PCサイトを見る

ニュース・イベント

プレスリリース

シリセン上へ分子を線状に集積 -分子の性質を損なわずに固定することに成功-

シリセン上へ分子を線状に集積
-分子の性質を損なわずに固定することに成功-

ポイント

  • シリセンへ有機分子を蒸着した結果、分子の性質が保たれたまま、シリセン上の特定の活性な場所に固定されることが分かった。
  • 有機分子とシリセンのつくる界面を実験と理論計算の両面から詳細に調べた例はなく、世界で初めての成果。

 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)(学長・浅野 哲夫、石川県能美市)の先端科学技術研究科応用物理学領域高村 由起子准教授アントワーヌ・フロランス助教らは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、ユーリッヒ総合研究機構、東京大学物性研究所と共同でシリセン上にヘモグロビン様の有機分子がその性質を保持した状態で固定されることを発見しました。
 シリセンは原子一層分の厚みしかない、ケイ素(Si)でできた二次元材料です。JAISTの研究チームは2012年にSiウェハー上に成長した二ホウ化ジルコニウム(ZrB2)薄膜表面にシリセンが自発的に形成されること、ZrB2とのエピタキシャル関係とシリセンの容易に座屈する性質により、これまで予想されたことのない構造と電子状態を有することを発見しました。炭素(C)の蜂の巣格子であるグラフェンなどの二次元材料は表面が不活性なために分子との相互作用が弱く、室温で一つ一つの分子を特定の場所に固定することは難しいのが現状です。今回、シリセン上に鉄フタロシアニン(FePc)分子を蒸着したところ、シリセンと基板であるZrB2との格子不整合により生じる縞状ドメインの境界に沿って活性な場所が存在し、そこに分子が固定されることが走査トンネル顕微鏡(STM)観察から明らかとなりました。Siは通常ダイヤモンド構造をとる半導体結晶ですが、その表面には未結合手が沢山存在し、化学反応により分子を壊してしまうことが知られています。今回のシリセンとFePc分子の場合は、分子の中心にある鉄原子がシリセンを構成するSi原子と強固に化学結合しているものの、フロンティア軌道を含む分子の電子構造は大きく変化しておらず、その性質が保たれていることがSTMによる実験と第一原理計算により明らかとなりました。このように有機分子とシリセンのつくる界面を実験と理論計算の両面から詳細に調べた例はなく、世界で初めての成果となります。
 今回の成果により、分子を固定しつつも分子の性質を損なわないという、シリセンのもつユニークな性質が明らかとなりました。今後は、この性質を利用してシリセンの分子スピントロニクス研究などへの応用が期待されます。
 本成果は、10月11日(水)にワイリー社の発行する論文誌「Advanced Materials(アドバンスド マテリアルズ)」誌にオンライン掲載されました。なお、本研究は、科学研究費補助金、東京大学物性研共同利用などの支援を受けて行われました。

pr20170925-1.jpg

Image courtesy of Tobias G. Gill, Vasile Caciuc, Nicolae Atodiresei, Ben Warner, and Cyrus Hirjibehedin.

<今後の展開>
 
シリセン上に磁性を持つ分子を固定できると、シリセンの分子スピントロ二クス分野への応用が期待されます。また、今後は、分子を蒸着したシリセンの電子状態の測定などを通して、シリセンの性質が分子吸着によりどう制御できるのかを調べていきたいと考えています。

<論文>
 "Guided molecular assembly on a locally reactive two-dimensional material"(局所的に活性な二次元材料上への誘導分子集積)
 DOI: 10.1002/adma.201703929
 Ben Warner, Tobias G. Gill, Vasile Caciuc, Nicolae Atodiresei, Antoine Fleurence, Yasuo Yoshida, Yukio Hasegawa, Stefan Blügel, Yukiko Yamada-Takamura, and Cyrus F. Hirjibehedin
 Advanced Materials 2017, 1703929.
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201703929/abstract
(オープンアクセス論文なので、どなたでもダウンロードできます。)

<共同研究先へのリンク>
Hirjibehedin Research Group, London Centre for Nanotechnology, University College London
https://www.ucl.ac.uk/hirjibehedin

Peter Grünberg Institut and Institute for Advanced Simulation, Forschungszentrum Jülich and JARA
http://www.fz-juelich.de/pgi/pgi-1/EN/Home/home_node.html

長谷川幸雄研究室、東京大学物性研究所
http://hasegawa.issp.u-tokyo.ac.jp/hasegawa/Welcome/Welcome.html

平成29年10月12日

PAGETOP