Beyond M-BIP

◇ M-BIP Stories Vol.6 2020年度優秀賞 金沢学院大学

今年で5回目となる、学生を対象としたビジネスアイデアプランコンペティションM-BIP(Matching HUB- Business Idea Plan Competition)の、歴代の受賞学生を紹介する 「M-BIP Stories」。経験したからこそ分かるM-BIPの感想や将来の夢とともに、これからM-BIPに挑戦する学生の皆さんへのアドバイスやエールもお聞きしました。

今回は、地元の学生ベンチャー linkuconnect(リンクコネクト)の代表としても活躍されている金沢学院大学芸術学部芸術学科の鋤田(すきだ)瑞生さんにお話をお伺いしました。鋤田さんのチームは、福井県の株式会社ホリタ(ホリタ文具)とコラボレーションした子ども向けのアート教育の企画でM-BIPに応募、見事優秀賞を受賞しました。(以下、敬称略)


「1+1=2の発想ではなく、2.1の発想で幼児を学び育てるためのアートビジネス」

鋤田 瑞生(金沢学院大学 芸術学部 芸術学科3年)

メンバー:向 渚紗、管野 千彩美、篠田 香織、高橋 真友紀、中野 七星、橋場 友美、

中出 胡桃、西崎 桜花

 

概要:株式会社ホリタが2年前より実施している「学校でも塾でもない第3の学び場事業」のスキームの中で、アートを通じて「個性」「思考」「伝達」の学びを幼児に提供するカリキュラムを提供する。試行実施では、「魚・動物を題材とした描写」「色が混合することでいろいろな色があることを知ってもらう」「線・立体・空間を認識してもらう造形」など子どもが興味を示しそうなテーマで4回実施し、子どもたちの反応や関心の度合いを確認した。

 

特に子供たちの関心が高かった「色水」 
様々な色のついた水をペットボトルのなかで混ぜ合わせ、思い思いの色をつくります。

 

― 鋤田さんは、linkuconnectの代表として、既に地元で様々なプロジェクトに関わってこられたと思いますが、M-BIPを知ったきっかけを教えてください。

鋤田 私たちlinkuconnectは、学生たちによる地域の観光資源(観光名所・風習・文化)を描いたイラストを商品に活用してもらい、商品の付加価値を高め、地域の活性化に貢献する事業をしています。具体的には、うつのみや書店とコラボレーションした地元デザインの年賀状の作成や、金沢市二俣町で生産されている二俣和紙を使ったポチ袋のデザインなど、地元の資源を活用した製品づくりに取り組んできました。そんな私たちの取り組みを応援してくださっていたJAISTの森URA*に勧められ、2019年度のM-BIPにlinkuconnectとして初めて出場し、優秀賞を受賞しました。そして、そのことをきっかけとした出会いから、株式会社ホリタ(ホリタ文具)の堀田社長をご紹介いただき、今回の子ども向けアート教育のプロジェクトが始動することとなりました。つまり、2020年度応募させていただいたビジネス案は、そもそもはM-BIPがきっかけとなって生まれたビジネスチャンスだったんです。

* URAは、大学等において、研究者とともに(専ら研究を行う職とは別の位置付けとして)研究活動の企画・マネジメント、研究成果の活用促進を行うことにより、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化等を支える業務に従事する人材
― そうだったんですね。「子ども向けアート教育」について、既に複数回試行実施をされているとのことですが、具体的にどのようなプロジェクトなんですか?

鋤田 株式会社ホリタでは、福井県内の大型ショッピングセンターや店舗などで「ホリラボ」という子ども向けワークショップを開催しています。地方では都市圏などと比べて多様な学びを提供する場所は多くありません。「ホリラボ」に関心を持って毎回多くの子どもたちが参加しています。当事業を持続的に実施するにあたって、堀田社長から2つの課題について相談されました。まず1つは、「今使用している教材が市販の知育教材である」ことです。市販の教材は、それぞれの遊び方に従って使用するので、どうしても受け身の姿勢になってしまう。そして2つめは、「カリキュラムによって何を学べるか伝わらない」という話を伺いました。アート教育は少し前から注目されていますが、ターゲットである子育て層に響かせるためには、カリキュラムの内容やその効果の確認をする必要があると感じていたけれども、そこがなかなか難しいとのことで…。その2つの課題解決ができるカリキュラムを作成する、というのが2020年度に優秀賞をいただいたビジネスアイデアでした。

― カリキュラム作成や試行実施にあたって、苦労したことや工夫したことを教えてください。

鋤田 一番重視していたのは「楽しんでもらうこと」です。対象が3~5歳の就学前児童だったので、いかに飽きさせないかが重要だと考えていました。テストランをやってみて、「色が好き」ということだったり、組み立ててもらおうとしてもその通りに行かなかったり、いろいろなことがわかりました。ビジネスモデルをつくったら、まずは小規模でもやってみることがとても大切なんだと気が付きました。

― すでにかなり具体的に取り組まれていたので、M-BIP応募のハードルは比較的低かったのではないかと思いますが…
鋤田 いや、難しかったですよ(笑)。今まで大学内での企画書づくりは経験がありましたが、学外に自分たちのプランを提示して発表するのは初めての体験でした。金沢学院大学の名誉教授であり、linkuconnectにもプロデューサーとしてご参加いただいている棒田邦夫先生のお力添えもいただいて、何とか形にできました。今まで企画に携わってきた身としては、受け手にわかりやすく自分の構想を伝えるのは本当に難しかったです。JAISTからの丁寧なフィードバックもいただき、とても勉強になりました。ビジネスに取り組むにあたって、第三者からのフィードバックは重要なんだと改めて気づかされました。また、当日に向けてプレゼンテーション資料の作成も大変でしたが、終わった後の達成感は最高だったので、ぜひ多くの学生に味わってほしいと思います。

― 鋤田さんは現在大学4年生。来春からは東京の会社への就職が決まっていると伺いましたが…

鋤田 もともと将来やりたいことがなかったのですが、M-BIPを含むlinkuconnectでの経験のおかげで、自分の視野を広げることができました。また、それらの経験を就職情報サイトに記載していたら、とある企業から面接オファーをいただき、内定をいただくことができました。学生のうちにいろいろな経験をしていたおかげで、面接でも自分をしっかりアピールすることができたと思います。私は富山県出身なのですが、ずっと「東京に行きたい」と思っていたので、来年からの新生活がとても楽しみです。

― 最後に、M-BIPに応募を考えている学生さんにメッセージをお願いします!

鋤田 M-BIPは学生しかできない特別な経験ですので、少しでも気になったらぜひ挑戦してほしいと思います。特に地元の学生は、M-BIPの場で発表することで、自分の取り組みが地域に根付いていくきっかけにもなるのではないかと思います。応援しています!

 


 

学生起業家ならではの経験をたくさん語ってくれた鋤田さん。新天地での活躍を応援しています。
そして、今年のM-BIPの応募締め切りまで残り1か月となりました!応募はこちらから。皆さんのアイディアをお待ちしています。