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非正多角形細孔を持つ多孔高分子材料の開拓に成功

非正多角形細孔を持つ多孔高分子材料の開拓に成功

 北陸先端科学技術大学院大学(学長・浅野哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科/環境・エネルギー領域江 東林教授らの研究グループは、非正多角形細孔を有する高分子材料の開拓に成功した。
 多孔性高分子は、最近、環境・エネルギー問題の解決とも関連して、温室効果ガスである二酸化炭素を吸着分離したり、化学反応を促進したり、電気エネルギーを貯蔵する機能について各国で盛んに研究が行われ、機能性材料として様々な分野で応用されている。これまでの多孔材料は、その細孔が正多角形を有しており、非正多角形細孔を有する多孔材料の開発が困難であったが、本研究では、非正多角形細孔を有する高分子材料を合成し、これまでにない多孔形状を作り出すことに成功した。今後は、その特異な細孔構造に由来する新奇な機能の開発がより一層促進される。  
 本研究は、Nature Communicationsに2016年7月27日18時公開される。

1. 研究の成果
 今回研究開発された新種の多孔性高分子は2次元高分子注1) である。2次元高分子は、規則正しい分子骨格構造を有し、無数の細孔が並んでいるため、二酸化炭素吸着、触媒、エネルギー変換、半導体、エネルギー貯蔵など様々な分野で活躍され、新しい機能性材料として大いに注目されている。江教授らは、世界に先駆けて基礎から応用まで幅広い研究を展開し、この分野を先導してきた。
 これまでの2次元高分子は、他の多孔性材料と同様に、正多角形を有する細孔だった(図1の1)。例えば、正六角形や正方形、正三角形などを有する2次元高分子が開発され、その細孔サイズや環境を制御することで、様々な機能が発現されている。しかし、規則正しい構造を有し、かつ非正多角形細孔を作り出す2次元高分子は皆無だった。非正多角形を有する細孔は、形が合った特定の分子だけに対して吸着能を示し、また、特定の基質だけに対して触媒するなど特異な形状に基づいた機能の発現が期待されているが、その開発が困難であった。
 
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図1.1)従来の正多角形細孔を有する高分子の設計。2)今回開発した非正六角形細孔を有する多孔材料の設計。3)今回開発した非正方形細孔を有する多孔材料の設計。
今回、2次元高分子の設計に新しい原理を考案し、非正多角性細孔の構築を可能にした。具体的には、従来の1成分や2成分の重合システムから脱皮し、多成 分 の重合システムを開発し、規則正しい骨格配列構造を維持したまま、細孔の形状を非正多角に作り上げることに成功した。例えば、六角形の場合、対辺は3組に なっていることから、長さの異なる三つの成分でそれぞれペアを作り、分岐点の1成分と辺となる3成分の4成分で重合すると、非正六角形細孔を有する単一な 多孔性高分子が得られた(図1の2)。X線構造解析から、規則正しい配列を有し、非正六角形細孔を有することが明らかになった。
 また、六角形の場合、3組の対辺を長さの異なる2種類の成分で構築することに成功した(図1の2)。この場合、対辺の比率を1:2あるいは2:1に合わせ ることが重要なポイントとなる。いずれの場合も、規則正しい配列構造を有し、サイズの異なる非正六角形細孔を設計してつくることができるようになった。
 さらに、本研究では、六角形に加え、四角形にも適用できることを実証した(図1の3)。四角形の場合、対辺が2組になるため、長さの異なる2種類の成分と分岐点の1成分からなる3成分で重合することで、非正方形細孔を有する多孔材料の合成に成功した。
 以上の設計原理は、長さの異なる成分に限られることがなく、機能の異なる成分にも適用できることを実証した。例えば、電子ドナーとアクセプターを組み合わせて、特異な電子配列構造を作り出せる。この場合、正多角形材料に比べて、非正多角形材料の電気伝導が1800倍も高くなったことが分かった。これらの多孔性高分子は1グラムで、2000平米という巨大な表面積を持っており、ガス吸着と分離への応用が期待されている。
 多成分から構成された多孔性材料は、構造に複雑性をもたらしている。また、材料の多様性にも大きく寄与する。例えば、六角形の場合、従来の正六角形では、分岐点1成分と辺10成分の組み合わせでは、最大10種類の異なる多孔材料が合成できる。これに対して、多成分設計原理を用いれば、何と210種類の異なる多孔材料を作ることが可能となった。
2. 今後の展開
 今回の研究成果は、2次元高分子分野に新たな設計原理を確立し、これまでになかった新種の多孔材料の誕生に繋がった。今後、これらの特異な多孔構造をベースに、ガス吸着や分離、触媒、光・電子などの機能に関して、様々な革新的な材料の開発がより一層促進される。

3. 用語解説
注1) 2次元高分子:共有結合で有機ユニットを連結し、2次元に規定して成長した多孔性高分子シートの結晶化による積層される共有結合性有機構造体。

4. 論文情報
掲載誌:Nature Communications
論文タイトル:Multiple-component covalent organic frameworks(多成分共有結合性有機骨格構造体)
著者:Ning Huang(北陸先端科学技術大学院大学博士研究員), Lipeng Zhai(北陸先端科学技術大学院大学特別研究学生), Matthew Addicoat (ドイツ ライプツィヒ大学博士研究員), Thomas Heine (ドイツ ライプツィヒ大学教授), Donglin Jiang(北陸先端科学技術大学院大学教授)
掲載予定日:7月27日18時にオンライン掲載 DOI: 10.1038/NCOMMS12325

平成28年7月27日

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