研究・教育に対する抱負

 

教育に対する抱負

 大学の教員には教育・研究・管理・社会への貢献が求められるとよく言われますが,中でも最も大切なものは教育であるというのが私の基本的な考え方です.現在の北陸先端科学技術大学院大学は大学院だけの大学ですが,学部がないから教育をおろそかにしていいと考えている教員は皆無で,私の目から見ても教育に熱心に取り組んでいる教員ばかりです.私立の大阪電気通信大学に在職中は日々の講義に追われ,ゆっくりと自らの講義を振り返ることができませんでしたが,大学院大学に移って,学長補佐として大学の自己点検・評価とファカルティー・ディベロップメネント,いわゆるFD活動に携わって,教育を客観的に科学的な見方で考えることができるようになったことは私の人生でも特記すべき収穫であったと考えています.日本では「頑張れ」という言葉に代表される精神論が根強くあり,教育に対しても単に「熱心に取り組め」という精神論が横行している傾向がありますが,講義を良くする為にはどのような努力をすべきか,どのような準備をすべきか,何に気をつけるべきかを,学科,あるいは研究科の単位で細部まで検討すれば,他に比べて優れた教育を行うことができると考えています.理系の研究者として,論文を書く際には科学的な態度で,関連研究を調査し,従来研究の問題点を洗い出した後,新たな方式を提案し,それを従来方式と客観的に比較するということを行っていますが,こと教育とか大学運営となりますと,とたんに十分な調査なしに,不完全な自分の経験だけで論じる傾向が大学教員には見受けられます.このことを常に意識して科学的な態度で教育に取り組んでいく所存です.

 

研究に対する抱負

 研究者として自分でも満足できる研究成果をあげることは非常に重要なことでありますが,研究は趣味とは違うので,自己満足に終わってはならないと常に自分に言い聞かせています.どんな研究にも動機がありますが,これが最も重要です.純粋数学ならいざ知らず,情報科学の分野では社会・学会で解決が望まれている問題を研究対象とすべきでありましょう.さて,従来から取り組んで来ました計算幾何学は,計算機科学の基礎理論の中でも最も実学に近い存在であると確信しています.計算幾何学の初期の頃には理論の美しさも同時に求められ,ほとんど理論的にしか意味のない結果も多く見受けられましたが,最近では積極的に応用問題に取り組む研究者が多くなってきています.私自身も最近で計算幾何学の理論研究よりは計算幾何学の成果をどのように利用するかという立場から研究を行っています.