プログラム2020

  • プログラム (10/23更新) @Zoom (URLは11月中旬ごろ参加申込者に通知)
    オンサイト参加の場合:北陸先端科学技術大学院大学 知識科学棟(K42フリースペース)
  • 21日(1日目:圏論入門編)
    9:00 受付開始(Zoom接続準備)
    9:30 開会挨拶・趣旨説明(日髙)
    9:40-10:00 参加者自己紹介・参加動機など共有
    10:00-10:30 計算論的認知科学入門(日髙)
    10:30-12:30 圏論入門1:圏 (鳥居)
    休憩(60分)
    13:30-15:30 圏論入門2:関手 (岡崎・亀井)
    15:30-16:30 圏論入門3:自然変換 (布山)
    16:45-17:45  圏論入門4:発展的な話題の紹介(圏同値・随伴) (鳥居・日髙)
    18:00-18:30 圏論検定 (日髙)
    18:30 質問受付・懇親会(任意参加)
  • 22日(2日目:圏論応用編)

9:00 受付開始 (Zoom接続準備)
9:30-10:30 圏論検定の答え合わせ
10:45-12:00 認知科学における圏論の応用 (日髙)
休憩 (60分)
13:00-14:45 招待講演「圏論的人工知能と圏論的認知科学」丸山 善宏氏 (The Australian National University)
Abstract:
ノーベル物理学賞を受賞したウィグナーは、数学によりこの世界が理解できる不思議に言及して「自然科学における数学の不合理なまでの有効性」と述べた。線型代数(或は函数解析)が量子力学を可能にし、リーマン幾何が一般相対性理論を可能にしたように、いつの時代においても新しい数学が人間に理解可能な自然の領域を押し拡げてきた。それが人類の知の歴史である。同じことがこの現代においても衆目の与り知らぬ所で進行している。圏論というアブストラクト・ナンセンスとも呼ばれた抽象数学が、新種の科学知の変容を生んでいる。この変容は、ウィグナーの時代にはまだ広く知られていなかった科学、知能の科学である人工知能、心の科学である認知科学、また経済学などの社会科学にまで及んでいる。圏論的人工知能は、記号的AIと統計的AIの圏論的統合を可能にし、人間精神の両輪である理性と感性、論理的認識と直観的認識が調和した融合的AI・統合的AIを実現する為の次世代AIパラダイムを与える。こういった近年の新展開の背景には、着々と進歩してきた自動推論や自動発見の研究史がある。今では量子力学の為のAIさえ存在し、物理学の公理化というヒルベルトの第6問題を飛び越え、物理学の自動化に近づきつつある。本年Physical Review Lettersに出た論文ではデータからの自動発見技法が開発され、コペルニクスの地動説の発見がAIにより再現されている。昨年のNature論文では、新物質の自動発見AIが高い完成度で実現された。モノの本性、物質の働きの原理は、自然科学の蓄積により解明されつつある一方、ココロの本性、理解・認識・感情の成り立ちとその原理は、現代科学を以ってしても未だ多くの謎に包まれており、学問の広大なフロンティアとなっている。地理的なフロンティアに様々な開拓者が流れ込んだように、心というフロンティアでは、心理学・人工知能・哲学など、文理の垣根を超えて多様な学問が心という謎の解明に挑戦している。圏論的認知科学は、物質としての認知(即ち脳機能)ではなく、構造としての認知に光を当てることを可能にし、構造主義的視座からココロの法則性とモノの法則性を共に統制する高次のメタ法則性の存在を明らかにする。圏論的認知科学は、モノの世界とココロの世界を長らく分つてきたデカルト的二元論に対するアンチテーゼであり、現代においてそれを乗り越える為のおそらく唯一の方途である。

15:00-16:45 招待講演「計量と圏論―測ることと関係づけること」谷村省吾氏 (名古屋大学大学院情報学研究科 )
Abstract:
定量化することと記号化することは、およそすべての科学分野で行われることだと思います。同じもの・同じとみなせるものを見つけ出すことが科学の第一歩だろうと思います。同じような状況では同じようなことが起こるのが観察される、このことが法則性の発見の端緒でしょう。しかし、厳密に等しいものは、世の中にめったとありません。そこで、「近さ」も表現できるような概念や語法を我々は発達させてきました。数値化というと厳密性のためにすることだと思われがちですし、たしかに一面ではそう言えるのですが、数値化は近似の手段でもあります。さらに記号化は、数値化できない概念をも同定する方法だと言えるでしょう。抽象化とか代数化とも言いますが、いったん数値化された量概念を脱数値化することも我々は普通に行っていると思います。
そういった行いを、圏論を使うとシステマティックに記述できると私は思っています。格好よく言ってしまうと、科学的認識の方法を統括するものとして圏論を位置づけるというような話を試みたいと思います。
なお、おことわりしておかねばならないですが、私は理論物理とくに量子論を専門とする者であり、認知科学に関してはまったくの門外漢です。認知科学の専門家に聞かれると私は的外れなことを言うかもしれません。その点、ご容赦ください。

参考文献:
[1] 谷村省吾『物理学者のための圏論入門』(解説ノート)[link]
[2] 谷村省吾『科学の書き言葉としての圏論』現代思想 2020年7月号(特集=圏論の世界―現代数学の最前線)(青土社)pp. 136-149 に所収 [link]  [Amazon Kindle版]もあり

17:00-17:30 総括:認知科学における圏論的アプローチ(日髙)