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白鍵プレート(natural keyplate)

白鍵プレート(natural keyplate) には、切断された面と滑らかな面があるので、前者は接着面とし、 後者を表面にする。それぞれの白鍵プレート(natural keyplate) は、当然のことながら木目が異な るし、色も多少違う。そのため、出来上がったときに見栄えがよくなるよう、 隣りあう板の色が自然に映るよう、また何らかしらパターンができるように並 べるとよい。木目によっては、白鍵プレート(natural keyplate) の前後を変えると色が変わること がある。いろいろ試してみて、もっともよい配置を見つけること。もしキズが あったら、後で黒鍵レバー(sharp key lever) を取り付けるために削る部分とする。スペアが4枚 あるので、キズが少ないものを選ぶとよい。うまく白鍵プレート(natural keyplate) を並べられた ら、黒鍵レバー(sharp key lever) をすべて取り外して、キー・パック角材(key packing strip) (700 × 10 × 10 mm) をケース前面補強材(case-front reinforcement) の上に置き、鍵盤レバー(key) を支える。そうしたら、すべての 鍵盤レバー(key) に白鍵プレート(natural keyplate) を置く。

4mm角ほどの角材を用意し、底板(baseboard) の下、前面から65mmの位置にテープで 貼りつける。(角材のかわりに、導線が2本入った電線を使ってもよい。) 6組 の特製クランプを用意し、幅を白鍵プレート(natural keyplate) と底板(baseboard) 下の角材との間隔に 調節する。これらのクランプは、接着剤が乾燥するまでの間、複数の 白鍵プレート(natural keyplate) を同時に押し下げるために使う。もちろん6組だけでは足りないので、 順番に他の鍵盤レバー(key) を固定して、すべての白鍵プレート(natural keyplate) を接着する。底板(baseboard) の下に貼りつけた角材のお陰で、白鍵プレート(natural keyplate) の前から後ろまで均等に圧力が かかる。クランプの上の腕は、白鍵プレート(natural keyplate) を前から後ろまで完全に押さえる ように固定する。もしできなかったら、押さえられない部分にセロテープを貼っ て押さえつける。

鍵盤レバー(key) に白鍵プレート(natural keyplate) を貼りつける際に重要なことは、前面を正確に一直線 に揃えることである。後で前面をすべて紙ヤスリで整えなければならないので、 正確に接着すればその分だけ、後でヤスリがけする部分が少なくて済む。 ケース(casework) 正面部分が直線で垂直になっているかどうか調べる。もしなってい たら、その部分を白鍵プレート(natural keyplate) の前端を揃えるための基準として利用できる。 (もしなっていなかったら、注に説明する方法に従う。) 約 40 × 10 × 10 mm の木片を用意し、その一方に 10 × 10 × 7 mm のブロックを接着する。このブロックは白鍵プレート(natural keyplate) の前端に触れ、木片部 分は飾り(moulding) の上、前面ケース(case front)に接する。(付録の図8を参照)

白鍵プレート(natural keyplate) は、最終的な仕上がり幅よりも、やや広めに切断されている。部 品を置いてみるとそのことがわかるだろう。まず低音部のオクターブから始め て、EとFの間とBとcの間の二カ所を境とするグループに分ける。そのためには、 白鍵プレート(natural keyplate) の間にわずかな間隔を残さなければならないかもしれない。端が 接するくらいに並べられればよいが、もし白鍵プレート(natural keyplate) 幅が広すぎるようだっ たら多少、端を削り取らなければならないだろう。そうする必要があるかどう かは湿度による。湿度が白鍵プレート(natural keyplate) の幅に影響するからである。

最初の白鍵プレート(natural keyplate) に接着剤を十分に、ただし付けすぎないよう、また 平衡ピン(balance pin) を差し込むほぞ穴に塗らないように気をつけて塗る。そうしたら 白鍵プレート(natural keyplate) を置いて何度か前後に少し動かしてしっかりと接着する。このと きチーク材(ケース前面)との間隔が正確になるよう注意する。ジグを使って 白鍵プレート(natural keyplate) を正確な位置に押し戻すとよい。ジグがチーク材に密着している かどうか確認すること。接着剤が延びるのを待って、特製クランプで 白鍵プレート(natural keyplate) を押さえつける。もう一度ジグを使って、白鍵プレート(natural keyplate) の位置を確 認する。また余分な接着剤がはみ出して隣の鍵盤レバー(key) に付いていないか調べ、も し付いていたら取り去る。次に2番目と3番目の白鍵プレート(natural keyplate) を接着するが、3番 目の白鍵プレート(natural keyplate) を接着する際には、EとFの間隔に合うよう注意する。毎回、 ジグで位置を確認することと、余分の接着剤を拭き取ることを忘れないように。 第4、第5、第6番目の白鍵プレート(natural keyplate) も同様に接着する。第7番目の白鍵プレート(natural keyplate) を 接着する頃には、最初のクランプを取り付けてから少なくとも15分は経ってい るはずであるから、これを取り外して、7番目のプレートを押さえつけるのに 使ってもよいだろう。この時、Bとcの間隔に合っているかどうか確認すること。 クランプを外したら、押さえつけていた鍵盤レバー(key) を取り外し、上下を逆にして平 らな面に置き、さらに押さえるといいだろう。上からは保護のために木材を載 せる。この方法で、鍵盤レバー(key) の表面をできる限り平らにする。もしあれば万力も 便利だろう。また直角定規を使って、頻繁に白鍵プレート(natural keyplate) がケース(casework) 前面に 対して直角になっているかどうか確認すること。たとえばEかBの鍵盤レバー(key) を接着 する度に確認するなどと決めておくとよい。

すべての白鍵プレート(natural keyplate) の接着剤が乾いたら、すべての鍵盤レバー(key) を楽器に取付けなお し、木片に紙ヤスリを巻いたもので、鍵盤レバー(key) 全体の前面が滑らかに揃うよう仕 上げる。片方の手でいくつかの鍵盤レバー(key) を同時に押し下げながら、もう一方の手 で前面にヤスリをかける。設計図にあるように、前から31mmと34.5mmの位置に 水平線を二本切り込む。特別製クランプ二組で、鉄製定規を所定の位置に固定 し、間の鍵盤レバー(key) をしっかりと押し下げながら、鋭いナイフか線引きで太めの線 を引く。線は両端から引く。30cm定規を使うなら、3回に分けて引かなければ ならないだろう。

線を引いたら、今度は黒鍵レバー(sharp key lever) のために削り取るべき部分を印す。線は、鉛 筆付きコンパスを用い、特定の間隔に幅を設定して、金属の支点ごと動かして 引く。C鍵盤レバー(key) については、コンパスの間隔を8mmに設定し、金属の支点を鍵盤レバー(key) の右端に置き、水平線の端から白鍵プレート(natural keyplate) の後端まで動かして、右側7.5mm幅 に線を引く。想像している線に鉛筆部分が付くよう、また前面に対して平行に なるように注意する。Cキーは全部で5本あるので、同様の作業をそれぞれにつ いて繰り返す。Eキーについては、同じ幅にコンパスを設定し、今度は左端に 支点を置いて、同様にして左側7.5mm幅に線を引く。Dキーについては、コンパ スの幅を4mmに設定し、両側から線を引く。こうすると、それぞれの端から 3.5mm幅に線が引かれることになる。F鍵盤レバー(key) については、コンパス幅を9mmに設 定し、右端に支点を置いて線を引く。そうしたら、逆向きにして支点を左端に 置き、B鍵盤レバー(key) に線を引く。こうしてBとFの鍵盤レバー(key) については、8.5mm幅に線を引 く。つぎにコンパスの幅を3mmに設定し、左端に支点を置いてG鍵盤レバー(key) を、右端 に支点を置いてA鍵盤レバー(key) に線を引く。こうして2.5mm幅に線を引く。最後に、コ ンパスの幅を6mmに設定し、右端に支点を置いてG鍵盤レバー(key) に、次に左端に支点を 置いてA鍵盤レバー(key) に線を引く。こうして5.5mm幅に線が引かれる。これらの線が楽 器の前面に対して直角になっているか、また黒鍵レバー(sharp key lever) 部分がそれぞれ12mm幅 になっているかどうかを確認する。

鍵盤レバー(key) をすべて取り外し、水平線のすぐ後ろからノコギリで切りとり始める。 (付録の図、第9図を参照。) ノコギリは、目の非常に細かい細工用がよい。こ のとき鍵盤レバー(key) は特製クランプを使って、作業台の上に固定する。まずノコギリ で彫り込んで、水平線がはっきり見えるようにする。切りとる角度は重要では ないが、表面に対して10度がだいたい正しい角度である。鉛筆で引いた線の所 までノコギリを引く。

細工用ノコギリは、鉛筆で引いた線に沿って白鍵プレート(natural keyplate) を切りとるためにも 使う。鍵盤レバー(key) は前面を手前にして水平に置き、後ろから水平方向に対して10度 の角度で切る。鍵盤レバー(key) は切っている側に傾くわけだが、切断にはやや注意を要 する。というのもノコギリの端が水平線に触れてはいけないからである。この ために、ノコギリの歯は後端の方を使い、しかも小刻みに切り進む。切りとっ た面は、目の細かいヤスリか、24章で説明したように、鍵盤レバー(key) の側面をきれい にするために使った紙ヤスリを巻いた棒で仕上げる。

鍵盤レバー(key) 部品は多少幅を広めに提供されているので、間隔が狭すぎるかもしれな い。鍵盤レバー(key) が相互に密着しているのは、前面をヤスリがけしたりとか、水平線 を引くためには都合が良かったのだが、この時点で間隔は0.7mm程度にしなけ ればならない。もう一度、表面が端から端まで水平に揃っているかどうか確認 し、もし傾いている鍵盤レバー(key) があったら平衡ピン(balance pin) を調節して水平にする。そ うしたらすべての間隔が等しく、かつ正しい幅になるように、注意深く、両端 をヤスリがけする。道具は木片に目の細かい紙ヤスリを巻いたものか、目の細 かいヤスリがよいだろう。僅かな高さの違いは後で修正する。

注記: 白鍵プレート(natural keyplate) の端をカンナで削る場合は、よく削れるように刃を調整 し、上下逆に固定して(もしあれば万力を使う)、白鍵プレート(natural keyplate) を垂直に持ち、 刃に当てて動かして削る。もし問題なく収まるなら、チーク材との間隔は余分 に空いていてもよい。

ケース(casework) の前面を基準として利用しない場合は、後面を基準に白鍵プレート(natural keyplate) を並べる。蓋のキットがあれば、正面マホガニー部品の直線部分を使ってもよ いだろう。それ以外には、定規か直線の角材が使える。前端から7mmの位置に 最低音の白鍵プレート(natural keyplate) を固定し、同時に、定規で届く限り最も高音の 白鍵プレート(natural keyplate) も固定する。こうして、この2つの白鍵プレート(natural keyplate) で両端からしっか りと直線を維持しておいて、その他の間に収まるべき白鍵プレート(natural keyplate) を付ける。



Tsutomu Fujinami
Wed Dec 8 11:06:30 JST 1999