Matching HUB voice

Matching Stories 2022 vol.1
「イノベーションを推進する”HUB”としての産学連携のあり方」 北菱電興株式会社 取締役 酒元一幸氏

毎年北陸先端科学技術大学院大学が主催している産学官金のマッチングイベント「Matching HUB」は、昨年度よりKanazawaからHokurikuへ活動のフィールドを広げ、パワーアップして開催しています。(昨年度の開催報告はこちらから)9回目を迎える今年も、北陸の新産業創出と人材育成を目的に、たくさんのビジネスの「種」を生み出すべく、
11月17日(木)18日(金)の2日間にわたって開催します。

同イベントの開催にあわせて、JAIST-netでは過去のMatching HUBに出展された地元企業の“イノベーター”たちに産学連携の意義を問う、Matching HUB Stories2022を連載します。

第1回目は、石川県が誇るトップ企業の1つである北菱電興株式会社にて新規事業開発の責任者を長年務められ、産学連携の旗振り役として本学インダストリアルアドバイザーをはじめ様々な場面でご活躍される酒元一幸氏に、「企業が育つ大学との付き合い方」についてお話を伺いました。

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「大学とのコラボレーションも、基本的には人とのつながりや信頼関係が重要」と語る酒元氏。産学連携に取り組むようになったきっかけも、プライベートの交友関係の中で偶然生まれました。ご友人との他愛ない会話から、「こうあったらいいね」「こうできたらいいね」という、イノベーションの種が生まれたことから、大学との連携に大きな可能性を感じたそうです。

「利潤追求を基本とする企業という立場の枠を超えた、柔軟なブレインストーミングができたことがとても刺激になりました。ある意味では、仕事という立場を離れて、純粋にイノベーションに対する共感が生まれたことがよいきっかけになったのかもしれません」

そこから、会社として初となる産学連携の取り組みを推進した酒元氏。補助金申請や行政との連携など、大学の持つリソースやバックアップ体制に魅力を感じたといいます。

農業分野をはじめ、新しい事業に次々と挑戦している北菱電興株式会社は、そのなかで始まった本学との共同研究も今年で3年目を迎えます。
「共同研究を始める以前は、基礎研究が中心であり、社会実装というイメージは正直あまりなかったというのが正直なところです。しかし、「JAISTフェスティバル」に参加した際に図書館でマーケティングに関する書籍を見つけたり、未来創造イノベーション推進本部のなかでもURAに民間出身者を多く起用していたりなど、JAISTと深くかかわるにつれて社会との連携を非常に大切にしている大学であるということがよくわかってきました。今、共同研究に取り組んでいる先生も、非常に遊び心のある研究者ですが、その遊び心こそが企業が産学連携に求めているエッセンスではないでしょうか。ここから様々なイノベーションが生まれることに大きく期待しています」

さらに、日々の実務においても産学連携を契機に、大きく変わったことがあるといいます。「お客様への提案の際などに、今までであれば既存の製品をベースにニーズをとらえていくやり方が主流でしたが、その枠を超えて先生方の期待値をベースに“こういうものがあったらどうですか?”という提案ができるようになり、隠れたニーズを引き出すアプローチができるようになりました。同時に、このようなやり取りこそが、社会のニーズとシーズのギャップを埋めていくという意味で大学にとっても有益ではないかと思います」

まさに企業の可能性を大きく広げるために有効な「大学との連携」を実現している北菱電興株式会社。その秘訣とは一体何でしょうか。
「一つは、企業と大学お互いのメリットになるように強みを掛け算するということでしょうか。新しい可能性を探索するために、企業にとっていわゆる「得意な領域」から一歩離れたところで共同研究をするというのは有効だと思います。また、大学との連携を多角的にとらえるというのも重要だと思います。大学には研究シーズをはじめ様々な魅力的なリソースが詰まっていますが、”玉手箱”ではありません。それぞれのリソースを点としてとらえるのではなく、大学そのものと連携していくという考え方が非常に重要だと思っています。Matching HUBの開催実績やURAの経験や人柄などいろいろな要素を勘案し、JAISTはそのような付き合い方のできる大学だと思っています。また、インダストリアルアドバイザーの一員としてそのような産学連携のあり方を体現していければと考えています」

本学が主催するMatching HUBにも例年ご出展いただいている北菱電興株式会社ですが、Matching HUBを最大限活用するには、大学が同イベントを開催している趣旨を理解することが非常に重要であると酒元氏は語ります。
「Matching HUBは単なる展示会ではなく、“つながり”を醸成するためのマッチングイベントです。実際、過去の出展をきっかけに全く違う業種の方々をはじめ様々なつながりが生まれ、そこからビジネスチャンスが広がったこともありました。そういった意味で、JAISTそのものが、イノベーション創出における1つのHUBとして、北陸地域に貢献していると感じます」

最後に産学連携が北菱電興株式会社の将来ビジョンにどのように貢献していくのかをお伺いしました。
「急激に世の中が変化していく中で、企業も変わっていかなくてはいけないというのはよく言われていることですが、実際には簡単なことではありません。そのなかで、それぞれが描く将来のビジョンの実現に向けて進んでいくわけですが、直線距離で到達する必要はなくて、少し回り道をして可能性を模索することも大切だと思っています。そこに、「大学との付き合い」をうまく組み入れるとよいのではないでしょうか。当社としては、将来的に「知」を大切にする会社になってほしいと思っています。そして、そこから一歩二歩進んで、どんどん「知恵」をつけていってほしい。そのなかで、産学連携は大きな意味を持ってくると思います」

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お忙しいなか、快く取材に応じてくださった酒元様、本当にありがとうございました。
来月以降も月一回程度の連載を予定しておりますので、お見逃しなく!
Matching HUB Hokuriku2022に関する詳細は、下記お問合せまでお願いします。

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※本件に関するお問い合わせは以下までお寄せください
北陸先端科学技術大学院大学 未来創造イノベーション推進本部
Tel: 0761-51-1070
Email: ricenter@ml.jaist.ac.jp