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現場(フィールド)の手触りにこだわった研究をしています

伊藤研究室 ITO Laboratory
教授:伊藤 泰信(Ito Yasunobu)

E-mail:
[研究分野]
文化人類学、知識社会学、エスノグラフィ
[キーワード]
教育人類学、科学技術社会論、医療エスノグラフィ、ビジネスエスノグラフィ、デザイン思考

研究を始めるのに必要な知識・能力

とくにありません。しいていえば、1つの問いに対して1つの解答しかないという、学校算数的な問題設定から離れて、必ずしも答えが1つではないような、現実社会の複雑性に目を向けようとするような構えが要求されます。

この研究で身につく能力

本研究室では、さまざまなコミュニティや組織の知を、文化人類学的視角から研究しています。物事を社会科学的に把握する能力、および方法論としてのエスノグラフィの能力を身につけることができます。エスノグラフィは、我々にとって馴染みのある事象を“異化”して把握する力をもつ方法論です(馴質異化)。我々がよく知っている会社や病院、学校や大学、研究所の実験室など、その現場にいる人々にとって当たり前すぎて、あえて言語化して問わないような「言わずもがな」「問わずもがな」の事象を“異化”しながら記述・分析するエスノグラフィは、現場の課題発見や人々の生活に潜むニーズ発掘のためのインサイトなどに繋がるとされ、ビジネス/デザインの領域でも重用されるに至っています。こうした能力を本研究室では涵養します。

【就職先企業・職種】 技術営業、コンサルティング会社、マーケティングリサーチ会社、UXデザイン会社、医療機関など

研究内容



左 伊藤泰信、2007、『先住民の知識人類学』世界思想社(第7回日本オセアニア学会賞 受賞)
右 伊藤泰信編、2009、『ラボラトリー=スタディーズをひらくために』JAIST Press.

エスノグラフィ(Ethnography)

 エスノグラフィ(現場密着型の質的調査)は、もともとは文化人類学者が素朴な伝統社会を綿密に調査する方法論でしたが、近年では、経営学・医学・看護学・科学技術研究・デザインなどでも広く取り入れています。また、ビジネスの実務でも、例えば、組織における業務の改善・最適化のための現場観察や、消費者のインサイト(洞察)を探るマーケティング調査などに用いられつつあります。
 ただし、実務界において、やや混乱ぎみにエスノグラフィが流通している現状があるにもかかわらず、十分に議論が整理されているとは言えません。本研究室では、文化人類学の視角およびその方法論であるエスノグラフィの特徴やその強み、それらを実務に導入する際の留意点などについて、議論を前に進めようとしています。それによって、一方で実社会に貢献し、他方で文化人類学の可能性を切り開くことを目指しています。特に近年では、医師・看護師などの医療者教育に貢献する文化人類学・エスノグラフィの可能性を探っています。

現場(フィールド)から考える

 修士課程学生であっても、なるべく現場(フィールド)に飛び込んでいくエスノグラフィ研究を勧めることにしています。職業的な文化人類学者の現地調査は長期にわたります(私も博士課程の頃、ニュージーランドの先住民の村などに計2年以上、住み込み調査をした経験があります)が、本学の修士課程ではそのような長期の現場調査はお勧めしません。むしろ、学部時代の専門や実務経験を活かすことのできるフィールド(現場)を選んでもらい、短期間で結果がでるように、調査を工夫するよう指導しています。

領域横断的な環境でのユニークな文化人類学

 狭義の文化人類学や社会学を教える大学院は日本国内に多々あります。しかし、学部のバックグラウンドを問わないJAISTでの、領域横断的な環境でそれらを学ぶことで、他の大学院では出せないようなユニークな研究成果が出せるものと考えています。たとえば機械工学系の学部教育を受けてきた学生が、文化人類学や社会学を私の研究室で学ぶことで、学部時代の知識も活かしつつ、精密機械工場の現場での課題抽出・課題解決を目指したエスノグラフィ研究を行う、などが一例です。そうした試みは、文化人類学だけ、社会学だけ、を学部から専攻してきた学生にはないユニークなエスノグラフィ研究を生み出す可能性を秘めています。私の研究室に所属する学生は学部レベルでは看護系・医学系・工学系・教育学系など様々なバックグラウンドを持っています。
 近年、伊藤研究室では、科学研究を行う実験系ラボや、病院などの医療福祉施設を主たる対象として問題解決を志すエスノグラフィ研究、また、デザイン思考とエスノグラフィとを組み合わせた応用的な調査手法の洗練を試みる学生なども増えつつあり、そのような新しい対象・テーマに取り組んでみたいという学生を求めています。

主な研究業績

  1. 伊藤泰信, 2018,「医療者教育の文脈で人類学という学知の何が必要とされるのか」『民博通信』160: 18-19.
  2. 伊藤泰信, 2017, 「エスノグラフィを実践することの可能性──文化人類学の視角と方法論を実務に活かす」『組織科学』51(1): 30-45.
  3. Ito, Y., 2016, ‘Ethnography’ in Japanese Corporate Activities: A Meta-anthropological Observation on the Relationship between Anthropology and the Outside. H. Nakamaki et al. eds., Enterprise as an Instrument of Civilization. Springer, 55-72.

研究室の指導方針

学者であれ、ビジネスパーソンであれ、自分たちの当たり前の発想から自由になること・抜け出すことは、なかなか容易ではありません。文化人類学的なアプローチ、エスノグラフィという方法論はそれらを解きほぐす(“リフレーミング”する)のに優れています。社会科学な視点と方法論とを実践できる学生の育成を目指します。東京サテライトの学生と石川本校との学生とを繋いだ遠隔ゼミを定期的に実施しています。また、文化人類学・社会学の基礎的な知識を身につけるため、基礎文献群のレビューを研究室独自の課題としています。

[研究室HP] URL:http://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=427

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