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東大xJAISTによる「Majority Judgment」を活用した被災者ニーズ集約の実証調査を中能登町で開始

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来デザイン研究センター長の島田淳一教授は、小泉周副学長及び宮木幸一客員教授(東京大学公共政策大学院GraSPPシニアリサーチフェロー)と、2024年1月の能登半島地震からの復興を促進するため、石川県鹿島郡中能登町で新しい投票・意思決定理論「マジョリティ・ジャッジメント(Majority Judgment:MJ)」を、災害被災地のニーズ調査に適用する取り組みを行います。

学術的新規性と社会的意義

本プロジェクトの最大の特徴は、災害復興の現場において、従来の「多数決」や「二者択一」に代わる革新的な意思決定手法「マジョリティ・ジャッジメント(MJ)」を導入する点にあります。 従来の災害調査では、行政基準による一方向的な評価や、「必要か否か」を問う単純なアンケートが主流であり、被災者の複雑な優先順位や少数派の切実な声を拾い上げることが困難でした。
MJは、選択肢に対して「Excellent(優秀)」から「Reject(却下)」までの言語的グレードで評価を行い、その「中央値」を用いて合意形成を図る手法です。これにより、声の大きな集団に左右されず、また極端な意見による平均値の歪みを防ぎながら、市民の多様な価値観を反映した「納得感」の高い合意を導き出すことが可能となります。
パリ市の市民参加型予算などで実績のあるこの手法を、災害復興という危機対応の文脈へ応用することは世界的に類例が少なく、新しい社会実装モデルとして注目されています。

期待される効果

本取り組みにより、被災者自身が復興プロセスの主役となり、行政と協働する「ボトムアップ型」の復興ガバナンスの実現が期待されます。具体的には以下の効果が見込まれています。

  1. 真のニーズと優先順位の可視化: 
    支援物資や計画に対する被災者の細やかな評価を可視化し、何が最優先事項であるかを科学的に明らかにします。
     
  2. EBPM(証拠に基づく政策立案)の実践: 
    多数決では埋もれてしまう声を拾い上げ、客観的なデータに基づいて政策を立案することで、後々の不満や対立を低減します。
     
  3. 技術と理論の融合による透明性の確保: 
    将来的にはブロックチェーン技術(PubChain)との連携により、改ざん不可能な形でのデータ記録とリアルタイム分析を実現し、信頼性の高い意思決定基盤の構築を目指します。
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