創造的音楽表現を 可能とする音楽演奏支援手法の検討 〜音機能固定マッ ピング楽器の提案〜


音楽との能動的な接し方の特徴は,自分なりの音楽表現という創造性の発揮に ある.しかし現実には音楽理論や楽器操作技術の困難により,多くの人は能動 的な音楽との接触を諦めている.筆者らは,これらの困難を計算機で支援する ことにより,誰でも容易に創造的音楽表現に取り組める楽器の実現を目指して いる.本論文では,そのための一手段として,音機能固定マッピング手法を提 案する.従来の楽器は音高を演奏インタフェース上の固定ポジションにマッピ ングする音高固定マッピング型の楽器であった.しかし,音には音高以外の属 性があり,その一つとして,音楽的環境に応じて個々の音が人に様々な情動的 作用を与える,機能という属性がある.音機能固定マッピングとは,常時一定 の演奏ポジションに一定の機能を持つ音をマッピングする手法である.ある音 の機能の判定には音楽理論に基づく解析が必要であるが,この手法によれば, 演奏者は必要な機能を持つ音を理論的解析を行なうことなく直接取り出せ,さ らにそれらを自由に組み合わせることにより,容易に自分なりの創造的音楽表 現を実現できるようになる.本論文では,特に音の機能の考え方が重要となる ジャズの即興演奏を対象として作成した試作器と,それを用いた被験者実験に ついて説明し,本手法の可能性について検討する.