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災害に強く日常的にも役立つ
近未来のネットワーク設計法を探ろう

林研究室 HAYASHI Laboratory
教授:林 幸雄(Hayashi Yukio)

E-mail:
[研究分野]
複雑ネットワーク科学
[キーワード]
ネットワーク科学、無線通信、フラクタル統計物理、生物メカニズム、アルゴリズム、最適化、SNS、インフルエンサー

研究を始めるのに必要な知識・能力

数学や物理をある程度は学んでグラフやネットワークを数理モデルとして理解できると良いです。また現実のネットワークを破壊して耐性等を測ることは出来ないので、コンピュータシミュレーションは必須となりプログラミング経験があるとより望ましいですね。

この研究で身につく能力

今世紀初頭に発見された知見「身近に存在する電力網、航空網、通信網、知人関係や企業間取引など、現実の多くのネットワークには共通性があり、しかも非常に脆弱であること」が分かるとともに、それに対する近未来に向けた解決方法を探ることから、社会イノベーションのあり方を考え学ぶことができます。ある程度の規模のシミュレーション実験を通じて、種々のネットワーク分析法、分散計算、サーバ管理などに関する能力も身につきます。

【就職先企業・職種】 情報通信系、Webデータ分析、機械学習や最適化、社会イノベーション支援系、クラウドやデータセンター関連

研究内容

 遺伝子や代謝系の分子生物学的なネットワーク、人工物である通信インフラや電力網などのライフライン、さらにメールの送受信や社会的な知人関係など、現実のネットワークには驚くほど共通の構造が存在するのは何故でしょう?
 それは万有引力のように普遍的なネットワークの生成原理があるからです。実は「金持はより金持になる原理」に従って、自分に都合が良い相手とつながろうとする効率重視の利己原理から自然に出来てしまうのです。しかも残念ながら、そうした我々の身近にあるネットワークは効率的ではあるものの非常に脆いことも明らかとなりました。世界各地に頻発するゲリラ豪雨・豪雪や地震や洪水等において電力・通信・物流・交通などの社会インフラがいかに脆く、甚大な被害を蒙ってることか、何とかしなければならない大問題です。
 次世代のネットワークをどのように設計構築したら良いのか?効率重視から脱却した全く新しい原理が求められています。そこで、社会的ネットワークインフラが効率性を損なわずより頑健となるデザイン方法に関して、以下の課題を中心に検討します。その際、原理的な基本メカニズムの解明や構築手順を示すアルゴリズムの開発のみならず、その社会的意義についても考えていきます。

(1)ネットワークの自己組織化

フラクタル物理やコンピュータ科学のアプローチに、生物のような自己組織化や自己修復ができて、自律した分権型組織のように強固なネットワークをどのように構築するかを探ります。

(2)災害時における緊急通信網

実際の地理的空間上の人口分布、避難所や物流拠点、人々の通信要求、基地局や電源の配置、災害範囲や規模などに応じた具体的な対策を考えるためのシミュレーターを開発しながら、人的・物的なリソースの制約や配分も考えます。

(3)分散計算や自律型組織

ネットワークシミュレーションに適したマルチコア計算サーバ上の分散計算法を検討します。そうした自律分散処理の考え方を活かしたチームによる効果的な課題解決法や、ソーシャルネット分析なども対象となり得るでしょう。

これらをイメージしやすいよう、以下の研究室のtwitterも覗いてみて下さい。
https://twitter.com/hashtag/%E6%9E%97%E7%A0%94?f=realtime&src=hash

主な研究業績

  1. Yukio Hayashi, Atsushi Tanaka, and Jun Matsukubo, "More Tolerant Reconstructed Networks by Self-Healing against Attacks in Saving Resource" Entropy, Special Issue: Critical Phenomena and Optimization in Complex Networks, Vol.23 (Issue 1), No.102, pp.1-15, 2021.
  2. Yukio Hayashi, A new design principle of robust onion-like networks self-organized in growth, Network Science 6(1), pp.54-70, Cambridge University Press, 2017.
  3. Yukio Hayashi, Spatially self-organized resilient networks by a distributed cooperative mechanism, Physica A 457, pp.255-269, 2016.

使用装置

実験室に二十数台の計算サーバ(コア数 200 程度,Xeron 等 搭載)

研究室の共同専攻における強み

 我々が研究するシステムイノベーション領域、特に、ネットワーク科学の分野は、フラクタル統計物理やコンピュータ科学などを基礎として今世紀初頭に誕生・発展しており、本共同専攻では情報系教員や最適化に関わる機械系教員及び生物系教員との連携により、人工物や生物の新たな設計(デザイン)原理を探求することができます。また例えば、故障や攻撃に強い復活力を持つ自己修復や自己組織化ができるシステム設計、自律分散なドローン等を用いた次世代の通信や輸送、ソーシャルネットにおけるインフルエンサー(口コミ影響力が強い人)を抽出する機械学習と広告戦略、などへの応用開発にも挑戦できます。研究で培った数理的思考とデータ分析力やシミュレーション技術が将来の武器となります。

[研究室HP] URL:http://ds9.jaist.ac.jp:8080/

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