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底板(baseboard)

底板(baseboard) はコロンビア産のマツを寄せ合わせてできている。張り合わされ たそれぞれの木材は隣あった木材と木目が逆向きになっている。この工夫によっ て、自然に起きる木材の反りを補っている。底板(baseboard) 両端の木目を見れば、 どのように木材が張り合わせられているかがよくわかるであろう。底板(baseboard) には弦の張力に耐えられる程度の強度が必要であるが、このようにして 底板(baseboard) を作製した場合、湿度の変化により木目に沿って板が膨張・収縮 するという問題がある。組立前には板が反る可能性があるが、組立後は 調律ピン板(wrest plank) 、 低音弦系結横木(bass hitchrail) 、および 胴横木(belly rail) がそのような変化を防ぐ働きをする。 (反りは接着剤で抑えられ、底面からねじ込まれる6本の木ネジ は接着剤の働き を助ける。) 以上の理由から、底板(baseboard) は組立前に乾燥させなければなら ない。少なくとも一週間は、その楽器が設置される部屋と同程度の湿度の部屋 に置き、底板(baseboard) の両面に空気があたるようにしておく。底板(baseboard) は 1115mmの長さがあるがこれは変化しない。しかしながら幅は多少縮むことがあ るので、3mm余分にとってある。

乾燥させて底板(baseboard) の状態が落ちついたら、注意深く観察してみるとよい。 一方の端に沿ってよく見ると、一方向に僅かに湾曲しているのがわかるはずで ある。この湾曲は製作者にとって大変有益である。というのも、この湾曲によっ て弦を張った時に発生する力を補えるからである。平らな所に置いたとき、上 面は中心部で浮き上がり、両端が下がる形になる。以上のことが確認できたら、 鉛筆で底板(baseboard) の上面に印をつけておく。(訳注:後で上面がすぐに判別で きるようにするためなので、印をつける位置はどこでもよい。)この時、前面 と右端角も決めて印をつけておく。(訳注:これも面を判別しやすくするため。) これらの印は、これ以降、他の印をつけていく際の目印となる。

まず、左右両端で前面から104mmの長さをとり、定規でその2点を結ぶ線を引く。 線を引いたらもう一度、この線がすべての部分で前面から104mmの距離にある ことを確認する。この線は製作の際に重要な目印となるからである。次に設計 図を底板(baseboard) の上に置いて先の尖ったもので突くことにより、 対角補強材(diagonal brace) と 胴横木(belly rail) の位置を印し、定規と鉛筆で線を引く。 最後に低音弦系結横木(bass hitchrail) と調律ピン板(wrest plank) を使って、それぞれの位置を 底板(baseboard) 上に印す。調律ピン板(wrest plank) は底板(baseboard) の右端に置き、指で確認し ながら調律ピン板(wrest plank) と底板(baseboard) の右端をぴったりと揃え、先の尖った鉛筆 で調律ピン板(wrest plank) の内法を底板(baseboard) に印す。同様にして、底板(baseboard) の左端 で低音弦系結横木(bass hitchrail) の位置を印す。低音弦系結横木(bass hitchrail) は底板(baseboard) の幅よりも 短いので、背面に合わせる。(訳注:線を引く際には、設計図を参照するとよ い。)

前述したように、楽器を引っ張る弦の力で底板(baseboard) が歪むので、それを補 う歪みを前もって与えておく。そうしておけば、底板(baseboard) は引っ張られて いずれ平面になる。キー・パック角材(key packing strip) (700 × 10 × 10 mm) を 底板(baseboard) の下、ほぼ中心、 対角補強材(diagonal brace) の印に対して90度の角度で置く。(写真1) 底板(baseboard) を平 らな面に置き、2つのGクランプで前面右と背面左角を押し下げる。約4mmの歪 みができるまでこの状態にしておく。(訳注: 訳者の場合、約1週間固定してお いた。) 後の工程で対角補強材を接着した際、この歪みがクランプを取り外し た後でもまだ残っていることがわかるだろう。

対角補強材(diagonal brace) は両端とも正しい角度で切断されているが、長さはやや余分 にとってある。正しい位置に接着すると、僅かに左端で低音弦系結横木(bass hitchrail) と、 右端で 調律ピン板(wrest plank) の位置と重なり合う。対角補強材(diagonal brace) をしっかりと固定 するには、均等かつ直接的に圧力を加える必要がある。そのために6つの小さ なクランプ・ブロックを写真1に示した位置に設置する。実際にクランプを設 置する位置は厳密ではない。目安としては、最初の2つのクランプは木ネジ 穴が共鳴板(soundboard) と 胴横木(belly rail) で隠される位置にそれぞれ設置する。残り4 つのクランプは均等に置けばよいが、鍵盤間の隙間となる場所は避ける(訳注: 美観のため)。対角補強材(diagonal brace) を定められた位置に固定し、クランプ・ブロッ クと 1 1/2'' No.10 木ネジ を使ってしっかりと底板(baseboard) に押さえ つける。均等に力が加わることを確認したら、クランプ・ブロックを取り外し、 接着剤を付けて同じ位置に再度固定する。両端の余長部分が等しく重なり合う ことを確認し、ボロ布で余分な接着剤を拭き取る。(訳注:この時点ではまだ 対角補強材(diagonal brace) の余長部分は削らない。)

底板(baseboard) は少なくとも24時間はクランプしたまま放置し、接着剤を完全 に乾かす。そうしたら木ネジ を取り、クランプ・ブロックを取り外す。で きる限り木クズをネジ穴に埋め戻してから、プラスティック・ウッド(plastic wood) などで穴を塞ぐ。 別の方法としては、ノコギリを使用した際にできた木クズを木工用ボンドと練 り合わせてペースト状にし、これで穴を塞いでもよい。乾いてしまえばネジ穴 はほとんど判別できなり、またいずれ鍵盤部分で隠される。2つのGクランプは この時点で取り外す。底板(baseboard) は歪んだままのはずである。

注記: 元になったクラヴィコードには対角補強材(diagonal brace) がないが、多くのク ラヴィコードにはある。それに習って、このクラヴィコードにも強度を増すた め、および弦の張力に対抗する湾曲を与えるために対角補強材(diagonal brace) を加えた。


訳注: 接着剤を拭き取る際には、かなり湿った布を使うとよい。(山野辺  暁彦氏の指摘による) また山野辺氏によると、チェンバロはケースの厚みが あるので全体で張力を吸収するが、クラヴィコードはケースが薄く、高さがな いために張力はすべて底板にかかる。このため、全体が変形するのが普通のよ うだ、とのことです。



Tsutomu Fujinami
Wed Dec 8 11:06:30 JST 1999