なぜバンドギャップが出来るのか?


 物質中で自由に運動している電子に対して,周期的な 結晶格子ポテンシャルを摂動として加えると,電子の分散関係に ギャップができる,ということを定性的に考えてみましょう。


1次元で考えよう(自由電子)

 簡単のために1次元で考えましょう。格子の間隔を a とします。 a は とても短い長さで,10-7 mm くらいのオーダーです。 こうすることで今まで全く自由だった空間(物質内)に,『長さ a 』 という特別な波長が導入されることにご注意。

 自由な電子は,0から∞までの,いろいろな波長を持つことが出来ます。 波長が長いほどエネルギーは低く,短いほどエネルギーが高いという 性質があります。このとき,「エネルギーと波長の関係」は連続的で, 数式を使えば,

E 〜(1/λ)2
となります。(ここでの波長とは,電子波動関数Ψの波長です。) 横軸は,波長の逆数(1/λ)です。


定在波が出来る

 エネルギーの低い方(波長の長いほう)から考えていきましょう。
 波長が長いときは,結晶格子ポテンシャルなんて関係ありません。 電子波から見れば『長さ a 』は小さ過ぎて,見えませんからね。

 もっと電子波の波長が短くなって,『波長 2a 』になったとき,電子波は 結晶格子ポテンシャルによって反射されます。すると, 右側に進んでいた電子波は反射されて左向きに動き始めます。

 左向きに動き始めたと思ったらまた反射されて右側へ。そして左,右, 左,右,……。『波長 2a 』を持った電子波は,動けなくなって, 定在波になってしまいます。


同じ波長でエネルギーが二つ!

 この『波長 2a 』を持った定在波には,2種類あります。

です。(n〜|Ψ|^2 だから,電子密度の波長はちょうど a になります。) これ以外の波長では,こんな2種類なんてことはありません。電子波の波長と ポテンシャルの波長 a があってないわけだからね。

 電子はマイナスの電荷を持っていますし,イオンはプラスの電荷を 持っています。プラスとマイナスが近い所にあれば,エネルギー的に安定だし, 遠い所にあれば,エネルギー的に高いということになることを 思い出しましょう。
 すると,『波長 2a 』を持った電子波には,エネルギーの低い状態 (格子イオンのところで,存在確率が高いやつ)と,高い状態 (格子イオンの間で,存在確率が高いやつ)が存在するということが 分かります。
 すると,いままで連続だった「エネルギーと波長の関係」は, 下の図のように『波長 2a 』でギャップを持つことになります。
横軸は,波長の逆数(1/λ)
1/λ = ±1/a でギャップが出来ます。


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