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RNAの知見を医学に活かそう!

※博士前期課程学生のみ受入

塚原研究室 TSUKAHARA Laboratory
教授:塚原 俊文(Tsukahara Toshifumi)

E-mail:
[研究分野]
生化学、分子生物学
[キーワード]
RNAスプライシング、RNA編集、遺伝子発現制御、遺伝子修復

研究を始めるのに必要な知識・能力

生き物の不思議に興味があること。実験を失敗しても研究を続ける持続力。未来の医療に貢献しようという意欲。

この研究で身につく能力

哺乳動物細胞の培養技術や、遺伝子単離・解析技術、遺伝子組換え技術などが身につきます。実際に遺伝子を増幅して遺伝子組換えを行い、大腸菌や培養細胞を使って、発現させたり、遺伝子を人為的に変異させ、さらには人工酵素を創成する技術を学ぶことができます。

【就職先企業・職種】 化粧品会社・研究開発職、製薬会社・開発職、化学系製造会社・研究開発職、弁理士など

研究内容

遺伝子とmRNA

 私たちの研究室では、生体分子や細胞もマテリアルであるという観点から、生体分子、特にRNAを中心とした研究を行っています。遺伝子の全塩基配列が解明された結果、ヒトの持つ遺伝子数は2万5千以下と推定されています。一方で、タンパク質は少なくとも20万種以上存在するとされています。なぜ、設計図である遺伝子の数よりもタンパク質の種類が圧倒的に多いのでしょうか?その答えの一つが選択的スプライシングです。選択的スプライシングによって、生物は単一のゲノム遺伝子からスプライシングのされ方の異なる複数のmRNAを生成することができます。

RNAの解析研究について

 私たちは、マイクロアレイやReal-Time PCR、遺伝子導入による細胞内スプライシング解析、さらにはRNA代謝中間体の解析といった技術を駆使して、細胞内RNAを対象とした研究を行っています。P19細胞という多様性の分化能を有する細胞の分化誘導過程のmRNAを網羅的かつ詳細に解析することで、神経特異的に選択的スプライシングを受ける遺伝子を同定し、神経特異的なスプライシングが想像以上に多いことを明らかにしました。私たちはこの様な神経特異的スプライシングが脳や神経の機能にどの様に貢献しているのかを解明したいと考えています。

遺伝子修復研究について

 遺伝子に変異があるとタンパク質を上手く生成することができなくなることがあり、様々な病気の原因ともなります。では、変異した遺伝子を元に戻すことはできないのでしょうか?私たちはこの課題に挑戦し、新たな遺伝子疾患治療法の開発にも取り組んでいます。RNAエディティングと呼ばれる生命現象を模倣して遺伝子を修復しようという試みです。もし、部位特異的に核酸の塩基を脱アミノ化して他の塩基に変換することができれば、遺伝暗号を変換することができます。私たちの研究室では、部位特異的なRNAの脱アミノ化法の確立を目指して研究しています。

最後に

 この様に、私たちの研究室ではRNA研究の知見を活かし、RNAに直接作用してRNAの機能を改善する次世代の疾患治療法の研究に取り組んでいます。従来の遺伝子治療は、機能しない遺伝子に代わりの遺伝子を補充する治療でした。私たちは壊れた遺伝子を修復する治療の確立を目指して研究を続けています。

 
図1.選択的スプライシングの種類
Pre-mRNAはスプライシングによって複数のmRNAを生成します。その過程が選択的スプライシングで、図の様にタンパク質をコードした部分の選択法が異なるため、似て非なるmRNAが生成されます。
  図2.人工RNAエディティング酵素
RNAエディティングを触媒する酵素の活性部位を人為的標的RNAに誘導するため、標的に相補的はguide RNAを用いる。 作成したRNAエディティング酵素は細胞内でA⇒GやC⇒Uの変換を引き起こし、変異GFPを野生型に修復することができる。

主な研究業績

  1. Site-directed RNA editing by adenosine deaminase acting on RNA (ADAR1) for correction of the genetic code in gene therapy, Md Thoufic Anam Azad, Sonali Bhakta, Toshifumi Tsukahara, Gene Therapy, 24, 779-786 (2017)
  2. Chemical RNA Editing for Genetic Restoration: The Relationship between the Structure and Deamination Efficiency of Carboxyvinyldeoxyuridine Oligodeoxynucleotide, Vu Thi Luyen, Nguyen Thi Kim Thanh, Md Thoufic Anam Azad, Hitoshi Suzuki, and Toshifumi Tsukahara, Chemical Biology & Drug Design, 87, 583-593 (2016)
  3. Endogenous Multiple Exon Skipping and Back-splicing at the DMD Mutation, Hotspot. Hitoshi Suzuki, Yoshitsugu Aoki, Toshiki Kameyama, Takashi Saito, Satoru Masuda, Jun Tanihata, Tetsuya Nagata, Akila Mayeda, Shin’ichi Takeda, Toshifumi Tsukahara, Int. J. Mol. Sci. 17(10), 1722 (2016)

使用装置

Applied Biosystems 3130xl Genetic Analyzer(DNA sequencer)
Affymetrix GeneChip System
Stratagene Mx3000P(Real-time PCR)
Fujifilm LAS3000
Agilent 2100 Bioanalyzer

研究室の共同専攻における強み

 融合科学共同専攻では、 情報系教員との連携により、バイオインフォマティクスにもバイオ系の実験にも強い生命科学者の育成が可能です。また、金沢大医学系教員との連携によって臨床応用を目指したバイオテクノロジーや創薬の研究開発が可能となります。さらには、デバイス開発研究を行う教員との連携で、新たなバイオ計測技術の開発や、それを元にした診断法開発にも挑戦できます。
 様々な分野を専門とする教員・学生と一緒に勉強し研究する中で、互いに教え・教わり合うことを通じて自らの弱みを克服し、強みをより強化することができます。

[研究室HP] URL:http://www.jaist.ac.jp/ms/labs/tsukahara-www/index.html

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