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「生体電気信号の解読と制御」に向けた
基盤技術開発

筒井研究室 TSUTSUI Laboratory
准教授:筒井 秀和(Tsutsui Hidekazu)

E-mail:tsutsuijaist.ac.jp
[研究分野]
生物物理学、基礎生理学、分子生物学、電気生理学
[キーワード]
生体電気信号、細胞膜電位、興奮性膜、バイオセンサー

研究を始めるのに必要な知識・能力

(学科)細胞生物学や電気回路の基礎などを理解しているとスムーズに研究を開始できますが、初学者にもそれぞれ対応いたします。
(心構え)実験が好きな事。高速道路を快走する(目的に向かって一直線)よりも、林道や獣道にわけ入ったり、藪漕ぎ(試行錯誤や寄り道)が好きな事。

この研究で身につく能力

生物物理学・基礎生理学における基本的な研究方法や実験手技を理解、会得する。さまざまな生命現象の仕組みや分子的基礎がどのようにして解明されてきたか、そして如何に多くの生命現象が未だに謎に包まれたままなのか、という事を学ぶ。新しいセンサー蛋白質や観測装置を組み立てて、従来はアクセス不可能だった領域に踏み入る事の面白さや意義を学ぶ。そして、このような取り組みが、生命現象の理解に繋がるだけでなく、長期的には社会や産業とも深く結びついている、という感覚を身につける。

【就職先企業・職種】 製薬、IT、化学、電気、食品など

研究内容


人工膜電位センサーを発現した神経細胞(左)とその光学信号(右)。Tsutsui et al., 2013 より引用

 脳神経回路は究極の生体組織の一つです。回路を構成する細胞の厚さ数nm の細胞膜に0.1V 程度の電圧信号が発生します。この信号は回路網を高速に伝播し、自律的に組織化され、並列的に処理されます。この組織化や処理の過程を理解する事は現代科学の本質的な挑戦の一つであり、さらにその先には未知の情報処理アルゴリズムの解明、病態の理解、そして究極的には人工システムとの統合という展開も期待されています。しかしながら、その挑戦には数多くの難関があります。根本的な課題の一つに、生体電気信号の時空間パターンの詳細な計測が現在の技術では不可能であるという点が有ります。
 本研究室では、「生体電気信号の解読と制御」の実現に向けたマテリアル開発を通じて基礎科学の発展に寄与する事を目指すと共に、その技術を応用した社会還元にも積極的に取り組んでいきます。基礎生物学・生理学、材料工学などをまたぐ、分野横断的なアプローチを行います。より具体的には、例えば以下のようなテーマに取り組みます。

<1>生体における仕組みを“知る”

 生体はこの生体電気信号を巧みに解読するための驚くべき仕組みを備えています。例えば、細胞膜には、電圧に反応する特殊な蛋白質が存在していて、電圧信号を増幅したり、電圧信号を解読して細胞内の環境を変化させたりしています。生体におけるこの自然の仕組みを知ることで、基礎生理学の発展に寄与できるだけでなく、人工膜電位センサーを創る上での重要なヒントが得られる可能性もあります。分光計測、電気生理学、分子生物学を駆使してこのテーマに挑戦していきます。

<2>人工膜電位センサー蛋白質を“創る”

 上記のように、電圧に反応する蛋白質が普段、私たちの体の中でも活躍しています。このような分子を部品として使い、さらに蛍光蛋白質などのレポータとして働く部品を巧みに組み合わせると、生体電気信号を可視化する為の人工膜電位センサーを創ることが出来ます。これまでに、単一細胞の単一スパイクを見る事に成功しています。さらなる性能の向上を目指しています。

<3>膜電位可視化技術を“利用する”

 私たちが開発する膜電位センサーは、例えば、創薬関連化合物のスクリーニングという観点から社会還元できる可能性を秘めています。細胞膜の電気的興奮性を担う膜蛋白質は多くの疾患とも深く関係して、重要な創薬のターゲットでありますが、薬の評価効率が低いという問題があります。膜電位センサーを用いて、低コスト・高スループットで光学的に創薬関連化合物をスクリーニングする系を提案・構築できる可能性があります。

<4>次世代の計測原理の“探索”

  「生体電気信号の解読と制御」を可能にする、従来に無い革新的な原理も常に探索していきます。特に新規マテリアルや微細加工技術を用いた新しい計測原理の探索に注力します。遊び心を大切に、そして、様々な分野の研究者や加工・分析技術が集結する本学の資質を最大限に活用します。

主な研究業績

  1. Jinno, Y et al., Engineering a genetically-encoded SHG chromophore by electrostatic targeting to the membrane. Front Mol Neurosci. 7:93 (2014).
  2. Tsutsui, H. et al., Improved detection of electrical activity with a voltage probe based on a voltage-sensing phosphatase. J. Physiol., 591, 4427- 4437 (2013).
  3. Tsutsui, H. et al., A diffraction-quality protein crystal processed as an autophagic cargo, Mol Cell., 58:186-93. (2015).

使用装置

分子生物学関連機器
電気生理・電気化学計測関連機器
各種光学顕微鏡・走査型電子顕微鏡
細胞・組織培養関連機器

研究室の指導方針

研究は自由で楽しいものであるべきと考えるが、それもバックグラウンドの正しい理解や確かな実験技術に基づきます。まずは正確な実験や観察が行えるようになる事に努めます。研究結果の定期的な発表(プログレスレポート)および論文紹介(ジャーナルクラブ)を通じてプレゼンテーション力を身に着けます。英語専門書を一つ選定して、輪読を行い、研究の背後にある概念や文化を理解する事にも重点を置きます。

[研究室HP] URL: http://www.jaist.ac.jp/ms/labo/tsutsui.html

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