自由で刺激的な雰囲気に彩られた学生生活

 私がJAISTの博士前期課程に入学したのは、30歳を越えてからでした。教育学部を卒業後、20代後半にコンピュータの専門学校に勤めるようになって計算機に興味を持ち、折しも世の中には人工知能ブームが到来。人間のように賢いロボットがつくれる、そんな夢も語られて、これは面白そうだと、大学院を目指したのです。当時は社会人が入れる大学院がほとんどなく、私のような経歴でも受け入れてもらえるのがJAISTでした。さらにありがたかったのは、門外漢の者に対しても最初に基礎を教えてくれた点であり、情報系学部で学ぶ4年間をギュッと濃縮したような授業により、研究に入るための知識を固めることができました。その後、特に将来を考えずに続けたロボットの研究が面白くなり、ドクター修了後も今に至るまで研究の道を歩み続けています。

 JAISTでは一期生だったことも影響してか、私を含めてまわりの学生は経歴も様々で、哲学、教育学、数学と、異分野から集まった学生がお互いに刺激し合い、寮生活では、毎夜科学について、研究について議論したものです。大学草創期の熱く自由な雰囲気があり、仲良くなった地元の方から畑を借り、“JAIST農園”と名付けてスイカを作ったりと、楽しい毎日でした。当時の多様性に富んだ、熱い研究の場は今も連綿と受け継がれていることと察します。近年、各大学院の定員が増やされ、進学の選択肢も広がる中でJAISTには恵まれた教育研究設備、そして都会から離れ、学問的な流行にもあまり左右されない環境があります。自分の頭で考えオリジナリティを生み出したい研究者には格好の場であるように思います。

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