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研究内容

マテリアルサイエンス(材料研究)におけるイノベーションには先端的な分析・計測技術が大きな役割を果たしてきており、今後もその重要性は変わりません。しかし、固体NMRを含めた最先端計測技術においては、現状では測定対象は多くの場合単純な物質やデバイスに限られ、そのままでは多元化・複雑化する現代の材料・デバイスの分析への適用が困難です。

当研究室では、「材料開発」と「先端計測技術発展」を融合し、両者の視点から見据えた研究を進めています。

固体NMR分析手法開発と二次電池電極の状態分析

固体材料についての核磁気共鳴(NMR)は、固体物質中の局所構造やダイナミクスの解析に極めて有効な分析手法です。特にナノ空間の構造や環境を調べる際には、吸着された物質中の原子やイオンを「プローブ(探針)」として利用し直接的に内部環境を調べることができます。よって、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池ではそれぞれリチウム、ナトリウムのNMR共鳴信号を解析することで、電池内部の微小な状態変化を検出できます。軽元素であるリチウムやナトリウムは電子顕微鏡やX線分光など他の分析手段では直接観測が難しいため、NMRでリチウムやナトリウムなど電荷を担持する重要な核種の状態を観測することが、イオンの吸脱着メカニズム、すなわち電池の充放電メカニズムの解明に大きく役立ちます。

最新のリチウムイオン電池や次世代電池であるナトリウムイオン電池、全固体電池などの電極、電解質内のリチウム、ナトリウムの状態を解明しています。充放電により刻々と変化する内部環境をリアルタイムで観測するためには、電池の「その場観測(in situ測定,オペランド解析)」が必須となるため、電池観測のための高感度in situもしくはオペランドNMR法の開発を積極的に進めています。本手法により電池が過充電された際の金属析出メカニズムも解明できるため、電池の安全性評価にも貢献できます。

電池のリアルタイムNMR解析(左上)1),(右上)2),金属リチウム析出イメージ(採択表紙)(左下)2) 非晶質炭素の充電,過充電挙動モデル(右下)2)

1) K.Gotoh et al., Carbon (2014).  2) K.Gotoh et al., J. Mater Chem. A (2020).

次世代電池(Naイオン電池)向け負極炭素材料,多孔質炭素材料の開発

充放電メカニズムの解析から、新たな材料の設計指針を立て、それに基づいた負極材料の開発を行っています。炭素材料は以前から負極に用いられてきましたが、Naイオン電池や全固体(Liイオン)電池などの次世代電池用電極材料としても実用化において最も期待されていることから、新たな炭素材料の開発を進めています。

生物由来材料などを用いた炭素の多孔質化にも取り組んでいます。また、金属酸化物等と炭素質の複合化とその応用も行っています。

新規層間化合物の合成と表面状態・ダイナミクスの観測

黒鉛や無機層状化合物の層間は2次元空間であることから、その空間に導入された分子やイオンはバルク(通常の3次元に物質が集合した状態)とは異なる物性を発現します。新規黒鉛系層間化合物の合成と構造解析、それらの電池電極への応用および電子・プロトン伝導についての研究を行っています。

Diglyme溶媒和されたナトリウムイオンの黒鉛層間での構造および分子運動モデル3)

3) K.Gotoh et al., J. Phys. Chem C (2016).

固体NMRによる炭素の表面解析法の開発

炭素材料の性質は、表面官能基の種類(水酸基やカルボキシル基、エポキシ基、メチル基等)や結合量により、大きく変わることが知られています。この表面官能基の状態を把握し、制御することが材料開発において重要になります。固体NMRは官能基を精度よく検出できるものの、従来の方法(13C direct excitation, 1H-13C CPMAS)では検出感度が低いという問題がありました。当研究室では、他大学との共同研究により動的核偏極(DNP) NMRを用いた高精度かつ高感度な炭素材料の表面分析法の開発を進めています。

DNP – NMRによる炭素表面官能基の観測 4)

4) H. Ando, K. Suzuki, H. Kaji, T. Kambe, Y. Nishina, C. Nakano, K. Gotoh, Carbon (2023).

所有・管理装置     

  • Bruker AVANCE Ⅲ 500MHz-NMR(固体高分解能(1H,13C, Li, Na, B, P等)測定対応)
  • NMRオペランド計測用充放電対応特殊プローブおよび専用充放電システム
  • 熱分析装置(DSC/TGA)
  • 電気化学計測装置(CV,LSV測定等)
  • 充放電試験装置(コインセル用,特殊セル用,NMR実験用含む)
  • インピーダンスアナライザー(導入中)
  • 電池作製設備(グローブボックス3台(Li用,Na用,一般用),恒温器,ミキサー,プレス機等)
  • 高温管状炉&電気炉(計5台,850~1500℃)
  • 遊星型ボールミル
  • 全自動比表面積測定装置(一点BET)
  • 遠心分離機
  • 恒温振盪機
  • 凍結乾燥機
  • ガラス細工設備
  • 真空ライン
  • 正立三眼金属顕微鏡

など

※)XRD,XPS,電子顕微鏡(SEM,TEM,STEM),細孔解析等は学内設備を利用しています。

北陸先端科学技術大学院大学
ナノマテリアルテクノロジーセンター
(物質化学フロンティア研究領域)

後藤研究室

〒923-1292 石川県能美市旭台1-1

Gotoh Lab.

Japan Advanced Institute of Science and Technology
Center for Nano Materials and Technology
(Materials Chemistry Frontiers)

1-1 Asahidai, Nomi, Ishikawa 923-1292, Japan

Copyright © Gotoh Lab.
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