日時:5月12日(月) 14:30-17:30 場所:コラボ2 (知識科学研究科2棟5階) 講演題目:学習はコミュニケーション能力の進化をいかに促進するか 講演者:鈴木麗璽先生 名古屋大学大学院情報科学研究科 複雑系科学専攻創発システム論講座助教 講演要旨: 獲得形質が遺伝する仕組みが無くても,個体が生涯の学習によって 獲得していた形質が次第に先天的な形質へ進化していく現象はボー ルドウィン効果と呼ばれています.この現象が最初に提案されたの は100年以上も前のことですが,1980年代後半に計算論的な進化モデ ルによってその存在がはっきり示されて以来注目を浴び,最近では ショウジョウバエなどを使って実験的にもその進化における役割が 調べられています.我々はボールドウィン効果をはじめとして,進 化と学習という2つの適応過程がどのように影響しあっているかにつ いて人工生命モデルを構築して調べています. 今回はその中から,個体間相互作用に基づく動的環境の典型的な設 定として,単純なコミュニケーション能力の進化を取り上げた研究 をご紹介します.具体的には,コミュニケーションの際のシグナル の送信(生成)・受信(解釈)が成功した場合の適応性を表すレベ ルがそれぞれ独立の形質によって決まり,高いレベルを持つ形質ほ どその発現のための遺伝的制約が大きい状況を考えます.コミュニ ケーションは送信者・受信者のレベルが一致した場合にのみ成立し, 個体は生涯のうちでよりレベルの高いコミュニケーションを成立さ せようと学習(形質の可塑的な変化)を行います.形質の初期状態 とその可塑性の進化実験を行った結果,ボールドウィン効果が繰り 返し生じることで集団全体が次第に高いコミュニケーションレベル を獲得していくことを示します.また,時間が許せば言語進化とボー ルドウィン効果に関するモデルもご紹介したいと思います.