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人間の認知・心理特性を解明し、学びを支援する

池田研究室 IKEDA Laboratory
講師:田中 孝治(Tanaka Koji)

E-mail:
[研究分野]
認知心理学、教育工学、知識科学
[キーワード]
知識と行動の不一致、学習支援、メタ認知、経験学習、自己調整学習、防災教育、情報モラル教育、新入社員教育

研究を始めるのに必要な知識・能力

人間の認知・心理特性に基づく学習支援に関心があり、認知・心理特性を解明しようとする意欲があることが重要です。認知心理学・教育工学の基礎を習得していることが望ましいですが、必須ではありません。

この研究で身につく能力

人間の認知・心理特性を知ることで人間特性を意識した分析力(人間中心分析力)が身につきます。社会には、人間の認知・心理特性が影響する様々な課題が山積しています。それらの課題に対して人間特性からのアプローチは非常に有用なものですので、人間中心分析力を持った人材がますます求められてくるでしょう。また、一人の知識で課題が解決することはごく稀です。研究活動を通じて他者と協働していくなかで、チームで働く力(知識共創力)が身につきます。知識社会においては、生涯に渡って学習を続けることが求められます。学習支援についての研究に取り組むことが自分自身の学び方を見直す契機なり、自身で成長し続けられる力(自己成長力)が身につきます。

研究内容


図1 認知心理学実験を援用した学習支援方式

 知識共創の主体である人間の認知・心理特性を解明することは知識科学研究の一つのテーマです。これまでに、人間の認知機能が社会生活に関わる知識と行動にどのように有機的に結びついているのかを解明することで、人間の認識や行動を良い方向に向けるという視座から研究を続けており、最近では、記憶と行動の結び付き、から、知識と経験の結び付きに関する研究に対象領域を拡げています。その中で、従来の認知心理学的アプローチ(実験室環境・量的分析)をベースに教育工学的アプローチ(実現場・質的分析)を取り入れ、教育・学習活動における人間の認知機能を理論と実践から探求する教育応用認知心理学を展開しつつあります(例えば,図1)。
 その対象領域は、防災、情報モラル、看護、人材育成、高等教育など多岐に渡ります。 その中で、講義や訓練などの特定の期間で学習が終了しないという点において、教育応用認知心理学分野の中でも極めて特徴的である次の二つのテーマを中心に研究しています。

1)環境の変化に伴う新たな価値観の学び

 企業と大学の二つの経験学習実践において学術的・実践的知見を生み出す研究を進めてきています。これらの研究過程において、教育担当者(先輩社員・TA)が、日常的なメンタリングや研修報告といった相互作用を通して、学習者(新入社員・後輩学生)の経験学習サイクル(経験→内省→汎化→実験→結果(経験))の転回を支援していることが確認できています。研究過程の現場実践、研究交流において、教育工学関連の国内外の多くの研究者が経験学習の多様性に対応する教育設計・運営・評価の困難性を感じていること、現場の教育担当者が教育意義の明確化の困難性を感じていることを実感してきました。これらの課題を克服するべく、学習者が自分の学びを研究する育成モデルを包括するモデルの構築を目指しています。

2)知識を行動として具現化しようとする意志の形成

 行動が伴う知識(例えば、防災行動、情報モラル行動)を教授する教育者の多くは、学習者が学んだ知識を訓練場面では行動に結び付けるが実際場面では知識とは異なる不遵守行動をとるといった現状に苛まれています。従来の教育法では、知識を訓練場面で繰り返し行動に結び付けることで、知識と行動の不一致解消を試みていますが、不一致の解消は簡単なことではありません。この課題を克服するべく、不遵守行動をとらせる心の動きを学習者が認識するための学習支援方式の構築に関する研究を進めてきています。

  学術活動は、心理学分野(心理学会、認知心理学会)、教育工学分野(教育システム情報学会、教育工学会)(それに対応する国際学会)を中心に研究成果を発表し、異なる分野の専門家と知識を共に創造する場として知識科学分野(知識共創フォーラム)においても積極的に発表しています。

主な研究業績

  1. 田中孝治・加藤隆(2012).避難口誘導灯に通過後の情報を付加することの効果 心理学研究,83,182-192
  2. 田中孝治・水島和憲・仲林清・池田満(2017).営業実習の週報から見る新入社員の学び方の学びと指導員によるその支援―質的データ分析手法SCATを用いた一事例分析― 日本教育工学会論文誌,41,1-12.
  3. 田中孝治・陳巍・ダムヒョウチ・小林重人・橋本敬・池田満(印刷中).知識共創力を高めるメタ認知スキルの学び方の学び―議論のファシリテーションを通じた経験学習 電子情報通信学会D,J101-D(6).

研究室の指導方針

到来した知識社会において優れた能力を発揮するためには、真に答えのない問題に対して適切な目標を設定し、その目標と利用可能な証拠にふさわしい信念に基づく行動をとること(合理的思考)とそれらを自律的に実践する主体性が重要です。合理的思考力の成熟のためには、真に答えのない問題に対処する主体的な活動の経験から汎化して習得していかなくてはなりません。研究活動はまさに真に答えのない問題と言えます。研究活動・研究室活動を通じた様々な主体的な活動を通して、経験からの学び方を学び、修了後にも自身で成長し続けられる力の育成を念頭に置いて指導します。また、人間を対象とした研究は皆さんが想像しているよりも多くの壁に突き当たります。そのため研究活動には、うまくいかないことに忍耐強く取り組むレジリエンス(折れない心)が必要です。レジリエンスの育成を念頭に、成功体験だけでなく失敗経験を積めるように指導します。

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