半導体って半分電気を通すものなの?


ちがいます!

 半導体と言う言葉は良く聞くようになりましたが,いざ『半導体とは?』, というときに良くある誤解には次のようなものがあります。

このような誤解は,けっこうよくあります。


電気抵抗率

 電気の流れにくさや流れやすさを表す量として,電気抵抗率を用います。 これは,「単位長さ単位断面積あたりの抵抗値」で表されます。同じ物質でも, 長さが長ければ抵抗は大きくなるし,断面積が大きければ抵抗は 小さくなりますから,両方で規格化するわけです。サイコロの大きさだけ 切り出してきた時の抵抗と考えて下さい。これが,1 Ω(オーム)であれば, 電気抵抗率は,1 Ωcm となります。
 抵抗率は,温度によって変化します。ここでは, 室温での抵抗率で比較します。

 アルミや鉄のような金属では,電気抵抗率は 1 μΩcm から 1 mΩcm (10-6 〜 10-3 Ωcm) のオーダーです。 これに対して,ガラスなどの絶縁体では,電気抵抗率は 1 TΩcm (1012 Ωcm) 以上のオーダーです。これだけ広い範囲に渡る 物理量は他にはありません。『半導体』とは,

金属と絶縁体の中間の電気抵抗率を持つ物質
のことです。物質の種類としては,シリコンやゲルマニウムなどの 元素半導体や,ガリウム批素や窒化ガリウムなどの化合物半導体があります。 いくつかの物質の電気抵抗率を示します(J. S. Dugdale 著, 野口精一郎 訳 固体の電気的性質(丸善,1979)より; 一部書き換えてあります)。
 固  体電気抵抗率(Ωcm)
金属 2×10-6
カリウム7×10-6
ニッケル7×10-6
ニクロム線10-4
半導体 ゲルマニウム(不純物を含む)1
ゲルマニウム(純粋)500
シリコン(純粋)105
絶縁体 窓ガラス1012
ダイヤモンド1014
テフロン1020


どうして中途半端な抵抗率なのか?

 一言で言うと,電気を運ぶキャリア(電子や正孔)の数が少ないからです。 金属ではキャリアはたくさん存在するし,絶縁体では存在しない, 半導体では その中間です。ではどうして,そうなのか? 別の所でも説明していますが, 超高層マンションに入居する電子を例にとって説明しましょう。

 まず,金属と絶縁体の違いを説明します。金属は電気を良く通すし, 絶縁体は電気を通しません。しかし,金属と絶縁体で,電子の性質が 違うわけではありません。どちらの電子もフェルミ粒子です。 金属と絶縁体では,マンションの形が違うのです。

 N個の電子を考えます。金属マンションと絶縁体マンション, どちらも部屋数は2N部屋です。

 金属マンションは普通のマンションです。が,絶縁体マンションは 恐ろしい形をしています。ちょうどまん中のところにピロティがあって, 下の階から上の階にはそのままでは登れないのです!(ちなみに, 降りるのは簡単。落ちれば良いのです。)


絶縁体マンションの場合

 恐ろしいマンションです。が,少し電子に,エネルギーを 与えてみましょう。でも,ピロティの幅は室温のエネルギーの 100倍以上です。 一番金持ちの電子(ピロティのすぐ下の階の電子)が高額のお金をもらっても, ピロティの上まで行くことは出来ません。では,おなじ階の中で 動けるかというと,どの階も満室なので,動くことすら出来ません。これが, 「絶縁体は電気を通さない」理由です。

 ちなみに,半導体ではピロティの幅が比較的狭いために, 少数の電子が励起され伝導に寄与しうる,といったシナリオになっています。


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