2025.06.13 by 中野渡 淳 Sunao Nakanowatari近年、文献から収集された触媒データセットが多数公開され、データサイエンスへの活用が進んでいます。しかし、これらのデータには触媒開発の歴史も含まれているにもかかわらず、表形式のままではその全体像を把握するのは困難です。本研究では、こうしたデータに潜む設計の流れを可視化する「触媒系統樹」を提案しました。元素の組み合わせごとに触媒を整理し、物理化学的な距離にもとづいて系統樹上に配置することで、設計の系譜や傾向が一目でわかります。触媒以外の材料にも応用可能な汎用的な手法です。
2025.05.29 by Poulami MUKHERJEE先進的な光触媒を「混ぜて、スクリーニングして、見つける」だけで設計できたら便利だと思いませんか?私たちのハイスループット手法は、そのようなアプローチの一例です。本論文では、クエン酸を用いた効率的なペロブスカイト合成を提案しており、光触媒による環境浄化など幅広い分野への応用が期待されます。
2025.05.15 by 中野渡 淳 Sunao Nakanowatari未知の触媒が高性能なのか、低性能なのか、そのどちらの可能性もあるのか、推測に足る情報がないのか、あるいは一見低性能に見えても特別な可能性を秘めているのか――本研究では、こうした多様な可能性を既存の触媒データから推定できるシステムの開発に成功しました。このシステムを活用することで、既存知の活用、未知領域の探索、そしてセレンディピティ(偶然の発見)の促進という三つの要素をバランスよく組み合わせた、体系的かつ効率的なデータ駆動型触媒開発を実証しました。
2025.04.11 by 張 葉平 Yohei Cho光触媒反応は、光吸収から励起キャリアの拡散、表面での酸化還元反応まで、複数の過程が同時並行的に進行するため、反応速度を制限する律速過程の特定は容易ではありません。本研究では、表面における励起キャリアの過不足が反応温度に反映される現象を利用することで、励起キャリアの供給と表面反応による消費のどちらが律速段階になっているかを明らかにできることを示しました。この成果は、光触媒の性能向上に直接的に貢献するだけでなく、従来の研究で曖昧であった設計仮説の精度向上にもつながると期待されます。
2025.02.27 by 和田 透 Toru Wadaポリエチレンやポリプロピレンを合成する分子触媒は、活性化剤と接触して触媒機能を発現します。メチルアルミノキサン(MAO)は最も広く使われる活性化剤ですが、その構造は未解明で、触媒の活性化機構の理解や新規活性化剤の開発を妨げています。本研究では、シンクロトロンX線全散乱を用いてMAOの分子構造を解析し、直径約2 nmの板状分子であることを突き止めました。この成果はMAOの作用機構の解明に重要であり、新たな助触媒やプラスチック素材の開発につながると期待されます。