高温超伝道
研究成果 - 磁束相図

高温超伝導体の磁束相図において最も特徴的なことは、上部臨界磁場Hc2をもはや常伝導状態から超伝導状態への相転移線として定義出来ないことにある。これは、高い超伝導転移温度に起因する大きな熱揺らぎによってもたらされている。また、層状の結晶構造に起因する大きな異方性や極端に短いコヒーレンス長のために磁束自体のかなり自由に運動することが出来る。従って、高温超伝導体の混合状態を理解するために、磁束相図を確立を目指した研究が高温超伝導発見当初から精力的に行われてきた。高温超伝導体発見からすでに 20年近くが経過し、その相図はほぼ完成されつつある。

本研究室では、典型的な酸化物高温超伝導物質のひとつであるLa-Sr-Cu-O系を用いて磁場を超伝導面に対して垂直印加した場合の磁束相図を作成した。磁化や比熱といった熱力学量において磁束格子融解1次相転移の観測に成功した。以下に、得られた実験結果の一例と相図を示す。

図の説明文:1次相転移は状態エネルギーの1次微分が不連続になる相転移なので、状態エネルギーの1次微分で定義される磁化にとびが現れる。
図の説明文:比熱はエネルギーの2次微分のため本来1次相転移の際には発散を示す。実際の実験では、サンプルの温度分布、磁束密度の勾配などのため、ピークやステップ状の異常として観測される。
図の説明文:磁化および比熱測定から得られたLSCOの磁束相図

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