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【開催報告】第8回 JAIST連続セミナー「結晶と知」

2026年05月20日(水)、コワーキングスクエア金沢香林坊にて、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)未来デザイン研究センター主催の連続セミナー「○○と知~新たな学び」の第8回を開催いたしました。

本セミナーシリーズは、昨年度から引き続き開催しており、最先端の科学技術をテーマに科学技術の最先端を走る講師の方から技術の最新動向を学び、専門用語を使わず参加者同士の対話を通じて「新たな視点」を発見することをコンセプトとしています。

今回のテーマは「結晶と知:金箔の謎から最先端のナノテクノロジーまで」
当日の様子をご報告いたします。


インプットセミナー:

今回の講師は、電子顕微鏡で原子の世界を観察する大島 義文 教授です。身近な「結晶」をテーマに、金沢金箔の謎から最先端のナノテクノロジーまでを、やさしく紹介していただきました。

講演の中心は、世界一薄いとも言われる「金沢金箔」の謎。金箔は金属を叩いて薄く延ばして作りますが、ふつうは叩くほどデコボコになって割れてしまうのに、金沢金箔はなぜか割れず、均一に薄くなっていきます。大島教授らは、この長年の謎をJAISTの特殊な電子顕微鏡で解明しました。ポイントは「低温で叩くこと」と、金属の中で起きる「滑り」だと考え、観察の結果、金属の常識では起こり得ないはずの滑りが起きていることを突き止めたといいます。「写真自体は早く撮れていたが、自分たちも常識にとらわれ、解明まで5年かかった」というエピソードも印象的でした。この成果は科学メディア「ナゾロジー」でも紹介されています。

後半では、わずかな条件の違いで無数の模様になる雪の結晶、不純物で色づく天然のカラーダイヤモンド、原子を1つずつ並べて作る最先端技術など、結晶の多様で奥深い世界も紹介され、「自然がつくる多様性」と「人が原子を操る技術」の両面を楽しむ時間となりました。


クエスチョン&ディスカッション:結晶・研究への質問

各グループから大島教授に対して、結晶と研究について質問が寄せられ、議論を深めました。

結晶について
Q金属の「硬い・柔らかい」の違いは?
A「滑り」が起きやすいか・起きにくいかの差。金は滑りやすいので柔らかく、鉄は滑りにくいので硬い。
Qダイヤモンドはなぜ硬い?
A1つの原子が4方向にがっちり手を結んでいる(正四面体構造)ため、その結合を崩すのが極めて難しいから。
Q不純物の混入は、結晶にとって悪いこと?
Aむしろ少し混ざっている方が役立つことも多い。どんな成分をどれだけ加えるかで、材料の性質を変えられる。純粋であることが、必ずしも一番良いとは限らない。
研究について
Q結晶研究者に共通する原体験は?
A模型づくりが好きな人が多い。電子顕微鏡で実際に原子が見えたときの感動が原動力になっている。
Q結晶と人間社会の似ているところは?
A小さな”村”がたくさんでき、やがて集まって”都市”になるように成長する。原子も人間も”楽な方”=エネルギーの低い方へ流れる。

研究のコツとして語られた「科学者ほど固定観念にとらわれやすく、それを後から壊すのが難しい」という言葉も、研究者ならではの実感がこもっていて印象的でした。


クエスチョン&ディスカッション:
人工の結晶と、自然の結晶の価値とは

後半のグループディスカッションでは、「人工の結晶と自然の結晶、それぞれの価値とは」というテーマで議論が行われ、各グループから異なる切り口で「価値」を捉えた答えが共有されました。

グループ① 「自然ならではの美しさ」に注目
自然の結晶には、人工的には再現しにくい独自の美しさがある。最終的に自然界でしか生まれないものには、その人なりに感じる美しさや芸術的な価値が宿っており、そこにこそ価値がある、という視点。

グループ② 「医療への応用」に注目
人工的につくる結晶(細胞)には、医療面での大きな価値がある。たとえば事故で角膜を損傷した患者に、自然由来の移植では機能を100%再現できない場合でも、人工的に改良したものを用いれば機能をより高く再現でき、手術費用も抑えられる「人間社会への貢献度が高い」という視点。

グループ③ 「造形としての結晶の美しさ」に注目
自然界にある結晶は、宝石やパワーストーンとして人に送る造形として見た目の美しさにも価値がある。また、まだ発見されていない結晶構造を自然界にはある可能性もあり研究する価値もあるのではないかという主張。

グループ④ 「環境・資源」に注目
自然界の資源は有限であり、技術発展のために大量の資源を使い続けることはできない。だからこそ、用途に合わせて自在に創り出せる「人工の結晶こそが環境にやさしく、持続可能だ」という主張。

グループ⑤ 「希少性とロマン」に注目
そもそも自然界の結晶とは何かを考えるとサファイアやアメジストなどの鉱石、塩・砂糖・氷などが挙げられる。人工物は無限に作れる一方、自然物は有限である。地球が何千万・何億年もかけて生み出した「一つしかないもの」だからこそ希少価値があり、天然ダイヤの結婚指輪に宿るような「ロマン」こそが価値だ、という視点。


大島教授からの総括

大島教授からは、「人工のものは”制御”できるため、まったく同じ品質のものを安定して作れる。一方、自然のものは一つひとつに個性があり、地球が途方もない時間をかけて生み出した”世界に一つだけ”の希少性がある。どちらが優れているということではなく、両者にそれぞれの価値がある」との総括が寄せられ、身近な結晶を入り口に、ものづくりと自然の奥深さを参加者と研究者が共に考える時間となりました。

Future Writer:吉羽


CONTINUOUS SEMINAR

連続セミナーのご案内

本セミナー「○○と知〜新たな学び」は、2026年度も毎月第3水曜日に定期開催します(8月は休講)。議論を交えながら新たな視点を養うべく、毎回異なるテーマで最先端の研究者が話題を提供します。

開催概要

日時毎月第3水曜日 18:00〜19:40
対象高校生以上(新しいこと・話すこと・考えることが好きな方)
参加費無料
今後のラインナップ
6/17

分断しにくい繋がりと知

JAIST 林 幸雄 教授

7/15

対人コミュニケーションと知

JAIST 岡田 将吾 教授

9/16

生命と知

JAIST 栗澤 元一 教授

8月は休講です。9月から再開いたします。
これまでの開催レポート

科学技術と私たちの未来について、肩肘張らずに語り合える場として、皆様の継続的なご参加を心よりお待ちしております。

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