードから自己組織的かつ自己集合的に、元のスモール・ワール ド性をもつネットワークに自動的に回復できる方法を提案し、実験シミュレーションを通して所望の動作を確認したので報告する。

P21:山岸祐己,斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:オンラインレビューサイトにおける投稿間隔分析
概要: インターネット上のレビューサイトでの口コミ情報などは,オンライン 環境での購買行動を始めとし,ユーザ間で多様な活動に影響を 及ぼしている.具体的には,多くのユーザから信頼されているユーザ により,ある商品に対して高評価のレビューが投稿されれば, その商品の販売が大幅に促進されるようなことも起こり得る. よって,レビューサイトにおけるユーザ間の信頼モデルを構築することは, ウェブ情報学において極めて重要な研究対象と言える. 本研究では,ユーザ間の信頼関係が時間とともに変化する, 動的な側面を考慮した数理モデルの設計と構築を目指し, 日本の代表的レビューサイトの投稿間隔に関する分析を行う.

P22:加藤翔子,斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:リンク優先選択を付与した嗜好ネットワーク成長モデルの提案
概要: 日本のような資本主義国家において,現実社会における消費者の嗜好や風潮,流行などの流れを把握し操作することは,経済的成功を収める為の重要な要因の一 つである.従って,その動向を理解するために,実データとして収集し分析・モデリングを行うことも,重要視されている研究対象である. 本研究では,既存のネットワーク成長モデルを拡張し,嗜好を表すデータの例としてTwitterのFavorite機能とその構造を比較することで,提案 モデルの優位性を証明する.具体的には,ノードの次数を優先的に選択するバラバシ=アルバートモデルに,新たにリンク優先選択のパラメータを付加すること で,現実世界のネットワークにより近い構造を持たせることを可能にした.

P23:守田 智(静岡大学)
題目:環境変動をともなったメタポピュレーションモデルの解析解
概要: ネットワーク状に分布する居住地からなるメタポピュレーションを考える。各居住地の環境はランダムに変動すると仮定する。本研究では線形離散時間モデルに 対して解析解を与える。各居住地のポピュレーションが周辺分布対数正規分布に従う一方、同時分布は特殊な性質を持つことを示される。

P24:松久保潤(北九州工業高等専門学校), 林 幸雄(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:Multi-Scale Quarteredモデルに対する階層の深さに基づくショートカット追加法
概要: 近年,地理的空間に埋め込まれるネットワークモデルの一つとして,Multi-Scale Quarteredモデル(MSQ)が提案されている.MSQは人口分布に基づき,地理空間に埋め込まれるため,構造に偏りが生じる.また, 自己相似図形への分割,および頂点と辺の追加によって生成されるため,MSQの頂点には分割処理による階層構造が出現する. 一方, Kleinbergは階層構造およびグループ構造に基づくモデルを提案し,このモデル上で,各頂点の次数がある程度多ければ,O(log(N))の 分散ルーティングが可能であることを解析的に示している.また,このモデルは空間に埋め込まれておらず,均一な構造をもつことが仮定される. 本研究では,MSQにおいて各頂点の深さに基づいてショートカットを追加する手法を提案し,性能を評価するためにKleinbergのモデルと等価な方法 でショートカットを追加したモデルと構造的指標を比較した計算機実験の結果を示す.

戻る