Miyata Lab. @ JAIST

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CGにおけるプロシージャル技術とは，何らかのアルゴリズムで形状や模様を生成することを指します．画面の高精細化にともない，映像コンテンツの制作作業は大規模化しています．特にゲーム業界では，高品質な動画を多用することもあり，コンテンツ制作に映画制作並みの人員を数えることも珍しくありません．現状では，コンテンツ制作の多くは手作業で行われていますが，人的リソースの制約から一層の作業の効率化が求められています．このような制作現場の背景を考慮し，プロシージャル技術による映像制作支援の手法をこれまでにいくつか提案してきました．
プロシージャル手法に加えて，質感表現に関する研究も推進してきました．多くの工業製品の表面には，微細な凹凸形状の加工を施したり凹凸付けしたシートが貼り付けられており，付与された凹凸形状が製品の質感へ大きく影響し商品価値を高めています．例えば革シボと呼称される素材は，自動車の内装材として幅広く利用されており，内装の質感を大きく左右する要因でもあります．高級車では内装に本革を使用している例もありますが，ダッシュボード周りでは革シボのパターンを金型に転写してプラスチック成型したものが多用されています．すなわち，天然革の持つ高い質感を凹凸付けしたプラスチックで代替表現していることになります．表面の凹凸形状は，物体表面での光の振る舞い（主として反射特性）を大きく左右する要素であり，結果として人が認知する質感に影響を及ぼしていると考えます．
創造活動支援には，これまでのプロシージャル技術を基盤技術とし，マルチモーダルなインタフェースを介在することで，より効率的な支援ツールの構築を目指します．プロシージャル技術には，必要な時に求められた大きさのデータを生成できる，手間をかけずに多様なコンテンツを得ることができる， 必要な解像度に合わせて出力するコンテンツの詳細度を自在に制御できる，などの大きな利点があります．一方で，パラメータ調整による間接的な入力が必要であり，人の感性を直接的に反映させることは困難です．絵筆やペンで描く行為は直感的な作業であり，体に染みついた知識，すなわち“身体知”により幻影に肉付けしていく作業といえます．一方，コンピュータで映像を制作する行為は，コンピュータを操作して間接的に描き，かつ，論理的な知識と操作といった“形式知”で設計していく作業といえます．プロシージャル技術は，さらにもう一段階間接的な操作で絵を描く技術です．すなわち，絵を描くソフトウェアロボットを設計するようなものであると考えます．プロシージャル技術には，創造活動支援の大きな可能性を秘めていますが，前述のようにユーザの直感的，直接的な関与が困難です．ユーザのコントローラビリティと作業負荷はトレードオフにあると考えられますが，ユーザにはパラメータ設定による間接的操作に加え，スケッチインターフェースやハプティクスデバイスなどを介した直接的な制御を可能とするハイブリッドな手段を取ります．さらに，遠隔地間での協同作業空間を構築し，試作品のデザインを視覚的，触覚的，力覚的に検討する統合コラボレーションシステムなどの応用研究も進めます．
一方，人の質感認知はマルチモーダル，クロスモーダルな情報処理であると考えます．視覚刺激に起因する質感認知だけを取り上げても，表面光沢の付け方や凹凸の流れ，粗密パターンによって認知する質感は大きく左右されます．また，触れた時の温度，重さ，重心の位置，摩擦係数，反発力などの触覚，力覚の情報や，物理的な接触時に発せられる音，環境音なども，質感認知に大きく関与しています．究極の題材は食事です．器を含めた料理の配色，香り，食材の重さ，食材を切り分ける時の触覚，咀嚼する時の音や嚥下時の触感などが，味を左右しています．人の質感認知に関するマルチモーダル，クロスモーダルな情報処理の仕組みを解明することで，より自然で高品質なヒューマンインタラクションの環境を提供したいと考えています．また，質感認知の知見とデジタルファブリケーションの諸ツールとを有機的に結合することで，プロダクトデザインの新たな素材開発などにも挑戦したいと考えています．