フーリエ変換とは?


 私は実験屋なので,いろいろな実験装置を組み上げていくことが 多々あります。試料からの信号電圧を測定する時に問題になるのが,『ノイズ』 です。本来変動して欲しくない電圧が,時間に対して,こんなふうに 変動してしまうのです。

<図1> 

ノイズは大抵電源ラインから入ってくるので,ほとんどが 60 Hz(東側では 50 Hz)の周波数成分を持っていますが,もっと詳しく知るためには, 『どの周波数成分が,どれくらい入っているか』を調べなければいけません。 この図(横軸は時間)ではよくわかりませんね。

 実は上の例には,このような3つの成分が入っています。

それぞれの成分の大きさをヒストグラムにすると(横軸を周波数にして), こうなります。こうすれば,ノイズにどんな周波数成分が,どれくらい 入っているか,がひと目でわかりますね。

<図2> 

ごまかしたようで悪いのですが,これが『フーリエ変換』です。<図1> をフーリエ変換した結果が<図2>です。時間に対して変化する関数を, 周波数に対する関数に変換することによって,その振舞いが 把握しやすくなっています。
 ある関数を多くの周波数成分の重ね合わせと考え,それぞれの 周波数成分の大きさを周波数に対してプロットしたものが,『フーリエ変換』 というものです。今の例では,フーリエ変換の結果が離散的になりましたが, 一般には連続的な関数になります。

 フーリエ変換は,固体物理学のいろいろな部分で使用されます。

●X線回折
X線による回折像は,結晶格子のフーリエ変換です。 一般に回折現象は,フーリエ変換と密接な関係があります。
●逆格子,電子状態
固体中の電子の状態を調べるためには,電子の位置よりも, それをフーリエ変換した速度で扱った方が考えやすいのです。
●応答関数
物性実験とは,時間変化する外力に対して物質がどのように 応答するか? を見ているようなものです。これも, 外力をいくつかの周波数成分に分けて(フーリエ変換して), それぞれの成分に対しての応答を考える方が簡単です。
●微分方程式などを解く
どんな関数でもフーリエ変換によって,sin と cos 関数の 重ね合わせで表せます。sin, cos 関数は素性のいい関数 (2回微分するともとに戻る)なので,一度 フーリエ変換しておくと,微分方程式が 解きやすくなる場合があります。


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