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【開催報告】第1回 JAIST連続セミナー「量子と知」

 2025年10月15日(水)、コワーキングスクエア金沢香林坊にて、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来知識創造機構 未来デザイン研究センター主催の連続セミナー「○○と知〜新たな学び」の第1回を開催いたしました。
 本セミナーシリーズは、最先端の科学技術をテーマに、専門用語を使わず、市民の皆様と共に「新たな視点」を発見することを目的としています。科学技術の最先端を走る講師の方から技術の最新動向を学び、参加者同士の対話を通じて新たな視点を発見することをコンセプトとしています。 記念すべき第1回のテーマは「量子と知:未来の生活への扉」。当日の様子をご報告いたします。

インプットセミナー:難解な「量子」を身近に


 第1回のプレゼンターには、当大学先端科学技術研究科のリム 勇仁(Lim Yuto)教授が登壇しました。2025年にJAIST超越量子未来アリーナ(taQumi)を設立予定のリム教授より、次世代通信インフラを支える量子技術について解説していただきました 。

 「量子」と聞くと難解な物理学をイメージしがちですが、本セミナーのコンセプト通り、専門用語を極力使わない平易な言葉で語られました 。
 特に、量子技術の応用分野を大きく3つに分類し、それぞれの特徴と社会へのインパクトを解説しました。

  • 量子コンピューティング
  •  従来のスーパーコンピュータで何兆年もかかる計算(巡回セールスマン問題などの組み合わせ最適化)を、一瞬で解く可能性を秘めています。物流、創薬、材料開発などでの活用が期待されます。
  • 量子セキュリティ
  •  通信「量子もつれ」や「量子テレポーテーション」の原理を応用し、理論上盗聴が不可能な通信を実現します。国家機密や金融データなど、重要情報の保護に革命をもたらします。
  • 量子センシング
  •  従来検出できなかった微細な変化(脳波、地下資源、火山活動など)を超高感度で検知します。医療診断の精度向上や防災分野での貢献が見込まれます。

技術・研究動向:世界の覇権争いとロードマップ


 続いて、世界における量子技術の研究開発競争の現状と、今後のロードマップについて非常に興味深いデータが示されました。

  • 世界的な投資格差
  •  量子技術への国家予算規模を比較すると、日本を1とした場合、アメリカは約7倍、中国は約21倍もの巨額投資を行っており、世界中で熾烈な開発競争が繰り広げられています(2023年時点)。
  • 企業による開発競争
  •  ハードウェア開発では、IBMやGoogleが世界をリードしています。特にIBMは「Starling」計画などで具体的なロードマップを示しており、2029年までにはエラー耐性を持った「論理量子ビット」を200ビット程度まで引き上げる目標を掲げています。
  • 「量子インターネット」への展望
  •  現在の量子コンピュータ開発(FTQC:Fault-Tolerant Quantum Computing/誤り耐性量子コンピュータ)の先には、複数の量子コンピュータを接続する「量子インターネット」の構築が見据えられています。リム教授は、現在の状況を1969年にインターネットの原型(ARPANET)が生まれた瞬間に例え、これから量子ネットワークがつながっていくことで、想像を超えるイノベーションが起きるだろうと締めくくりました。

クエスチョン・ディスカッション:技術で描く未来


 後半のディスカッションでは、参加者の皆様がグループに分かれ、「もし量子技術が自由に使えたら?」というテーマでアイデアを出し合いました。

  • 移動の革命: 量子テレポーテーションの概念から着想を得た「どこでもドア」のような移動手段。
  • 健康の未来: 量子通信の性質を利用した遠隔診療のプライバシー保護。
  • 社会の最適化: 量子コンピュータによる物流や交通の最適化、食品ロス削減へのアプローチ。

 SFのような夢のある話から、直面する社会課題の解決まで、参加者の皆様の柔軟な発想により、技術が社会に実装された際の具体的なイメージを共有する場となりました。

連続セミナーのご案内

 本セミナー「○○と知〜新たな学び」は、2025年度の毎月第3水曜日に定期開催しております 。 量子技術だけでなく、イノベーション、通信、組織論など、毎回異なるテーマで最先端の研究者が話題を提供します 。

【開催概要】

【今後のラインナップ】

  • 11/19(水): イノベーションと知(JAIST 伊集院 幸輝 講師)
  • 12/17(水): B5Gと知(NICT 石津 健太郎 氏)
  • 1/21 (水): 組織と知(JAIST 島田 淳一 教授)
  • 2/18 (水): 不確実性と知(JAIST 吉岡 秀和 准教授)
  • 3/18(水): 未来へのまなざしと知(JAIST 白肌 邦生 教授)

 科学技術と私たちの未来について、肩肘張らずに語り合える場として、皆様の継続的なご参加を心よりお待ちしております。

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