Research

研究内容

研究テーマ

両親媒性ソフトマターである脂質分子は、自己集合して膜を形成します。脂質膜は、2次元膜面内での相分離や、3次元空間でのベシクル変形などの多様な物理現象を示し、その構造は弾性エネルギーにより支配されます。
生体細胞は、この脂質膜を器・界面として利用しています。ミトコンドリア・小胞体のような複雑な構造体を形成したり、膜の融合・分裂などのダイナミックな動きが物質輸送を行っています。また、脂質膜小胞は、ドラッグデリバリーや化粧品などの材料としての応用開発も進められています。
私たちは、人工的に作製したマイクロメートルサイズの膜小胞(人工細胞膜、リポソーム、脂質ベシクル等と呼ばれる)を用いた実験により、膜の新奇現象を発見し、膜の新たな可能性を表現することを目的に研究を進めています。様々な膜の形や動きを創り出し、物理化学的な解析を使って、膜の世界を探求します。


1. 光コントロール

光応答性分子を膜に導入することで、膜の融合、相分離の生成・消滅、小胞の開閉(細胞のオートファジーに類似した動き)、膜の出芽(細胞のエンドサイト-シスに類似した動き)を光で制御できることを示しています。ナノメートル領域の膜分子の反応を、マイクロメートル領域の膜ダイナミクスに変換する機能システムを、膜の物性に基づき設計しています。

"Photo-induced fusion of lipid bilayer membranes" Y. Suzuki, et al., Langmuir, 33, 2671-2676(2017) doi "Photochemical control of membrane raft organization" T. Hamada, et al., Soft Matter, 7, 220-224 (2011). PDF
"Membrane disc and sphere: controllable mesoscopic structures for the capture and release of a targeted object" T. Hamada, et al., J. Am. Chem. Soc., 132, 10528-10532 (2010). doi

"Reversible Control of Exo- and Endo-Budding Transitions in a Photosensitive Lipid Membrane" K. Ishii, et al., ChemBioChem, 10, 251-256 (2009). doi
"Reversible photoswitching in a cell-sized vesicle" T. Hamada, et al., Langmuir, 21, 7626-7628 (2005). doi


2. コロイドとの相互作用

膜とコロイド粒子の複合ソフトマターの秩序形成の実験を行っています。相分離した膜にコロイドを加えると、小さいサイズの粒子は秩序相へ、大きなサイズの粒子は無秩序相に分配されることを発見しています。また、膜への吸着度合いに依存して粒子の拡散係数が変化することや、膜に張力を加えることで吸着した粒子が膜を透過することを見出しています。

"Lateral Tension-Induced Penetration of Particles into a Liposome"K. Shigyou, et al., Materials, 10, 765(2017) doi
"Lateral diffusion of a submicron particle on a lipid bilayer membrane" K. Shigyou, et al., Langmuir, 32, 13771-13777(2016) doi
"Size-dependent partitioning of nano/micro-particles mediated by membrane lateral heterogeneity" T. Hamada, et al., J. Am. Chem. Soc., 134, 13990-13996 (2012). doi


3. 力学応答

浸透圧による伸展張力を膜に加えると、膜の相分離が誘起されることを発見しています。圧力が大きくなると、相分離ドメインが液体相から固体相へと変化します。

"Lateral phase separation in tense membranes" T. Hamada, et al., Soft Matter, 7, 9061-9068 (2011). PDF


4. 微小空間効果

ベシクルはマイクロメートルスケールの微小空間を作り出します。微小空間では表面効果が大きくなるため、ベシクル内の分子は膜と相互作用することでバルク系とは異なる新奇現象が観察されます。例えば、膜小胞のサイズに依存してDNA分子が構造を変化させることや、膜小胞内部の化学反応が促進することを発見しています。

"Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids" T. Hamada, et al., Phys. Rev. E., 91, 062717 (2015). doi
"Gene Expression Within Cell-Sized Lipid Vesicles" S-i. M. Nomura, et al., ChemBioChem, 4, 1172-1175 (2003). doi

5. 非平衡ダイナミクス

界面活性剤による膜の可溶化プロセスにて、ベシクルが開閉する自励振動を解析しました。界面活性剤の濃度やベシクルのサイズに依存して、振動のON/OFFや周期が変化することを明らかにしました。

"Rhythmic pore dynamics in a shrinking lipid vesicle" T. Hamada, et al., Phys. Rev. E, 80, 051921 (2009). PDF

6. 静電効果

荷電脂質を膜に加え、相分離およびベシクル形状の変化を調べました。飽和脂質への荷電導入は相分離を誘起し、不飽和脂質への荷電導入は相分離を抑制することを発見しています。また、相分離に伴い、ベシクルに孔が開くことが分かりました。

"Coupling between pore formation and phase separation in charged lipid membranes" H. Himeno, et al., Phys. Rev. E 92, 062713 (2015) doi
"Charge-induced phase separation in lipid membranes" H. Himeno, et al., Soft Matter 10, 7959 - 7967 (2014). doi


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