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【開催報告】第7回 JAIST連続セミナー「パズルと知」
2026年04月15日(水)、コワーキングスクエア金沢香林坊にて、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来デザイン研究センター主催の連続セミナー「○○と知~新たな学び」の第7回を開催いたしました。
本セミナーシリーズは、昨年度から引き続き開催しており、最先端の科学技術をテーマに科学技術の最先端を走る講師の方から技術の最新動向を学び、専門用語を使わず参加者同士の対話を通じて「新たな視点」を発見することをコンセプトとしています。
今回のテーマは「パズルと知:パズルで解き明かす問題の難しさ」
当日の様子をご報告いたします。
インプットセミナー:
今回のプレゼンターには、当大学 副学長・先端科学技術研究科 コンピューティング科学領域 教授でありJAISTギャラリー長を務める上原 隆平教授が登壇しました。上原教授の専門は理論計算機科学、「問題の難しさ」を測る研究であり、研究に関連する折り紙やパズルを題材にご講演いただきました。冒頭には、JAISTに世界三大パズルコレクションの一つに数えられる約1万点のパズルが所蔵されている、という㊙︎エピソードも紹介されながら、講演の中心として、120年以上未解決であった「デュードニーの分割問題」について説明していただきました。

1902年に英国の作家デュードニーが出題した「正三角形を最小ピース数で切って正方形に並べ替える」というこの問題について、4ピース解は古くから知られていたものの、「3ピースでは不可能か否か」は長年証明されずにいました。
上原教授の研究グループはこれに対し、背理法と位相的分類(トポロジー分類)を用いて無限のケースを39通りに帰着させ、3ピースでの変換が不可能であることを証明し、この成果は米Scientific American誌において 「2025年の数学的ブレイクスルー」 に選出されたことを共有されました。
講演後半では、古典的なシルエットパズル(4ピースでT字型を作る課題)を参加者が実際に手を動かして解くワークが設けられ、「見ただけでは気づけないことが、手を動かすと見えてくる」というパズルの本質を体感する時間となりました。
クエスチョン&ディスカッション:パズル・研究への質問
各グループから上原先生に対して、パズルと研究について質問が寄せられ議論を深めました。
パズルについてでは、国ごとの文化の違い(ヨーロッパの古典コレクション、アメリカの3Dプリンター系、日本の職人によるからくり文化)や、上原教授自身が国際会議 International Puzzle Party で新作パズルを発表している作り手でもあること、「解ける三角形の穴問題」の補足説明などが共有されました。 研究についてでは、「研究のきっかけと、社会への役立ち」という問いに対して、「パズルは問題の抽象化であり、パズルのために開発したアルゴリズムが、工場の生産スケジューリングなどの現実問題に転用できる」ことが語られました。また「難しい問題に取り組み続けるコツ」としては「考えずにはいられない、という引っかかりの感覚があるかどうか」という、研究者ならではの言葉が印象に残りました。
クエスチョン&ディスカッション:
AIが解けるパズルと、解けないパズルとは
後半のグループディスカッションでは、「AIが発達して解けるパーツと、AIが発達しても解けないパーツ」というテーマで議論が行われ、各グループから異なる切り口の答えが共有されました。
グループ① 「身体感覚・非合理性」に注目
AIは視覚・聴覚データに還元できない身体感覚や非言語情報を扱えず、人間特有の「非合理な判断」も再現できない。論理ステージ上の処理から外れるパズルはAIには解けない。
グループ② 「感情と違和感」に注目
人間はパズルを解く過程で「この方向では無理そうだ」と当たりをつけて諦めることができるが、AIにはそれがない。また「違和感」こそがパズルの本質であり、その感覚データなしにはAIは解くことができない。
グループ③ 「想像力と物理世界」に注目
AIが得意なのは現状ネット上の探索であり、想像力が必要な領域には届かない。3次元の物理パズルは一度データ化してもAIには最終的な改新ができず、総当たり的な最適解の提示に留まる。
グループ④ 「ルールの明快さ」に注目
ルールが明快な場合はAIが探索で解ける。しかし「紙を裏返して初めて解ける」といった、ルールそのものの創造的な再解釈を必要とするパズルは、AIには発想できない。


上原教授からの総括
上原教授からは、「JAISTの副学長として、AI時代の教育をどう展開するか常に悩んでいる。研究者・教育者として何を伝えていくのか、答えが見えにくい時代にあって、今日皆様からいただいた『AIの限界』についての視点は非常に参考になった。今後のJAISTにおけるAI活用の方向性に活かしていきたい」とのコメントが寄せられ、参加者と研究者が共に未来を考える時間となりました。
Future Writer:吉羽
連続セミナーのご案内
本セミナー「○○と知〜新たな学び」は、2026年度も毎月第3水曜日に定期開催します(8月は休講)。 議論を交えながら新たな視点を養うべく、毎回異なるテーマで最先端の研究者が話題を提供します 。
【開催概要】
日時: 毎月第3水曜日 18:00〜19:40
場所: コワーキングスクエア金沢香林坊
対象: 高校生以上(新しいこと・話すこと・考えることが好きな方)
参加費: 無料
ご応募はこちら(https://forms.cloud.microsoft/r/QiwdsYwjMg)のフォームからお願いいたします。
【今後のラインナップ】
- 5/20 (水): 結晶と知(JAIST 大島 義文 教授)
- 6/17(水): 分断しにくい繋がりと知(JAIST 林 幸雄 教授)
- 7/15(水): 対人コミュニケーションと知(JAIST 岡田 将吾 教授)
- 9/16(水):生命と知(JAIST 栗澤 元一 教授)
科学技術と私たちの未来について、肩肘張らずに語り合える場として、皆様の継続的なご参加を心よりお待ちしております。
今回の講演に関連するコンテンツのご紹介
上原教授は、実業家の堀江貴文氏との対談にも出演されています。今回のセミナーでお話しいただいた「悪魔の証明」「折り紙の研究」について、より詳しくお知りになりたい方はぜひご覧ください。
【HORIE ONE本編】 「120年越し、不可能を証明した研究者/”数学の天才”透視技術の研究室に潜入」
【ホリエモンチャンネル】 「『折り紙』は世界的な研究テーマ?面白すぎるアルゴリズム研究の世界」
【ホリエモンチャンネル】 「アルゴリズムが解決する社会問題と折り紙が秘める新たなビジネス」