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【開催報告】第5回JAIST連続セミナー「不確実性と知」

 2026年2月18日(水)、コワーキングスクエア金沢香林坊にて、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来知識あ創造機構 未来デザイン研究センター主催の連続セミナー「○○と知〜新たな学び」の第5回を開催いたしました。
 本セミナーシリーズは、最先端の科学技術をテーマに、専門用語をできるだけ使わず、市民の皆様とともに「新たな視点」を発見することを目的としています。プレゼンターによるインプットセミナーを踏まえ、参加者同士の対話や発表・共有を通して、科学技術と社会との関わりを身近に考える場として実施しています。今回は「不確実性と知」をテーマに、当日の様子をご報告いたします。


 第5回のプレゼンターには、北陸先端科学技術大学院大学 データ社会メディア研究領域の 吉岡秀和准教授 にご登壇いただきました。

 今回のテーマは、『わからない』ことを前提にした自然と人類の共存です。吉岡准教授は、自然環境と社会の持続的な共存、資源・環境管理、不確実性下での意思決定支援などを研究されており、数理モデルを通じて現実の複雑な課題に向き合う研究に取り組まれています。

インプットセミナー:「わからない」を前提に、未来をどう考えるか

 「物事には一つのはっきりした答えがある」。私たちはついそう考えがちですが、今回の講座では、あえて「不確実性」を前提として現象を捉えることの重要性が示されました。自然現象に見られる「ゆらぎ」や「わからなさ」こそが、理解を深める鍵であるという視点は非常に示唆に富むものでした。

 具体的な事例として「アユの遡上」が取り上げられました。アユの遡上数は日単位の集計では単純な現象に見える一方で、10分単位の微細なデータ分析を行うと、時間帯による増減や断続的な挙動といった複雑な「ゆらぎ」が確認できます。この事例は、自然現象の動的な性質を解明するためには、単純な結果のみならず、時系列的なプロセスを詳細に追跡することの重要性を示唆しています。

 不確実性は「何もわからない状態」を指すものではなく、限られた情報から思考を深め、より適切な判断を導き出すための出発点であると定義されました。自然や社会の複雑な構造に向き合うためには、単一の正解を求める姿勢から脱却し、現象の背後にある動きや変化のメカニズムを注視し続けることが重要であると結論付けられました。

クエスチョン・ディスカッション:不確実性は善?悪?

 後半のディスカッションでは、参加者の皆様がグループに分かれ、「未来社会にとって不確実性はどれくらい善であり、どれくらい悪なのか」をテーマに議論を行い、発表を行いました。各グループとも白熱した議論が繰り広げられ、それぞれ独自の視点からこの問題にアプローチしました。各グループの議論内容は以下の通りです。

  • グループ① 制御可能性に基づく善悪の基準
     不確実性そのものの有無ではなく、その結果生じる事象に対して事前に対処やコントロールが可能かどうかを基準に、「善(対処可能)」と「悪(対処困難なリスク)」を定義しました。

  • グループ② 立場と文脈による価値評価
     育児休暇の期間という具体的かつ不確実性の高い事象を主軸に、企業側と個人側の双方の視点から善・中立・悪の評価軸を作成し、文脈によって不確実性の捉え方が変わることを整理しました。

  • グループ③ 日常における「リスク」と「娯楽」の境界線
     社会的な生活基盤においては不確実性を「排除すべき悪」とする一方で、エンターテインメントなど個人の体験においては「楽しさや面白さという善」として享受するという、目的別の二面性を議論しました。

  • グループ④ 知る喜びと可能性としての不確実性
     科学技術の進歩により「何が不明か」が解明されていく過程をポジティブに捉え、未来の子供たちにとっては、不確実性がある状態こそが夢や期待といった「可能性」の源泉になるのではないかと結論付けました。

 今回のテーマである「不確実性と知」は、正解を一つに定めにくいからこそ、参加者それぞれの経験や関心が議論に反映されやすいテーマでもありました。自然環境の変化、社会の複雑化、将来予測の難しさといった課題に対して、どのような知識が必要なのか、また科学的な知見を社会の意思決定へどのようにつないでいくのかについて、参加者同士で多角的に考える場となりました。インプットセミナーで得た視点をもとに、「わからない状況の中でも考え続けること」そのものが、これからの社会にとって重要な知のあり方であることを共有できた、有意義な時間となりました。

連続セミナーのご案内

 本セミナー「○○と知〜新たな学び」は、2026年度も継続して毎月第3水曜日に定期開催しております 。 科学技術だけでなくだけでなく、イノベーション、組織論など、毎回異なるテーマで最先端の研究者が話題を提供します 。

【開催概要】
日時: 毎月第3水曜日 18:00〜19:40
場所: コワーキングスクエア金沢香林坊
対象: 高校生以上(新しいこと・話すこと・考えることが好きな方)
参加費: 無料
ご応募はこちら(https://forms.cloud.microsoft/r/QiwdsYwjMg)のフォームからお願いいたします。
【今後のラインナップ】

  • 3/18 (水): 未来へのまなざしと知(JAIST 白肌 邦生 教授)
  • 4/15 (水): パズルと知(JAIST 上原 隆平 教授)
  • 5/20 (水): 結晶と知(JAIST 大島 義文 教授)
  • 6/17(水): 分断しにくい繋がりと知(JAIST 林 幸雄 教授)
  • 7/15(水): 対人コミュニケーションと知(JAIST 岡田 将吾 教授)
  • 9/16(水):生命と知(JAIST 栗澤 元一 教授)

 科学技術と私たちの未来について、肩肘張らずに語り合える場として、皆様の継続的なご参加を心よりお待ちしております。

Future Writer:福山正宗

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