第10回NEシンポ合宿 概要一覧

招待講演

吉井伸一郎 氏(サイジニア株式会社 代表取締役)
題目:ぼくらの嗜好でつながる世界
概要:Web上のクリックは、各ユーザの嗜好を反映して生じる局所的な最適戦略としての行為である。サイジニアは、このようなクリックデータ を収集・解析し、レコメンデーション事業や広告の最適化を行っている。本講演では、 Webの行動履歴をネットワーク的に解析するアプローチを、先端のネット広告ビジネスの現状も交えつつ紹介する。

チュートリアル

増田直紀氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
題目:テンポラル・ネットワーク
概要:ネットワーク上のダイナミクスにおいて、枝はほとんどの時間に使われていない場合が多い。例えば、感染症が友人間で伝搬するというと き、実際に伝搬が起こりうるのは、枝を成す2人が会っている時間帯のみであり、友人間であっても、この時間は相対的に短いことが普通である。テンポラル・ ネットワークは、このような状況を扱う枠組みであり、ここ数年で急速に研究が進んでいる。本発表では、テンポラル・ネットワークについて概説する。

白山晋氏(東京大学大学院 工学系研究科システム創成学専攻)
題目:大規模ネットワーク計算法に関して
概要:大規模なネットワークを扱う場合,リンク構造を詳細に分析する方法の前段階として,ネットワーク構造や現象に対して統計的な特徴量(特 性量)を求め,分析することが多い.このチュートリアルでは,ネットワーク構造の統計的指標の求め方,コミュニティ分割(クラスタ分割)の方法,ネット ワークモデルの作り方,ネットワーク上でのシミュレーションの方法,シミュレーションから得られるデータの統計的分析法,および可視化について,アルゴリ ズムとその実装法を中心として説明する.

ポスター発表

P1:池田弘樹, 豊田規人(北海道情報大学)
題目:漢字熟語ネットワークと漢字学習
概要:2語熟語の漢字カラネットワークを作成し,それと学年別学習漢字の関連を考察する.

P2:岡本 洋(富士ゼロックス(株)研究技術開発本部)
題目:脳ネットワークからの重なりと階層を持つコミュニティ構造の抽出
概要:脳ネットワークにおけるコミュニティは、脳情報処理における機能モジュールに対応すると考えられる。従って、脳情報処理の過程を明らか にするためには、脳ネットワークのコミュニティ構造を知ることが重要である。我々は前回のシンポジウムにおいて、ネットワークから重なりと階層を持つコ ミュニティ構造を抽出するアルゴリズムを提案した。今回は、このアルゴリズムをC. elegans(線虫)の神経細胞ネットワークおよびサル皮質ネットワークに適用した結果について報告する.

 
P3:渡邉潤也, 守田 智(静岡大学工学研究科)
題目:過疎・過密地域における感染シミュレーション
概要:感染症の診断・治療・予防を扱う感染症学が発展しつつある今日でも、世界全体に目を向けると感染症は未だに死因の約1/4を占めてい る。感染は人間同士の接触から始まるため、感染の流行規模や伝播の速さなどは、その地域における人口密度に依存することが予想される。そこで今回は人口密 度と感染症について、格子モデルと呼ばれる碁盤の目状の格子空間を用いることで過疎、過密地域を表現し、感染症と人口密度の関係について検証した。

P4:服部正嗣, 青山一生(NTT コミュニケーション科学基礎研究所)
題目:グラフ索引を用いた絵本の類似探索〜特徴の融合と結果のグラフ可視化〜
概要:グラフ索引を用いた類似探索法は, 高速性,探索精度の保証機構の具備,多様な特徴種類と類似度に適用できる汎用 性,探索結果のグラフ可視化機能などの優れた特徴を有している. これらのうち,我々は汎用性と可視化機能とに着目し,複数種類の特徴を融合し た探索法とグラフ可視化機能の改良法とを提案する. 提案法は,オフラインで,オブジェクトから抽出した複数種類の特徴と予め定義 した類似度を基に,被探索オブジェクト集合のk近傍(k-nearest neighbor: k- NN)リストを作成し,このリストを用いて高速探索に適した次数低減近傍グラフ (degree reduced k-NN graph)を構築し索引とする. オンラインで,クエリに対するグラフ探索アルゴリズムを実行し,得られた高類 似度のオブジェクトからなるサブグラフを三次元描画して提示する. 提案可視化法は,リスト形式による結果表示よりも,ユーザが探索結果を直感的 に理解することを容易にする. 当日は絵本を題材に実装したデモを行う予定である.

P5:松崎芙美子, 松本雅記, 押川清孝, 高見知代, 中山敬一 (九州大学 生体防御医学研究所 分子医科学分野)
題目:タンパク質相互作用ネットワークにおける相互作用強度特性の探索
概要:生命機能の発現を担うタンパク質は、ヒトでは2万種類を越えるノードとなり、巨大で複雑なタンパク質相互作用ネットワークを形成してい る。既にいくつかのモデル生物において、酵母two hybrid法や免疫沈降法によるタンパク質相互作用ネットワークの構造情報が取得されており、そのスケールフリー性が解明されている。しかし、ネット ワークを考える上で重要な、タンパク質間相互作用強度の定量情報は、技術的限界により欠落している。そこで我々は、これまでに開発してきた質量分析計を用 いた相互作用タンパク質の同定法と、タンパク質濃度の定量技術を用いて、タンパク質相互作用の強度情報の取得に挑戦したいと考えている。将来的には、汎用 ヒト型ロボットを用いることで、タンパク質間の相互作用強度情報を高精度かつ大規模に取得し、定量的な観点からタンパク質相互作用ネットワークの特性を解 明したい。

P6:八田圭斗, 小野景子, 熊野雅仁, 木村昌弘(龍谷大学 大学院理工学研究科 電子情報学専攻)
題目:Epinionsにおけるユーザ行動の統計分析
概要:ソーシャルメディアにおけるユーザ行動モデルの構築を目指して,製品レビューサイトEpinionsの1999年7月から2011年 12月までのデータを用いてユーザ行動を統計的に分析する.本研究では,ユーザ行動として,信頼リンクの生成,レビューの投稿,評点の投稿に焦点をあて る.まず,レビューの投稿間隔の分布,信頼リンクの生成間隔の分布,および 評点の投稿間隔の分布を調べる.さらに,ユーザが信頼リンクを結ぶ相手としてどのユーザを選択するかの確率を,ユーザ行動情報に基づいてモデリングするこ とを考えるとき,どのような行動情報を用いるのが有効かを定量的に比較する.

P7:江田章吾, 田中敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目:人口動態データを説明するためのモデル提案とSW性の検証
概要: CNNモデルは人間関係ネットワークのモデルとして広く用いられており, 特にSNSのネットワークモデルとしては,いくつかの派生モデルが提案されてきた. しかし、実際の人間関係には地理的条件が加わり、 一般的なCNNモデルではそれを表すことができない。 そこで、本研究ではCNNモデルに各都道府県の人口動態データを用いたモデルを提案する。 さらにこのモデルの妥当性の検証のため、そのSW性についても言及する.

    
P8:江崎貴裕,西成活裕(東京大学 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
題目:Cayley tree上の組み立てプロセス
概要:工場の生産プロセスを部品の流れとしてみたとき、組み立てのプロセスは二つの流れが統合される興味深い点である。本研究ではこのプロセ スに注目し、組み立てだけが無数に存在するような単純なモデルを考案した。これにより需要や供給がばらついたときに全体の流れにどのような影響がでるか、 また全体の在庫や欠品の分布について興味深い現象について調べた。

P9:池田有希, 溝口佳寛(九州大学大学院数理学府)
題目:グラフ上の追跡戦略と回避戦略
概要:頂点数$n$のグラフ上をランダムウォークする二つの物体(ハンターとウサギと呼ぶ)の衝突までの時間の期待値について考察を行った. ハンターはグラフの辺にそってランダムウォークするが,ウサギは任意の頂点へとジャンプすることができる.同時刻にハンターとウサギが同じ頂点上に位置す るとき,ハンターはウサギを捕まえたと考える.ここでハンターはウサギをできるだけ短い時間で捕まえる,ウサギは捕まるまでの時間を最大化することが目的 となり,このような戦略をたてる必要がある.Adlerらは2003年に,いくつかの条件下でウサギが捕まるまでの時間の期待値の上限および下限を求めた 我々はAdlerらの方法を改良し,よい評価値を得ることができたので報告する.任意のグラフに対し,あるハンターの戦略を与えるとウサギを捕まえるまで の期待値の上限が高々$16nlog(diam(G))$であること,および,あるグラフとウサギの戦略に対して,ハンターから逃げることができる時間の 期待値の下限が$\frac{Nlog(diam(G))}{1380}$であることを示した.

P10:西部守, 守田智(静岡大学大学院工学研究科システム工学専攻)
題目:実ネットワークにおける情報伝播シミュレーション
概要:Web上における情報伝播の影響力の大きさは近年さらに注目を集めるようになった。今回はそうしたWeb上のネットワークを疑似的に再 現し、従来の情報伝播モデルに独自のかく乱を加えたモデルによるシミュレーションを行う。そして、次数と中心性という二つの視点から結果の分析を行う。そ の結果、従来のモデルでは確認されなかった中心性との相関などが見られることが検証できた。   

 
 
P11:森田雅之, 守田智(静岡大学大学院工学研究科システム工学専攻)
題目:スケールフリーネットワークの脆弱性の緩和
概要:ノードの除去によるシステム崩壊ができるだけ小さくなるようなネットワークを作成しまた作成したネットワークをいろいろな評価の仕方な どを用いて考えていく。

P12:渡邊千紘,増田直紀(東京大学)
題目:ネットワーク上の感染状況に基づく予防接種アルゴリズム
概要:We numerically examine target immunization on networks that uses information about ongoing epidemic spreading. The targeted nodes are immunized when a threshold fraction of nodes has been infected. We show for several networks that the proposed immunization protocols are in fact inferior to the standard degree-based protocol in which we preferentially immunize hubs without using the information about ongoing epidemic spreading.

P13:松井淳一, 守田智(静岡大学工学研究科)
題目:重み付きネットワークモデルにおける絶交と更生の効果
概要:本研究はCaoらの研究を拡張したものである。 この論文では、囚人のジレンマゲームを使用した重み付きネットワークモデルを用いてどのような条件で協力の進化が生じるかを調べている。本研究では前述の モデルに絶交と更生のパラメータを付加し、より現実に近い状況での協力の進化のモデル化を試みた。

P14:石原純司, 守田智(静岡大学大学院工学研究科数理システム工学専攻)
題目:個体差が重み付けされたネットワーク上で協力の進化に与える影響
概要:近代の研究で動的に変化するネットワーク構造が進化ゲームにおける協力者の進化に影響を及ぼすことが発見されています。今回の私の研究 では進化ゲームとして囚人のジレンマゲーム(PDG)を用いました。そのゲーム中では動的に進化するネットワークを、全てのリンクに重み付けを行うことで 実現しました。そこからさらにより現実的な場面を想像し、金儲けの才能がある人物(talent)とそうでない人物の2種類の個体に分けてゲームを行い、 その個体差が協力者の進化にどのような影響をもたらすのか調べました。

P15:水野誠, 阿部誠, 新保直樹(明治大学)
題目:Twitterネットワーク上にインフルエンサーは存在するのか?
概要:パーソナル・コミュニケーションにおいて少数だが影響力が強い人々(インフルエンサー)が存在するという考え方には、賛否双方の立場か ら議論がなされ、実証研究の結果もさまざまである。そこで重要なのは「影響」をどう定義するかである。 本研究は、スマートフォンに関するTwitter上のコミュニケーションを対象に、影響を単なる情報伝播を超えた発言誘発効果と捉える。そして、RTネッ トワークからインフルエンサーとみなし得る人々(インフルエンサー候補と呼ぶ)に、そうした意味での影響力があるかどうかを統計的に分析する。 現在までの分析では、インフルエンサーのうち、発言誘発効果を持つ者は少数で、大半はそうした効果を持たないこと、そして発言抑制効果を持つ者が一定数存 在することが示された。今回の発表では、現在の研究の限界と今後の課題についても議論する。

P16:松久保 潤(北九州工業高等専門学校), 林 幸雄(JAIST)
題目:経路の局所的な媒介度に基づくショートカットリンクの追加法
概要:自己相似な図形の局所的な分割によりネットワークを生成するモデルとして,Multi-Scale Quartered(MSQ)モデルがある.MSQでの分割処理と辺の交点への頂点の配置により,頂点の分布に疎密が生じる点に注目する.頂点が密に分布 している地域において,入口のような位置にある頂点同士をつなぐショートカットを張ることで最小ホップ数を大きく改善できると考えられる.入口のような位 置にある頂点では,局所的に頂点間の最短経路が通る頻度が高くなっていると考えられるためである. 一方,大域的に最短経路が通る頻度を表す指標としてBetweennessがある. 任意に選んだ頂点 u についてBetweenness を求めるとき, 2 つの頂点 s, t の最短経路 p(s, t) 上にある u の評価値は端点 s, t からの経路長には依らない.そこで, 経路の端点から評価の対象となる頂点までの距離に応じて評価値を決めるように評価法を変更することで局所的に最短経路が多く通る頂点に高い評価値を与える 方法を検討する.

P17:申成植, 小野景子, 熊野雅仁, 木村昌弘(龍谷大学 大学院理工学研究科 電子情報学専攻)
題目:Twitterにおけるリツイートネットワークの潜在空間分析
概要:ソーシャルメディアでの社会的紐帯とアクティビティの両方に関する、ユーザの潜在的興味における構造の分析を行う。 本研究では、ソーシャルメディアとしてTwitterに焦点を当て、情報伝播に関与するネットワークに着目するため、アクティビティとしてリツイート行動 を捉え、社会的紐帯としてリツイートネットワークを用いる。 そして、リツイートネットワークにおける潜在的興味の総数と各ユーザの潜在的興味の分布を推定するために、階層ディリクレ過程(HDP)を組み込んだモデ ルを用いる。 さらに、社会的紐帯の形成における潜在的興味間の関係の強さを調べるために、潜在的興味間の関係度パラメータを組み込んだモデルを用いる。 このモデルを、Twitterより観測したデータに適用し、Twitterにおける社会的紐帯とアクティビティの生成を支配する潜在的興味の構造を分析す る。

P18:佐藤杏奈, 伏見卓恭, 大久保誠也, 斉藤和巳(静岡県立大学), 風間一洋(和歌山大学)
題目:出現ツイート群の類似度に基づくトレンドワードのタイムライン可視化
概要:今現在Twitter上で多く話題になっているキーワード、トレンドワードを含むツイートに対して形態素解析を施し、特徴ベクトルを構 築して、各トレンドワード間の類似度を求め、そこから求められた類似度をもとに各トレンドワードをグループ化し、タイムラインの形で可視化する方法を提案 する。具体的な実験方法としては、5分毎に10個表示されるTwitterの公式トレンドと、そのトレンドを含む最新ツイートを100件ずつ収集したもの を対象とする。 この実験の結果から、文字列としては完全に異なるトレンドワードを、同じトピックグループとして抽出できることを確認した。

P19:谷澤俊弘(高知高専), 中村知道(兵庫県立大)
題目:複雑ネットワークによる時系列モデルの視覚化について
概要:時間依存のあるすべてのデータは時系列として表わされる。時系列データ をネットワークを用いて視覚化する試みは,相互相関係数を用いるものや再帰プ ロットを用いるものなど,いくつかあるが,いずれも巨視的な多体系に必ず存在 する時間遅れの相互作用の影響が取り入れられておらず,改善の余地があると思 われる。本研究は与えられた時系列データから構成されたモデルをネットワーク として表現する新しい方法を提案する。この方法では,モデル中の時間遅れ項が ネットワークノードとなり,モデル中の係数はそのノード間の距離に変換される。

P20:田村 肇(筑波大学図書館情報メディア系)
題目:質的情報通信産業連関表の異時点間の比較について
概要:情報通信産業連関表は、毎年発表されている。この情報通信産業連関表を異時点で比較する場合、まず、粗視化を行って質的情報通信産業連 関表に変換する。 さらに、この質的情報通信産業連関表よりネットワーク指標(例えば中心性指標)を導出し、それらの異時点間の比較を行う。 このとき、注意すべき点を明らかにする。

P21:小松琢也,山本雅人,古川正志(北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻)
題目:複数情報の伝播に対する時間遅れの影響
概要:近年,携帯端末の普及とともにsocial Networking Service (SNS)は広く利用されるようになり,人から人へと情報が伝わるという意味での情報伝播に対して大きな変化を与えた.特に伝播に必要となる時間について は,高速な通信網の普及にもとづく物理的距離の影響の減少から,相対的に「人の振る舞い」が大きく影響するようになってきた.また,ある事柄に対する二つ の相反する情報が伝わる際に人は一般的に新しく受け取った情報を信用しやすい.本研究では情報伝播モデルを用いてシミュレーションを行い,人の振る舞いに よる伝播の遅れが複数の情報が伝わる際の情報の受け取り順序に対してどのように影響するのかを議論する.

P22:川口光, 山本雅人, 古川正志(北海道大学大学院情報科学研究科)
題目:類似したネットワークデータの連続的可視化方法
概要:近年,ITの普及とコンピューターの性能向上により,各企業は自社や関連会社のデータを膨大に蓄積するようになった.現在,こういった データからネットワークを生成し可視化することが盛んに行われている.従来のネットワーク可視化方法は単一のデータからネットワークを可視化するといった 方法が一般的である.しかし,各企業でデータの蓄積は今後も続いていくであろうことから,時間変化する連続的なデータを扱うネットワーク可視化方法が必要 とされる.本研究ではグローバルなネットワークの構造があまり変化しない複数のデータを想定し,連続的に可視化する方法の提案と検証を行う.

P23:細田一史, 中野賢, 中村泰, 石井浩二郎(大阪大学未来戦略機構)
題目:微生物生態系に学ぶ持続発展可能な社会システムの構築にむけて
概要:人間社会が今後存続してくためには、人間を含む自然生態系の理解とともに、人間を含む科学技術社会の構築など、広範囲に及ぶ理解と構築 が必要である。私達 は、自然界において生物システムが様々な制約条件のもと持続発展可能な社会を形成している点に着目し、持続発展可能な社会システムを構築する方法について 考える。具体的には、バクテリアや酵母、原生生物などの微生物が低エネルギー社会を形成する仕組みを理解するために人工生態系を実験室内に構築する。様々 な実験的手法を用いて、微生物が低エネルギー社会を形成する仕組み(相互作用)や過程(時空間発展)を理解し、その数理モデルを構築する。構築したモデル をもとに仮想的な社会システムを計算機上に再現し、エネルギー効率等の点でその性能を評価し、分子通信によるシステムの具現化を考察する。さらに、ロボッ トや人工知能による制御の導入を試みる。特に、システムを任意の状態にするような制御を試みるのではなく、部分的には生物などにより勾配法が解かれ動くシ ステムのダイナミクスが全体としてもつアトラクタ間の遷移の制御を試みる。

P24:松林達史,林亜紀,澤田宏(NTT)
題目:Location Based Social Network (LBSN) における友人影響力
概要:本研究では,Location Based Social Network (LBSN)と呼ばれている,位置情報を利用したソーシャルサービスにおけるユーザ訪問情報を元に,ユーザのサービス利用目的の解析や,訪問場所の利用傾 向の解析を行った.GowallaとBrightkiteのチェックインデータを元に,各サービスの利用傾向を,友人との同時訪問頻度から特徴分析を行っ た.Brightkiteのデータでは約半数のユーザが友人のチェックインに影響を受けることなくサービスを利用する一方,友人と同じ場所を訪れる頻度の 高いコアユーザが5%存在する.これは,ライフログとして自己満足を利用目的として利用するユーザが多く存在する一方,現実世界において待ち合わせなどの 情報共有目的に利用しているユーザも多いことがわかった.

P25:李 明媚, 田上 敦士(KDDI研究所)
題目:A Combination Method to Generate Contact Network for Mitigating Cyber bullying
概要:近年、青少年におけるネットいじめ(SNS(Social Network Service)などのネットワークサービスを用いたいじめ)は社会問題として深刻化している。ネットいじめは、家庭や学校での言動からは気づきにくく、 発見が遅くなるという問題がある。ネットいじめは、悪口や差別的言動など言葉によるネットいじめと、無視や仲間外れなど人間関係によるネットいじめの2つ のタイプに分類される。特に、人間関係によるネットいじめは最近になって認知されており、ネットいじめの検知手法として広く使われている自然言語処理に基 づく手法では、検知が困難であるという問題がある。人間関係によるネットいじめの特徴としては、ある程度親しい友人関係の間でしか発生していないという点 がある。この特徴に着目し、人と人との「友達関係」を表す「Contact Network」と、その上での行動を表す「Activity Network」の2つを用いて、人間関係によるネットいじめを検知する手法が提案されている。この時、Contact Networkにおいては、ネットいじめの検知漏れをなくすため、実世界での「友人関係」をすべて包含するようなグラフが必要とされている。本論文では、 青少年向けのSNSから収集したデータを用いて、Contact Networkを生成する手法を提案する。さらに、実データを用いて生成されたContact Networkを、実世界での友達関係と比較し、それがすべて包含されていることを示す。

P26:今井 哲郎(理化学研究所 計算科学研究機構),田中 敦(山形大学大学院 理工学研究科)
題目:利己的・分散的な多主体による複雑ネットワーク形成モデルの並列計算技術による大規模化へ向けた評価
概要:我々はこれまでに,利己的・分散的な多主体による複雑ネットワーク形成の仕組みを表現した「動学的ネットワーク形成ゲームモデル」を提 案している.本モデルのシミュレーションを単一PC上で実行する場合,現在のところ現実的に実行可能な規模は100ノード程度であるが,本モデルは分散的 な多主体による意思決定を基礎とするモデルであることから,シミュレーションの大規模化・効率化にはスカラー型の並列計算機システムが有望である.そこで 現在我々は,本モデルの数万ノード規模のシミュレーションを実行することを目指している.本発表では,並列化効率等の測定・評価を行って,今後の大規模化 への展望を述べる.

P27:小林えり, 伏見卓恭, 斉藤和巳, 池田哲夫(静岡県立大学)
題目:一般化ピボット計算の高速化と特性評価
概要:本稿では一般化ピボット計算法を高速化するアルゴリズムを提案し、計算時間、目的関数値、可視化の面から評価する。提案法ではL1ノル ムに起因する相殺計算を用いて一般化ピボットの更新を高速化する。評価実験の結果、オブジェクト数が多ければ多いほど従来法に比べて提案法は非常に短い計 算時間で目的関数の最適化を行うことを確認した。また、従来のピボット選択法と比較すると目的関数の観点ではピボット数、オブジェクト数にかかわらず提案 法が従来法に比べて高い目的関数値を算出することを確認し、ピボットを2と設定した場合の可視化結果を比較し提案法の有効性を述べる。

P28:伏見卓恭,斉藤和巳,池田哲夫(静岡県立大学),風間一洋(和歌山大学)
題目:減衰付き機能コミュニティ抽出法によるハブノードの詳細分類
概要:本稿では,機能コミュニティ抽出法で用いる特徴ベクトルに時間減衰関数を導入する.機能コミュニティ抽出法は,PageRankの収束 するまでのスコア変化を要素としたベクトルを用いて,各ノードが有する機能ごとに分類する手法である.クラスタ係数の大きいサブネットワークでは,隣接す るノードペアの次数の差が小さく,比較的早期にスコア変化が平坦化される.そのため,高次元特徴ベクトルから個々のノードの特徴を抽出するのが困難となる 場合がある.そこで,PageRankスコアが局所的な構造を反映できる初期の段階に着目し,特徴ベクトルに減衰関数を導入した手法を提案する.評価実験 より,提案手法がハブの周辺ノードのリンク密度などの違いからハブノードを細分化できることを示す.

P29:山岸祐己, 斉藤和巳, 武藤伸明(静岡県立大学)
題目:レビュー評点時系列データの変化点に基づく重要ユーザ選定法
概要:レビューサイトでは,あるユーザがあるアイテムにレビューをすることにより, そのアイテムの今後のレビュー傾向が大きく変化することが起こり得る. このような時系列的イベントを頻繁に誘発するユーザの発見は, ソーシャルネットワークの研究において重要な課題であると言える. そこで我々は,大規模レビュー評点時系列データからの変化点検出を行い, その検出結果から注目すべきユーザをランキングする手法を提案する. ここで使用する変化点検出法は,ユーザーの基本評点行動として多項分布モデルを仮定し, 尤度比検定の枠組みで変化点を検出することを特徴とする.

P30:加藤翔子,大久保誠也,斉藤和巳(静岡県立大学)
題目:トライアド係数を用いたTwitterのreplyとRTネットワークの時系列分析
概要:本稿では,Twitterのreply機能とRT機能について, 震災前後のツイートから収集したデータを多重有向グラフ化し, トライアド係数の変化の遷移について時系列情報を考慮して分析した. その結果,RT機能については, 震災直後の3月11日から12日にかけて,特定のトライアドが急激に増大したが, reply機能については,著しい変化が見られないことを確認した.

P31:中川慶次郎, 小林博樹, 奥野淳也, 岩井将行, 瀬崎薫(東京大学生産技術研究所)
題目:フィールド調査負荷を考慮した, 動物の生態行動を逆利用したデータ運搬手法の提案
概要:福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故により、周辺30キロ圏内の森林地域では放射能汚染による生態系への影響が懸念され長期的な生態 系調査が必要とされている。このような人間の立ち入りが困難な地域で生態系調査を行う手段として、小型センサと通信機器を野生動物に装着させ、環境情報の 取得や動物同士の接触により取得データを運搬する機構が提案されている。本稿では、機構の実現のために、動物同士が遭遇した際に動物間でデータ運搬を行う 手法の提案を行う。具体的には、動物同士が接近した際に生じる生態行動を動物間通信の引き金とすることで、生態行動を利用したデータ運搬を実現する。これ により調査負荷の低減が実現する。

P32:臼井翔平,鳥海不二夫,平山貴嗣,間瀬健二(名古屋大学大学院情報科学研究科)
題目:情報拡散に関するネットワーク構造要素の分析
概要:ソーシャルメディアは2011年3月11日に発生した東日本大震災時に,非常に有力なツールとして,情報の拡散や収集に用いられた.現 在ソーシャルメディアを新たな情報源として確立するため,ソーシャルメディア内に構築される友人ネットワーク上での情報拡散を対象とした研究が数多く行わ れている.本研究では,友人ネットワークの構造に着目し,構造の違いが情報拡散に及ぼす影響を分析する.

P33:山際 慎悟, 笹部 昌弘, 滝根 哲哉(大阪大学 大学院工学研究科)
題目:大規模ネットワークシステムにおける進化ゲーム理論を用いた自己組織型資源割当方式
概要:クラウドコンピューティングへの関心が高まる中,メールやWeb,動画配信を始めインターネットを利用した様々サービスは我々の日常生 活において必要不可欠なものとなっている.こうしたサービスを支える情報通技術として,データセンターやコンテンツ配信ネットワーク(CDN: Content Delivery Network)がある.データセンターやCDNでは,ユーザ(利用者)からのリクエストに対して,多数の計算機群とそれらで構成されたネットワークを用 いてサービスを提供する.サービスの種類は増加の傾向にあり,またそれらサービスへのユーザからの需要は時々刻々と変化する.こうしたユーザからの多様な リクエストに対して,有限の計算機資源(CPU,メモリなど)を適切にサービスへと割り当てることで,ユーザの知覚するサービス品質の向上や,負荷に応じ た計算機資源の利用による省電力化・設備コストの軽減が期待できる.このとき,多数の計算機資源を集中的に管理することは端末数に対するスケーラビリティ や端末故障に対するロバスト性の観点で望ましくないため,本研究ではこのような資源共有問題に対し,進化ゲーム理論を応用することで自律分散型・自己組織 型の資源割当方式を提案する.シミュレーション評価を通して,情報の局所性と資源割当の精度との関係を明らかにする.

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