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研究

教員インタビュー(この人に聞く)

宮地充子教授

ディジタル世界の安全・安心を支える情報セキュリティ研究を展開

情報科学研究科 宮地充子教授

大阪大学博士(理学)。松下電器産業株式会社を経て1998年に本学情報科学研究科に着任。2007年より現職。専門は情報セキュリティ、数論アルゴリズム、暗号理論。

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あらゆるデバイスがインターネットにつながっている今、ディジタルデータを第三者から秘匿する方式やデータそのものの正しさを保証する方式を研究する情報セキュリティの重要性は増すばかりです。
JAIST情報科学研究科の宮地研究室は、国内屈指の情報セキュリティ研究機関であり、暗号理論から応用プロトコル、モデリングまで、幅広い領域を対象に旺盛な研究活動を行っています。平成26年度は、楕円曲線暗号に関する研究業績が評価されて文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞するとともに、安全かつプライバシに配慮したビッグデータの流通プラットフォームの実現を目指す研究テーマでJSTが公募する戦略的創造研究推進事業CRESTに採択されました。

宮地充子教授

情報セキュリティが担う役割について教えてください。

情報セキュリティというと、サイバー攻撃など外部からの意図的な攻撃に対する防御策というイメージがあると思いますが、近年は「データを使うためにどうするか」というスタンスで研究が展開されています。インターネットにおける脅威は自然災害やソフトウェアの不具合などの要因によっても生じます。データを使う上でこうした危険性を予知して回避できるようにしたり、データを駆使して新しいサービスを創造したりすることに欠かせないのが情報セキュリティ技術であるという位置づけです。

情報セキュリティはどんなところで活用されているのですか?

社会はデジタルネットワーク化がどんどん進んでいます。たとえばコンビニのコピー機は、ひと昔前は故障すると技術者が店を訪れて対応していましたが、今はネットにつないで集中管理しています。医療機関や介護施設では、患者や入居者の事故を防ぐために至るところにセンサーが設置され、即時に異常をスタッフに知らせます。小売業界では、センサー付きの商品タグを活用することで、きめ細かなマーケティングをしたり、商品管理を効率化したりといった取り組みもあります。いずれの場面でも、データを第三者から秘匿したり、データそのものの正しさを保証したりする情報セキュリティ技術は重要な役割を担っています。

宮地充子教授

これまでの研究成果や、現在のアプローチについて教えてください。

私自身がこれまで取り組んできた主要な研究のひとつに楕円曲線暗号があります。楕円曲線暗号という技術は一般的に小メモリで安全性が高いとされていますが、私はこの暗号化方式に対して数学的に安全性を示すことに成功しました。楕円曲線暗号の実装にも取り組み、全サイドの攻撃に対し安全な楕円曲線暗号の実装手法を提案し、いろんなところで標準化されています。
以前はこうした安全性解析を主に行っていたのですが、現在は暗号基盤研究、セキュリティプロトコル、セキュリティモデリングの3つを柱に、より広範囲に渡る研究を行っています。

研究室では企業との共同研究も数多く行っています。

最近企業からの要望として多いのが、組み込みソフトウェアにおけるセキュリティをどう実現するか、ということです。具体的なところでは車載用組み込みソフトのセキュリティ対策について研究を進めています。先行車を認識して速度に応じた車間距離を維持したり、衝突を避けたりと、自動車の組み込みソフトは大きく進化しています。システムの信頼性を高めるためには、「得られたデータが正しいか」という点が非常に重要となりますから、情報セキュリティ技術の重要性はますます高まっていくでしょう。

IT業界では「ビッグデータ」の活用が重要なキーワードになっています。

「Data is the new oil.(データは新しい石油だ)」という言葉がありますが、これはデータを適切に加工・精製することができれば石油のように大きな価値を生むという意味です。適切な加工に欠かせない技術の一つが、プライバシなどのデータ所有者の権利を守る情報セキュリティ技術です。
私たちは、KDDI研究所、産業技術総合研究所、東京大学とともに「ビッグデータ総合利活用促進のためのセキュリティ基盤技術の体系化」という研究課題に取り組んでいます。これは平成26年度のCRESTに採択されており、JAISTとKDDIが各種セキュリティ技術の研究開発を行ってプロトタイプを構築し、産総研と東京大学においてそれぞれ予防安全と医療の分野で実証的に評価を行います。ビッグデータに関する理論研究はたくさんあるのですが、実装に使えるかというと難しく、私たちのチームが世界に先駆けて未開拓の分野にチャレンジしていると言えます。準備期間を経て今年から本格的にスタートし、少しずつ研究成果が出てきているところです。

この分野を研究する醍醐味を教えてください。

情報セキュリティは1970年代からスタートした歴史が浅い学問ではありますが、さまざまな理論を要素技術とする「総合科学」だと言えます。私自身のバックグラウンドも数学です。情報セキュリティの研究は、理学領域を専門に学んだ人がその知識を使ってどう世の中に貢献していくかと考えたときのひとつの手段になります。

教育面でのポリシーを教えてください。

高いコミュニケーション能力を備えた人材を育てるということが基本です。自分が行っている研究について第三者にきちんと伝えることはもちろん、人の話を聞くということも重視します。情報セキュリティの研究のタネは世の中のあらゆるところに転がっています。人の話を聞く力があるということは、すなわち問題を発見できる力があるということです。
当研究室では、企業や海外の研究機関との共同研究、国際学会での発表も積極的に行っているので、学生は他では得られないような経験を積むことができます。

学生は社会に出てどんな分野で活躍できますか?

以前は電機メーカーへの就職が多数でしたが、インターネットが広く浸透し、データを活用したいというニーズが高まっている今は、就職の選択肢は大きく広がっています。情報セキュリティの知識と技術を身につけた人材は、社会のどんな分野でも活躍できます。

平成27年6月掲載

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