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西本研究室

人間的な特性と能力を活かす
創造的ヒューマン・メディアの実現

西本研究室 NISHIMOTO Laboratory
教授:西本 一志(NISHIMOTO Kazushi)

E-mail:E-mai
[研究分野]
メディア情報学、Computer Mediated Communications (CMC)
[キーワード]
創造活動支援、コミュニケーション支援、音楽創造支援、メディア・インタラクション、妨害による知的活動支援

研究を始めるのに必要な知識・能力

研究を始めるために絶対必要なことはただ1つ:「自分がもっと創造的になりたい、もっと向上したい」という強い欲求のみ。
持っている方が望ましい知識と能力は、プログラミング技術(言語は不問)と基礎的な統計検定の知識。ただし、いずれも入学後に十分身につけられます。

この研究で身につく能力

当研究室における研究活動を通じて身につく(つけて欲しい)能力は、主として個人やグループ、組織などにおける各種の(協調的な)創造活動を対象として、そこにおける問題を発見する能力と、その解決策を発想し実装する能力、そしてその解決策や実装したシステムやツールの有効性を実証する能力です。特に、常識的なアイデアではなく、逆転の発想のような「非常識的なアイデア」の発想力を身につけることを目指します。
これらの能力を獲得することにより、研究所や企業などにおいて、指示されたことを単にこなすだけの受動的な人材ではなく、常に自ら発想し、自らテーマを立案し、その現実的解決策を自ら構築できる、高い創造性と自主性を持った能動的な研究開発者になることができます。

【就職先企業・職種】 主にICT系企業およびWeb系企業における企画・研究開発職

研究内容

<概要>

 人工知能技術やロボット技術、センサー技術などの急速な進歩と普及により、近い将来多くの仕事が機械に取って代わられることが指摘されており、すでに一部では現実のことになりつつあります。しかしそんな時代においてもまだまだ人間でなければうまくこなせない分野は、新しいモノゴトを産み出す「創造活動」と、その実行過程で必要な「社会的活動」です。当研究室では、人間の日常生活に埋め込まれた大小様々な創造行為をより高度な創造活動へと展開可能とし、 人工知能の時代においても人々が活き活きと活躍できるようにすることを目標として、人間的な特性や能力を活かして創造活動を促進支援するヒューマン・メディアの研究開発を推進しています。
 具体的な研究項目は、およそ以下の5項目に分類できます。

1) Creativity Mining 技術

 自分がある種の創造的能力を持っていること、それ自体に気づいていない人が、世の中にはたくさんいます。そのような、人々の中に埋もれている創造的能力を発見し、発掘するための道具を創っています。

2) 創造活動のための Universal Media

 自分が持つ創造的能力に気づいたとしても、その能力を自由自在に発揮することは、依然として困難です。創造性の発揮を妨げる障壁を発見し、これを軽減・除去することで、アマチュアからプロフェッショナルまで、万人が遺憾なく創造的能力を発揮できるようにするメディアを創ります。

3) インフォーマル・コミュニケーション支援メディア

 インフォーマル・コミュニケーションとは、要するに「雑談」のことですが、その中で「貴重な知識やアイデア」がしばしば産み出されます。このような雑談の有益な側面を強化し、雑談を知識創造の場にするためのメディアを創ります。

4) 既成概念を超越する新世代コミュニケーションメディア

 聖徳太子は同時に10人の訴えを聞き、そのすべてに的確に回答した、といわれています。常識的にこれは不可能と思われていますが、実はちょっとした支援で実現可能になります。このような、従来は不可能とされていた非常識なコミュニケーションを可能とするメディアを創ります。

5) 「妨害」による知的能力獲得の支援

 便利な道具を作るためには、妨害的要素は除去されるべきものです。しかし、あえて妨害的要素を採り入れることで、多少不便かもしれないが、ユーザの知的能力を向上させることができる場合があります。このような妨害要素を採り入れた、知的能力向上のための仕掛けを創ります。

<事例>

nishimoto1.jpg 妨害による知的能力獲得の支援に関する研究事例をひとつ紹介します。パソコンやスマホの普及によって、文字を手書きすることがほとんどなくなりました。この影響で、漢字を読めるけれど書けない人が急増しています。このような問題が生じる原因は、パソコンのかな漢字変換システムが常に正しい字形の漢字しか出力しないので、表示された文字の字形の詳細に注意を払うことがなくなったためです。そこで我々は、ときどき字形に誤りがある漢字を出力し、これを修正しないと文書が保存できないシステムを考案しました。実験の結果、このシステムを利用することによって、従来のかな漢字変換システムを用いた場合はもちろん、文字を手書きした場合よりも圧倒的に漢字をよく覚えられることが証明されました。

主な研究業績

  1. 生田泰章,高島健太郎,西本一志:文書作成過程で削除された文章断片の効率的収集手段と活用可能性に関する考察,情報処理学会論文誌,Vol.59, No.12, pp.2299-2314, 2018.
  2. 西本一志,魏建寧:漢字形状記憶の損失を防ぐ漢字入力方式, 情報処理学会論文誌,Vol.57, No.4, pp. 1207-1216, 2016.
  3. Oshima, C., Nishimoto, K. and Hagita, N.: A Piano Duo Support System for Parents to Lead Children to Practice Musical Performances, ACM Trans. on Multimedia Computing, Communications and Applications, Vol.3, Issue 2, Article 9, 2007.

使用装置

防音室やグランドピアノ、多種多様な電子楽器などの音楽情報処理研究関連機器
協調活動の記録・分析環境
オフィスなどにおけるインフォーマル・コミュニケーション支援
技術の実験環境

研究室の指導方針

研究テーマ設定については各学生の自主性を重んじます。自分が向上し、創造的になるためには、いったい何が必要なのかを、まさに自分自身の切実な問題として熟考・発案し、それを研究テーマとして設定することを求めます。その上で、そのアイデアを実装し、実際に使ってみることによって、その有効性を評価検証することを求めます。修士1年次のゼミでは、テーマ設定のためのブレインストーミングを徹底的に行い、問題発見力と発想力を鍛えます。修士2年次のゼミでは、研究進捗報告を通じて問題解決力とまとめる力、プレゼンテーション力を鍛えます。

[研究室HP] URL:https://www.jaist.ac.jp/ks/labs/knishi/

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