第7回シンポ 概要一覧

一般講演 1 ネットワーク指標と伝搬

O1-1:永田勝也, 白山晋(東京大学大学院工学系研究科)
題目:潜在リンクの実リンク化の違いによる情報伝播の変化
概要:口コミや感染症の伝播,集団の意思決定などの社会現象は,背景に存在する人間関係のネットワーク構造に影響を受けることが知られてい る.本稿では,人を介してどのように情報が伝播していくかを調べる.特に,潜在リンクと呼ばれる,共通のノードを有するがリンクが存在しないノード間の関 係性に着目する.潜在リンクを有する新たなネットワークモデルを提案し,モデルによって作られたネットワークに対して単純な情報伝播モデルを用いてシミュ レーションを行う.分析の際,情報伝播とネットワークの統計的指標の関係性を明らかにすることを試みる.分析ツールとして,データマイニングを使用する.

O1-2:小松孝紀,生天目章(防衛大学校 情報工学科 知能情報研究室)
題目:伝搬の拡大に適したネットワークの構成法
概要:本稿では,新しい情報や画期的な商品が社会に浸透していく様相をネットワーク上における伝播プロセスとして考える.特に,ネットワーク 構造を規定する隣接行列の最大固有値の逆数が伝播現象の閾値であることに着目し,最大固有値の最大化を目的とするネットワーク構成法を,進化的手法により 提案する.さらに,最大固有値を最大にするための簡単なネットワーク構成法を提案する.伝播現象をSISモデルによりをコンタクトプロセスとしてモデル化 し,ネットワーク上での伝播実験を行う.伝播閾値が小さいとされるスケールフリーネットワークやランダムネットワーク上での伝播プロセスと比較し,最大固 有値に着目し構成したネットワークが最も伝播閾値が低く伝播が生起し易いネットワークであることを明らかにする.

O1-3:湯浅友幸,白山晋(東京大学大学院工学系研究科)
題目:ネットワーク上のシミュレーションのデータマイニングによる分析
概要:ネットワーク上の現象をシミュレーションによって調べ,その結果を,平均頂点間距離,クラスター係数などの統計的指標との関係性から分 析した研究は多い.それらの多くは,限定したネットワークモデルで,生成パラメータを変え,当該ネットワークモデルによって制御可能な統計的指標が結果に 与える影響を調べるという方法を採用している.また,ネットワークモデル間の性質の違いのため,複数のモデルを用いて複数の統計的指標を算出し,それら全 体を説明変数として分析を行うものは少ない.一方,現象と統計的指標の関係は複雑であり,一つの統計的指標での分析は時として異なる知見を導くことが知ら れている.本稿では,はじめに複数の統計的指標が制御できるネットワークモデルを提案する.次に提案したモデルから多様なネットワークを生成し,大規模な シミュレーションを行い,複数の統計的指標とシミュレーション結果の多数の組を求める.それらをデータマイニングによって分析し,効率的に知見を導くとい う新たな方法論を提案する.

O1-4:小頭 秀行, 会田 雅樹, 中村 元(KDDI研究所)
題目:携帯電話による音声通話とEメールの通信先次数特性と相互関係
概要:携帯電話の急速な普及に伴い,ユーザが個人で情報通信端末を保有する環境になっている. その結果,トラヒック量やユーザ数など情報通信サービスの各種データには,人の繋がりを表す社会ネットワーク構造など人間社会の特性が反映されていると考 えられる. このような状況において,筆者らはこれまで,異なる情報通信サービスのデータを分析することで,データの背後にある一般の社会ネットワーク構造の解明を目 指してきた. 具体的に,携帯電話による音声通話とEメールの通信トラヒックを分析した結果,通信手段の違いにより異なる通信先次数分布が観測されることを示し,その発 生要因について考察を行った. 本稿では,これまでに観測及び検証した特性の相互関係を解析し,異なる次数特性が発生する条件を明らかにする.加えて,明らかにした条件の整合性につい て,実測データの結果を基に検証を行う.

一般講演 2 ダイナミクス

O2-1:Yoshimi Yoshino, Naoki Masuda(東大情報理工)
題目:Evolution of cooperation is a robust outcome in the prisoner's dilemma on dynamic networks
概要:Dynamics of evolutionary games strongly depend on underlying  networks. We study  the coevolutionary prisoner's dilemma in which  players change their local networks as well as strategies  (i.e., cooperate or defect). This topic has been  increasingly explored by many researchers. On the basis of active linking  dynamics [J. M. Pacheco et al., J. Theor. Biol. 243, 437 (2006), J. M. Pacheco et al., Phys. Rev. Lett. 97, 258103 (2006)], we show that cooperation is enhanced fairly robustly. In particular, cooperation evolves  when the payoff of the player  is normalized by the number of neighbors; this is not the case in the evolutionary prisoner's dilemma on  static networks.

O2-2:高口太朗,増田直紀(東大情報理工)
題目:接触イベントの時間間隔が非ポアソン的な投票者モデル
概要:社会現象ダイナミクスのモデル化の代表例として社会ネットワーク上の確率過程によるものがある。それらのモデルではペアごとの接触イベ ントの発生はポアソン過程に従うと仮定されてきた。近年、現実のコミュニケーションにおける接触イベント発生の時間間隔はポアソン的でなく裾野の長い分布 をしていることが報告されている。この特徴を意見形成の代表的モデルである投票者モデルに導入し、シミュレーションを行った。その結果、裾野の長い時間間 隔分布が意見統一に与える影響はネットワーク構造によって異なることがわかった。発表ではその理由についても考察する。

O2-3: 町田拓也(明治大学先端数理科学インスティテュート)
題目:ランダム・グラフ上の枝の量子探索
概要:量子コンピュータの基礎理論構築の1つのテーマとして,グラフ上の頂点を探索する量子アルゴリズムの研究が行われている.これまでに探 索アルゴリズムのいくつかは,量子ウォークによって構築されている.量子ウォークを用いることで,探索成功確率を高め,探索成功までの平均計算時間を古典 的なアルゴリズムよりも劇的に早くすることができるという結果がいくつか得られている.本研究では,頂点ではなく,枝を探索することに焦点をあて,グラフ 上の離散時間量子ウォークを適応することで,頂点を探索するのと同様,探索成功確率を高めることができる数値計算結果を得ることができた.

O2-4:小林直樹,白山晋(東京大学工学系研究科システム創成学専攻)
題目:局所構造の変化と現象の関係を用いたネットワークのデザイン
概要:ネットワーク構造の局所的な変化がその上で起こる現象に影響を与えることは知られている.局所構造の変化によって全体の特性が変わる が,その過程自体が分析されることは少ない.また,定量的な評価がなされることは少ない.本稿では,局所構造の変化と同期現象の関係を分析することで定量 化指標を導く.さらに,その指標を用いた同期に適したネットワーク作成手法を提案する.

一般講演 3 ネットワーク形成と頑健性

O3-1:目黒有輝, 林幸雄(北陸先端大)
題目:リンク淘汰とショートカット付加によるネットワーク自己組織化
概要:地理空間上にネットワークを構築する場合、出来るだけ少ないリンク本数で、素早く情報伝達ができ、不慮の故障や悪意のある攻撃に対して も頑健である事が望ましい。また、災害時や移動体の通信をも想定すると、自律分散的にネットワークが構築できることが重要となる。そこで、リンクの淘汰及 びパスの強化により構造がダイナミックに変化するネットワークモデルを考えた。 まず、一様ランダムなノード配置を初期構造として、人口密度に応じて各ノードに割り当てられた確率でパケットを発生させる。その際、パケットの通過頻度が 低いリンクの淘汰や、頻度が高いパスを強化する等のショートカット付加を行う。その構造的特徴、通信効率、頑健性に関する結果の詳細については、発表時に 説明する。

O3-2:今井哲郎,田中敦(山形大学大学院理工学研究科)
題目: ASネットワークトポロジのためのゲーム理論的トポロジ形成モデルの提案
概要:近年のインターネットトポロジに関する研究により,インターネットにおけるAS(Autonomous System)間トポロジが,スケールフリー性と呼ばれるべき則の次数分布に従うことが分かってきている.我々はこれまでに,ASトポロジ形成をモデル化 したゲーム理論的なスケールフリートポロジ形成モデルを提案し,この提案モデルがミクロ的にASトポロジ形成の説明モデルとして妥当であること,またマク ロ的にスケールフリートポロジを生成するモデルの一つとなりうることを示している.本発表では,我々のトポロジ形成モデルを紹介し,これまでに得られた数 値的,解析的な結果について述べる.

O3-3:松久保潤(北九州工業高等専門学校),林幸雄,小野泰正(北陸先端大)
題目:長方形分割ネットワークにおける階層構造に基づくショートカットリンク効果
概要:近年,無線のアドホック通信ネットワークなどの分野で,地理的空間に埋め込まれたネットワークモデルの研究が盛んに行われている. このようなモデルに,ネットワークを生成する領域全体を自己相似な部分領域に分割しながら格子状に成長するMSQモデルが提案されている. MSQモデルは,他の地理的ネットワークモデルと比較して,高いロバスト性と短い最短経路長をもつ. 一方,Kleinbergは,均一なOut-degreeをもつ頂点から成るネットワークにショートカットを追加することで,局所的な情報のみを用いてO (logN)の探索ホップ数を 実現できるネットワークの構築理論を示している. 本報告では2つの研究の関連性に着目し,従来のMSQモデルとKleinbergの手法に基づいてショートカットを追加したMSQモデルの特性を比較・検 討する.

O3-4:Toshihiro Tanizawa(高知工業高等専門学校), Shlomo Havlin, and H. Eugene Stanley 
 
題目:Analytical study of the robustness of scale-free networks with degree-degree correlation against targeted node removal 
 
概要:It is well known that the scale-free network is very fragile against targeted node removal of highly connected nodes (hubs). Most of the existing analyses are, however, only based on the degree distribution of the network and how degree-degree correlations between nodes affect the robustness against selective node removal does not seem to be well known at present. In this presentation, we derive analytical expressions for the percolation threshold and the giant component size when the degree-degree correlation is fully incorporated and for different types of node removal. Next, we numerically improve the robustness of several scale-free networks against selective node removal with these expressions and find that the robustness is considerably improved by introducing the assortative degree-degree correlation between hubs.  

 

一般講演 4 ソーシャルネット

O4-1:Masaki Tomochi(沖縄国際大学 経済学部), Atsushi Tanaka, Tatsuhiro Shichijo
題目:Stratification and Nested Structure of Small World in a Friendship Network
概要:We have analyzed effects of spatial and social distance on a friendship network. We used the data obtained from "Tomocom.jp" which is a social network service where approximately 300 undergraduate students living in several areas in Japan are participating. From the data, we have found that spatial and social distance between individuals causes stratification in the friendship network and brings about nested structure of small world. Based on what we have found in the data analysis, we have built a model and successfully replicated the nested structure of small world.

O4-2:吉澤康介, 三宅修平(東京情報大学)
題目: インターネット通販サイトにおける関連商品情報等の抽出と可視化の試み
概要:インターネット通販サイトの商品ページには、多くの場合、関連商品等へのリンクが掲載されており、この情報を取得することで、商品情報 のネットワーク分析が可能となる。 筆者らは、ブラウザを自動運転するなどしてこれらのリンク情報を取得し、Cytoscapeを用いて可視化することを試みている。

O4-3:三宅修平, 吉澤康介, 海保達郎, 鈴木美香(東京情報大学 総合情報学部 情報ビジネス学科)
題目:株式所有ネットワークの可視化と分析
概要:企業間の関係性には,財務上および営業上の取引関係,役員の派遣・兼 任による関係,株式の保有による資本関係等がある. 本論では,戦後の日本において,株式上場している株式会社の経営に大きな影響 力を持つ,個人および法人株主の上位10社大株主データを,1950年?2010年まで ネットワーク分析し,株主の所有構造がどのように変遷して来たかについて明ら かにする.その結果,近年では旧財閥系の金融機関の所有割合が相対的に減少 し,真の所有者が見えにくい信託銀行等のカストディアン(Custodian Bank)の所 有割合が増えてきたことを明らかにした.また,これらの非上場の信託銀行等の 持ち株会社を探ると,金融機関を中心とする,大企業が大株主となっていた. 信託銀行等のカストディアンは顧客から集めた大量の資金をもとに,株式市場に おけるプレーヤーとして,今後市場に対して非常に大きな影響力を持ちうるもの と考えられる.なお,本稿ではネットワーク分析及び可視化に際して は,Cytoscapeを用いている.

O4-4:小川祐樹(電気通信大学), 山本仁志, 和崎宏, 後藤真太郎
題目:災害時における地域SNSの活用:コミュニケーションネットワークの推移による分析
概要:地域SNSは地域コミュニティの活性化に期待が集まっているが、災害時などの緊急事態に対応するためのネットワーク基盤としても重要な 役割を果たす。 SNSのネットワーク構造やコミュニケーション構造の特徴分析は多くの研究でなされているが、災害時の情報共有や復興支援にSNSのどのようなコミュニ ケーションがなされ、活用されたのかの分析はなされていない。我々は、作用町において発生した大規模水害にSNSがどのような使われ方をしたのか、SNS 上のネットワーク分析をおこなうことで明らかにする。本発表では、災害発生以前のコミュニケーション構造と災害発生時のコミュニケーション構造の変化に着 目し、中心的ユーザの果たした役割や日常のどのようなコミュニケーションが災害時に活躍したのかを明らかにする。

ポスター発表

P1:澤井秀文, 鈴木秀明(NICT), 大崎博之(大阪大学)
題目:スマートグリッドの時間的変動と故障時における動的パワーフロー制御シミュレーション
概要: 近年、地球環境に与える負荷の低減や自然エネルギー利用を促進するため、スマートグリッドの導入検討が我が国を初め世界各地で活発に行われている。その際 には、パワー需要の時間的変動やパワーノード(発電所、変電所、配電所、バッテリーなどの施設や需要家)の故障時や、送電線などの切断時においても自動的 かつ安定的に電力を供給できるロバストな電力系統システムの構築が望まれている。本研究では、従来の電力ネットワークと複数のマイクログリッドを統合した スマートグリッドのモデリングを行い、電力供給基礎方程式に基づいて、需要の時間的変動(経日変動、季節変動など)、パワーノードや送電線網の故障、カス ケード故障などのモデル・シミュレーションを行った結果について報告する。

P2:豊田規人(北海道情報大学)
題目:Small world Networks vs. Scale Free networksー6次の隔たりに関する相違ー
概要:6次の隔たりの分析には,ミルグラム条件が重要な役割を演じる.筆者は,Small world Networks とScale Free networksにおいて,ミルグラム条件と一般化クラスタリング係数の関係がまったく違った振る舞いをすることを示した. 今回は,Small world Networks と Scale Free networksをつなぐ折衷的ネットワークモデルを空撮し,その違いを明確化する.

P3:亀井貴行, 熊野雅仁, 小野景子, 木村昌弘(龍谷大学理工学部電子情報学科)
題目:Photo-Sharingサイトにおけるユーザアクティビティに基づいたソーシャルネットワーク推定
概要:ソーシャルメディアにおいてユーザアクティビティデータからユーザ間のソーシャルネットワークを同定する手 法の確立は、能動的な情報推薦の観点から重要である。Zhouらはソーシャルブックマークサイトにおいてユーザアクティビティデータからユーザ間のソー シャルネットワークを推定する手法を提案した。本研究では、彼らの手法を拡張することでPhoto-Sharingサイトにおいてユーザアクティビティ データからユーザ間のソーシャルネットワークを推定する手法を提案し、Flickrデータを用いた実験でその有効性を検証する。

P4:平井佑一, 熊野雅仁, 小野景子, 木村昌弘(龍谷大学理工学部電子情報学科)
題目:メインストリームメディアからTwitterへの政治ニュース拡散の分析
概要: 近年,ブログやTwitterをはじめとするソーシャルメディアが注目されている.Twitterでは様々な情報が発信されるが,メインストリームメディ アから発信された情報に関するものも少なくない.本研究では,メインストリームメディアであるGoogleニュースが発信した政治ニュースが, Twitter上でリツイートを通じてどのように拡散していくのかを分析する.

P5:北野由幸, 熊野雅仁, 小野景子, 木村昌弘(龍谷大学理工学部電子情報学科)
題目:ソーシャルネットワークにおけるユーザ行動予測モデルの性能検証
概要:ソーシャルメディアにおいて、ソーシャルネットワークの成長とユーザアクティビティの変動には関係性がある ことが知られている。HolmeとNewman は、ソーシャルネットワークとユーザアクティビティに基づいたユーザ行動モデルを提案した。Crandallらは、Wikipedia編集行動の定性的な 性質を説明するために、Holme-Newmanモデルを拡張した。本研究では、ブログアクセスデータと化粧品口コミサイトデータを用いてユーザ行動予測 の観点から、Holme-NewmanモデルとCrandallらのモデルの性能を比較検証する。

P6:Binbin XING, 林幸雄(北陸先端大)
題目:MSQネットワークのフラクタル次元に依存した最適ショートカット
概要: 自己相似な正三角形や正方形の再帰分割に基づくMSQ(multiscale quartered)ネットワークのフラクタル次元に依存したショートカット付加法を考え、そのトポロジカル特徴、SW性を示す高い通信効率、頑健性の改 善などに関して報告する。

P7:中村仁也, 鈴木暁, 木戸茂, 北中英明(株式会社ゴーガ)
題目:クチコミネットワーク捕捉に関するアンケート結果とその分析
概要:クチコミネットワークの実情を把握するため、クチコミに関するアンケートを実施した。回答者数は約4千サン プルで、時間制限付きの会話発生人数を、会話の重さ別に取得した。 その結果、会話発生人数分布はガンマ分布でよく近似でき、またその二つのパラメータである形状母数と尺度母数について、前者は会話の重さと、後者は時間制 限の長さとそれぞれ関係があるという仮説を得た。

P8: 四元菜つみ, 井庭崇(慶應義塾大学環境情報学部)
題目:Wikipediaにおけるコラボレーションネットワークの成長
概要: オンラインのフリー百科事典Wikipediaは、ここ数年間で急激に成長し、様々な分野から注目を集めている。先行研究においては、ページ数や編集回数 などの統計データの変化からWikipediaの成長が描かれ、また、一部の記事を対象としてその編集パターンが明らかにされてきた。しかし、各記事の編 集コラボレーションがどのように変化してきたのかは未だ明らかになっていない。 そこで本研究では、日本語版Wikipedia全データを用いて、コラボレーションをネットワークとして捉えて分析し、その経年変化を辿る。

P9:池末成明(有限責任監査法人トーマツ)
題目:Lotka-Volterra方程式によるDSLとFTTH市場の相転移の検証
概要:我が国のブロードバンド市場の政策の影響を分析する試みは、実際の契約数を使ったパネル分析による実証研究 がある。またネットワーク市場の契約数に関するLotka-Volterra方程式を援用した理論研究があるが、Lotka-Volterra方程式によ る実証研究は行われていない。一方、総務省は、争点であったFTTHでDSLをマイグレーションする時期について明言を避けた。 そこで日本のFTTHとDSLの市場をLotka-Volterra方程式を当てはめて重回帰分析すると、Lotka-Volterra方程式の 2種競争系モデルに従っていることがわかった。またFTTHとDSLの競争は、2009年6月に安定共存するパターンからFTTHの独り勝ちのパターンに 相転移しているが、DSLがFTTHにマイグレーションされている兆候はなかった。 またLotka-Volterra方程式によるネットワーク社会の社会・経済政策的なアプローチはないため、この方面での可能性を論じ、さらに進化ゲーム や量子ゲームによる可能性を示唆する。

P10:津川翔, 大崎博之, 今瀬真(大阪大学 大学院情報科学研究科 情報ネットワーク学専攻)
題目:ソーシャルネットワークのトポロジ構造を用いた開発型オンラインコミュニティのリーダシップ推定手法の提案
概要: 近年、社会活動のネットワーク化が急速に進んでおり、ネットワーク上にさまざまな種類のコミュニティ (オンラインコミュニティ) が数多く形成されている。オンラインコミュニティを成功へと導くためには、そのコミュニティの管理者 (アドミニストレータ・マネージャ・ファシリテータなど) が、コミュニティの状態を適切に把握できることが求められる。本発表では、ソーシャルネットワークのトポロジ構造を用いることにより、「オンラインコミュ ニティのリーダシップ (コミュニティ全体としてどの程度リーダシップが取られているか) 」を推定する手法を提案する。さらに、開発型オンラインコミュニティのポータルサイトである SourceForge のログを用いて、提案するオンラインコミュニティのリーダシップ推定手法の有効性を検証する。その結果、(1) 媒介中心性によって参加者のリーダシップが推定できること、(2) 推定したコミュニティのリーダシップはソフトウェアの成熟度および生産性と十分な正の相関があり、コミュニティの状態把握に有用であること、などを示す。

P11:岡本洋,園田隆志(富士ゼロックス(株)研究技術開発本部)
題目:大規模複雑ネットワークからのトピックに依存したコミュニティ抽出:遺伝子制御・タンパク相互作用ネット ワークへの適用および創薬における標的探索
概要:活性拡散に基づいて大規模複雑ネットワークからトピック依存的にコミュニティを抽出する方法を検討する。こ の方法を遺伝子制御・タンパク相互作用ネットワークに適用して個別の現象・症状に関連する遺伝子・タンパクおよびそれらの間の関係を抽出することを提案す る。さらに、創薬における標的探索を、特定ノードの削除が個々のノードの活性に及ぼす影響に基づいて行うことを提案する。

P12:鳥海不二夫,石井健一郎(名古屋大学)
 
題目:Twitterにおけるつぶやきを用いたのユーザの特性分析
概要:近年ソーシャルメディアと呼ばれるWEB上のサービスが増加している.その中でも,Twitterを始めと するマイクロブログは近況をつぶやくというこれまでにない情報共有の形を示しており,注目されている.本論文では,Twitterのつぶやきデータに基づ いてTwitterを利用するユーザの特性を明らかにする.

P13:阿部安洋, 田中敦(山形大学大学院理工学研究科情報科学専攻)
題目: ネットワーク外部性を考慮した簡略モデルによる製品普及シミュレーション
概要:普及研究において,新製品が普及するかが問題となっており,近年の研究の中で,メディアの多様化,口コミ・ インターネットの普及によって消費者間のネットワーク構造に着目したモデルが提案されている.本論文では,このようなネットワーク構造における市場現象の 一つであるネットワーク外部性に着目し,簡略モデルによる製品普及シミュレーションにより,ネットワーク外部性とネットワーク構造の影響について分析を行 う.シミュレーション結果から,平均次数の大きさ,ネットワークのクラスター性が製品普及を与えていることが分かり,この結果について議論をしていきた い.

P14:菊地映輝, 中村圭佐(慶應義塾大学環境情報学部)
題目:Twitterにおける流行現象の可視化
概要:本研究は、Twitterにおける流行現象がどのように生起するのかを明らかにするものである。米国生まれ のマイクロブログサービスTwitterは日本国内でも本格的な流行の様相を見せており、その利用者は1000万人の大台を超えていると発表されている。 純粋なユーザ以外にも、APIを利用したウェブサービス、Twitterと連携した企業のプロモーションなど今やネット業界全体やビジネスシーンでも Twitterは大きな存在感を見せている。 本研究では、その様なウェブサービスやプロモーションが、Twitter上で流行していく過程に注目する。ここで言う「流行」とは、多くのユーザによって 利用されることに加えて、多くのユーザから言及される、つまりTwitter上でつぶやかれることを指すものとしたい。これはウェブサービスやプロモー ションを利用したユーザが、そのことをTwitter上につぶやき、そのつぶやきを読んだ他のユーザが以下同じ行動を取っていくことにより、ネズミ算式に ユーザが増えていき、結果として多くのユーザによる利用に繋がっていくという仮説に基づく。 この仮説を基に、Twitterのユーザネットワーク上を、ある特定のウェブサービスやプロモーションに関連するつぶやきがどの様に伝播していくのかにつ いて明らかにする。 具体的には、独自に開発したTwitter連携ウェブサービス「Dowitter」(http://dowitter.jp)と同サービスのハッシュタグ 「#Dowitter」を利用し、「#Dowitter」を含むつぶやきがTwitter上をどの様に伝搬していったのかという軌跡をグラフを用いて可視 化する。 Twitterを利用したウェブサービスや企業のプロモーションは、今後も続々登場してくることは想像に難くない。その際には、どの様にすればサービスや プロモーションを効果的に展開できるかという問題に注目が集まってくると思われる。本研究はその問いに対する1つの処方箋となればと考えている。

P15:上之原剛, 今井哲郎, 田中敦(山形大学工学部情報科学科)
題目:サッカーワールドカップに見るパスネットワークの分析
概要: 本研究では国際サッカー連盟(Federation Internationale de Football Association:FIFA)で公開されている、昨年行われたサッカーワールドカップ南アフリカ大会での公式データを基に作成した選手間のパス交換 データを用いてネットワークを作成し、そのネットワークについて各特徴量の分析を行った。さらに主成分分析等を行い、試合の勝敗、チーム毎の特徴との関連 性について分析した。本発表ではその成果について報告する。

P16:三鍋洋樹, 今井哲郎, 田中敦(山形大学大学院工学研究科情報科学専攻)
題目:大学生向けSNSトモCOMにおけるネットワークダイナミクスとその分析
概要: 大学生向けSNSトモCOMは、人の繋がりの研究を行う為に構築されたSNSであり、完全招待制や大学生限定であるといった点から、データの信頼性が高い という特徴を持つ。 本発表では、参加者同士の繋がりからネットワークを作成、分析を行い、その結果を報告する。 コミュニティ分析で得られたコミュニティとSNSコミュニティの違いや、トモCOMの大きな特徴であるスーパーノードの影響、インセンティブがネットワー クにもたらす活性化への影響とその効果等についても言及する。

P17:梅岡航, 守田智(静岡大学工学部)
題目:感染症の伝播モデルとネットワーク中心性
概要:ネットワーク上のノードの重要性を測る指標として様々な中心性が提案されているが、それらの中心性が感染症 伝播に与える影響を探る。

P18:田村肇(筑波大学図書館情報メディア研究科)
題目:質的情報通信産業連関表とネットワーク分析
概要:質的情報通信産業連関表において、産業連関表の粗視化の度合い(0?1化における1の割合の度合い)によっ て、各種ネットワーク指標にどのような変化があるか、また一定の傾向がみられるかを明らかにした。

P19:高頭和輝, 長谷川智史, 穴田一 (東京都市大学 大学院 工学研究科 システム情報工学専攻)
題目:免疫ネットワークモデルにおける記憶
概要:免疫系は,生物が生きる上で重要な役割を担っている.免疫系についての研究は多数行われているが,解明され ていない現象が多い.その1つに免疫記憶がある.免疫記憶とは,体内に1度侵入した抗原が再び侵入してきた際に,以前の抗原侵入時と比べて素早く抗原を除 去する現象である.  このメカニズムを解明するために,様々な説が提唱されている.その1つにJerneのイディオタイプネットワーク説がある.この説に基づいて Haradaらは,B細胞に対して,特異性という要素を取り入れたShape Spaceモデルを提案した.しかし,このモデルには,2つの考慮すべき点がある.1つ目は,Shape Spaceモデルで用いられている認識割合 において,特異性が低いB細胞が,差別化されていない点である.2つ目は,シミュレーションで用いるB細胞の種類が少ない点である.  そこで,本研究ではこれらの点を考慮したモデルを提案する.そして,このモデルにおいて免疫記憶現象の再現について検証する.

P20:佐藤倫太郎, 長谷川智史, 穴田一(東京都市大学 大学院 工学研究科 システム情報工学専攻)
題目:淘汰圧を考慮した進化モデル
概要:生物進化モデルは様々なものが提案されている。しかし、生物進化に重要だと思われる淘汰圧に着目した進化モ デルはまだない。そこで本研究では淘汰圧を考慮した生物の進化モデルを提案し、その有効性を検証することを目的とする。提案モデルではその寿命分布にきれ いなべき則が表れる。これは化石データから得られた種の寿命分布を再現していると思われる。さらに、このモデルで得られた寿命分布はネットワーク構造や要 素数に依存しないという結果が得られた。また、このモデルの種の進化の振る舞いは断続平衡説を表していると思われる動きを示した。以上のことから提案モデ ルは生物進化を表す自然なモデルであると言える。また、淘汰圧は生物進化を考える上で、非常に重要な役割を果たしているのではないかと考えられる。

P21:武吉朋也,帆足啓一郎,小野智弘(株式会社KDDI研究所)
題目:オンラインディスカッション活性化のための状態可視化システム
概要:SNSの普及に伴い,オンラインディスカッションを一般ユーザでも容易に行えるため,その数は日々増加して いる.一方で,多数のディスカッションから,自身が参加しやすいディスカッションを探し出すことは困難である.そのため,ユーザはディスカッションへの参 加機会を逃し,活性化が妨げられていると言える.そこで本研究では,ディスカッションの活性化を目的とし,複数のディスカッションについて状態の可視化, および参加ユーザの特徴を表す値の提示を行うシステムを提案する.

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