Last Updated 2003,5/06


中間電極を用いた新しい動作原理のFET型強誘電体メモリの作製


図1 従来のFET型強誘電体メモリの動作原理
解説
 ゲート絶縁体となっている強誘電体膜の残留分極により、ゲートに電圧を印加してい なくてもSi表面では蓄積あるいは反転状態となっており、FETはONまたはOFF 状態となっている。ここで、ドレインーソース間電圧をかければ、ド レイン電流の大小により、強誘電体の分極状態が読み取れる。すなわち、正 負の分極状態を論理値の1または0とすることにより、メモリとして動作さ せることができる。  このように、電源を切ってもメモリ状態が維持できる不揮発性、 読出しの時ゲートに電圧をかけなくとも、再書込み無しに何度でも 読出せる非破壊読出し、1つのFETでメモリが構成できる高い集積度、さらに DRAM程度の高速書込みという特長から、本メモリは究極のメモリとして期 待されていた。

図2 従 来のFET型強誘電体メモリの問題点
解説
 理想的にはすばらしいメモリだが、しかし、強誘電体薄膜をSi上に直接堆積 すると両者がどうしても反応するため、両者の間には比較的誘電率の高い、 SiO2とは異なった絶縁物である緩衝層を入れなけなければならない。そのた め、1 ) 緩衝層に印加電圧が加わるので、書込み電圧が高い、2 ) メモリ保持時 には、ゲートをアースにするために、強誘電体膜の残留分極により緩衝層に も、電荷が貯まり、それが強誘電体膜にとって、減分極電界、緩衝層にとっ ては、リーク電流発生につながるため、メモリの保持時間が数日と短い、3 ) 界面特性が最も安定なSiO2を用いていないために、メモリ動作が不安定に なるという問題が生じる。
 これらの問題のため、このFET型強誘電体 メモリの実現は、かなり困難とされている。

図3  中間電極を用いた新しいFET型強誘電体メモリの動作原理
解説
 先ず、書込みは、左図にあるように中間電極を用いて、強誘電体薄膜にだけ、 正または負の書込み電圧VRを印加して、正Pr+または負Prーの残留分極状態にする。つまり、この時、中間電極をソースと同じ電位にすれば、 MOSFETのゲートーソース間は短絡状態であり、強誘電体薄膜にだけ書込み電 圧を印加できる。その後、中間電極を切り放し、開放して、正の読出し電圧 Vwを強誘電体膜とMOSFETを直列状態にして、印加する。右図に強誘電体薄膜 の分極ー電界(PーE)ヒステレシスループを示す。読出し電圧により、強誘 電体薄膜は、メモリ状態がPr+の時、黒色方向のPーEヒステレシスループ上 で、またPrーの時、赤色方向のPーEヒステレシスループ上で動作する。すな わち、Pr+の強誘電体薄膜の電気容量CflはPrー時の電気容量Cfhよりもかな り小さいことにより、Pr+時のMOSFETのゲート電圧VGは、Prー時のものより 小さい。具体的には、VGとVRとはVG=CfVR/(Cf+Cs)の関係になる。このVGがMOSFET の閾値電圧Vthより多ければ、ドレイン電流IDが流れ、Vthより小さければID は流れない。このIDの大きさによりメモリ状態を判別できる。すなわち、本 メモリの特長は
 1 ) 書込み電圧が強誘電体薄膜にだけ印加できるので、小さくできる。
 2 ) 保持時は、強誘電体薄膜は、アース状態なので、減分極電界がが存在 せず、保持時間が長くなる。
 3 ) 強誘電体膜に強誘電体が飽和するまで 電圧を印加する必要がないので、緩衝層としてSiO2が使用でき、安定なメモ リ動作ができる。
 というように、従来のFET型強誘電体メモリの問題点を全て解決することが できる。

図4 ディ スクリート回路による本原理によるメモリ動作の確認
解説
 図4は書込み電圧VR、読出し電圧(パルス)Vw、図3におけるドレイン電流 IDによる電圧降下V0、及び中間電極電位つまりMOSFETのゲート電位VGのタ イムチャートを示す。V0及びVGについては、Pr+及びPr-の両方について示し てある。図から、Pr+では、V0がVRの変化に対して全く変わらないが、Pr-の 方は、VRの変化に対して、位相が180度ずれているが、変化しており、ドレ イン電流が流れていることがわかる。すなわち、本メモリは、Pr+及びPr-の メモリ状態に応じて、出力が変化しており、メモリとして動作していること がわかる。また、ここでは5パルスのVRしかがないが、10E10パルス以上読出せるこ とを確認しており、非破壊読み出しであることが、確認できた。


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材料科学研究科