一般セッション

一般講演 1:ネットワークダイナミクス(司会 増田)

O1-1:中村彰, 片平昌幸(秋田大学医学部 社会環境医学講座医科学情報学分野)
題目:感染症伝播の疫学と情報の拡散伝播
概要:感染症疫学での新規の取り組みとして,様々な類型の感染症の伝播のsimulationに取り組んできた(麻疹伝播,SARS,インフルエンザ,等々)(数千人-数十万人-数百万人規模).その方法論は,ヒトの病理病態情報と病原体固有の情報(例:潜期,潜伏期,感染性期,発病期,免疫期,等々の個人差と感染確率を考慮したパラメータ群の導入)の全てを考慮したMonte Carlo法である(非決定論的数理モデル).感染症と伝播は流言飛語の伝播に類似しており,我々の病原体(感染症)伝播のモデルと同等に取り扱える.我々のMonte Carlo法による感染伝播の基本を説明し,その特徴として,1)病原体の「脅威度」を表す指標(R0)が「口コミ」や「情報流通」の伝播(伝染)強度と共通すること,2)記録されている全ての感染事象から「感染パターン」を類別できること,まで実例と共に発表する.

O1-2:町田拓也,瀬川悦生,今野紀雄(横浜国立大 大学院工学府システム統合工学専攻 機械システムコース)
題目:ランダム・グラフ上の離散時間量子ウォーク
概要:量子コンピューターは,量子力学における粒子の波動性を利用した,状態の重ね合わせによる並列計算を行い,従来のコンピュータの指数倍の計算処理能力が期待されている.量子コンピュータの計算結果は,この重ね合わせの状態を観測することで得られる.そこで,指定された状態が観測される確率を高める量子アルゴリズムが,Shor(1994),Grover(1996)などから始まって,以後多くの研究者によって考案されている.特に,いくつかの正則なグラフ上の量子探索アルゴリズムにおいて,量子ウォークはその効力を発揮している.本研究では,Erdos-Renyiのランダム・グラフ上での離散時間量子ウォークを用いた量子探索アルゴリズムに関するシミュレーション結果を得た.

O1-3:徳山俊, 北島博之(香川大学)
題目:スモール・ワールド・ネットワークにおけるニューロンの同期発火
概要:スモールワールド・ネットワーク構造をもつニューロン群は,環状結合などの規則正しい局所結合ネットワーク構造に比べて同期発火を起こし易い事が知られている.しかし解析されているのは,ギャップ・ジャンクションによる拡散結合など線形結合の場合が主である.本研究においては,非線形結合である化学シナプス結合によるスモール・ワールド構造を構築し,ニューロンの同期発火の起こり易さを調査した.結果として,従来とは異なりスモール・ワールド構造が局所結合構造と比較して同期発火が起こり難い事を得た.スモールワールド・ネットワークを修正し,全てのノードが同じリンク数を持つようにすると同期発火が起こる事から,平均頂点間距離に関わらずネットワークの均一性(同じ入力数)が同期発火を得るための重要な要因であることがわかった.

O1-4:守田智(静岡大学工学部)
題目:複雑ネットワークのクラスタリング係数について
概要:複雑ネットワークを特徴づける指標の一つにクラスタリング係数があり、クラスタリング係数が大きくノード間の平均距離の短い時、ネットワークはスモールワールドと呼ばれる。この際、クラスタリング係数が大きいか否かはランダムな結合された場合に比べることで判断されるが、異なるノード数や次数分布を持つネットワーク間でクラスタリング係数の大小を比較する方法は確立されていない。本発表ではクラスタリング係数が漸増するメカニズムを入れたネットワークモデルを構築して調べることによりクラスタリング係数の数値が持つ意味を明らかにする。

O1-5:上野太郎 (熊本大学), 増田直紀 (東京大学)
題目: 病院内ネットワークの構造に基づく院内感染対策
概要:

O1-6:塚本鋭(東京大学大学院工学系研究科),白山晋(東京大学人工物工学研究センター)
題目:繰り返し囚人ジレンマにおける模倣ダイナミクスの協調進化に与える影響
概要:ネットワーク上の繰り返し囚人ジレンマにおいては様々な角度から協調の進化に寄与する要因が調べられている.模倣ダイナミクスが影響を与えることも知られているが,系統的に調べた研究例がない.本稿では,協調進化に与える影響を,ネットワークのベキ乗指数とZimmermannらとSantosらの模倣ダイナミクスの関係性を中心として考察する.

一般講演 2:可視化・構造分析(司会 相馬)

O2-1:松林達史, 山田武士(NTT コミュニケーション科学基礎研究所), 藤村孝(NTTサイバーソリューション研究所)
題目:Topigraphy: Tag Mountains
概要:Topigraphy (topic + topography) は大規模ラベル付きグラフ可視化の描画手法の一つであり,2次元地形図(等高線)表示を用いた新しい手法である.近年ラベル付きグラフ可視化として,タグクラウドを用いた描画が世界的にも流行っている.しかしながら従来のタグクラウドでは,限られた領域に一次元的にタグを並べてゆく手法が主流であり,タグ間の関連を考慮した配置手法はごくわずかである.またいずれの手法も多くても数百のタグを対象にした描画しか行われてこなかった.そこで我々は,BLOGRANGER TGを用いて,Ajaxを利用したTopigraphy技術を提案してきた.この手法では従来手法とは異なり, 10000x10000px四方の巨大なTagCloud地図上に5000タグを,スクローラブルマップを用いることにより効率よく表示することに成功した.本研究では.我々はこのTopigraphy技術を用いて,Flickrに投稿されている画像のtag情報から共起ネットワークを作成し,様々な地形図を作成した.Toppgraphyにおける標高値計算には,従来のKeyBirdのようなポテンシャル値を用いる方や,ネットワークの粗密を指標にした手法が考えられる.しかしながら,これらの手法ではマイナータグが密集した領域や,密に部分集合を作るネットワークの影響などにより,抽象概念度を表す理想的な標高値が得られない.一方,我々の手法では,タグのユーザ情報を利用することにより,抽象概念度を効果的に表すことに成功した.研究会においては,様々な地形図を示すとともに,「Topigraphy API」の紹介も行う予定である.

O2-2:村里英樹, レオン末松 豊インティ(NiCT/ATR CIS 応用ネットワーク科学)
題目:双曲型多層円グラフ及び, 再帰的コミュニティ抽出法による, 大規模関係性データの視覚化手法
概要: 扱う電子データの大規模化に伴い, 関係性データの表示に関してひとつの問題が顕著になりはじめている. 従来のグラフ描画(Graph Drawing)の手法が適さない事例が増えている事だ. グラフ描画では, オブジェクトとその間の関係からなる構造の直接的な表示を目的とするが, オブジェクト数が何百万規模になると, 複雑過ぎる・疎密がなく均質・グラフごとの特徴の確認が難しいこと等により, 本来の目的である情報, 知識の獲得が困難で, 実用的でない場合があるためだ. 我々は, 情報視覚化(Information Vizualization)の視点から, 従来より範囲を広げ「視覚化手法の工夫によって, ユーザのグラフ構造データの認識を支援する技術全般」を指してグラフ視覚化(Graph Vizualization)と呼び, 目的に応じていくつかの手法を考案し実現した. 各ツールは大規模関係性データで利用でき, その把握を支援する. 研究会ではこのうち5つ例の紹介を予定している.

O2-3:川原正人, 今中規景, 伊達正晃, 中平佳裕, 中井敏久(沖電気工業株式会社)
題目:複雑ネットワークとしてのインターネッと そのネットワーク帯域性能
概要: 複雑系ネットワーク構造も含めて、一般的なネットワーク構造において、ネットワークがネットワーク全体で示すネットワーク帯域量が、ネットワーク構造より求められることを、理論的側面からとネットワークシミュレーション的側面から示す。複雑系ネットワーク構造をとることで知られているASレベルのインターネット全体のネットワーク帯域特性、平均最短経路長特性の現在における解析値を示す。また、構造によるネットワーク帯域を決める重要なネットワーク特性値である有効最大ノード数とCentrality Betweennessの関連性を示す。

O2-4:高口太朗,*江島啓,出尾美佳,宮崎修次(京都大学情報学研究科,*KDDI株式会社)
題目:統計熱力学形式を用いたコミュニティ構造の抽出
概要:ネットワークの各ノードに固有の特性量を設定すると、ネットワーク上のランダムウォークによる軌跡は特性量の時系列として表現される。ここではmixiから切り出した部分ネットワークを例に取り、ユーザ(ノード)がある趣味をもっていたら1、そうでなければ0と特性量を割り振ることにする。リンクはユーザ間のマイミクシィ関係である。その0,1からなる時系列に対し統計熱力学形式の手法を適用することでノードごとの特性も考慮したコミュニティ構造の抽出ができることを示す。この手法は、q次フロベニウスペロン行列という、ネットワークのある種の行列表現の固有値問題となる。そこで、別の固有値問題からコミュニティを求める先行研究の手法による結果との比較も紹介したい。

O2-5:梶田康博, 長谷川智史, 穴田一(武蔵工業大学 工学研究科)
題目:複雑ネットワークにおける主要部分グラフの抽出
概要:インターネットや人間関係など,構造を調べる為に膨大な計算時間を要する複雑なネットワークは少なくなく,計算機の進歩だけでは対応が難しいものとなっている.そこで,本研究では距離行列に着目したネットワーク(無向、重みなし)を縮小する手法を提案し,その有効性を検証した.結果,現在までに考案されているネットワークの性質を表す複数の指標により,提案手法によって縮小化したネットワークが元ネットワークの特徴を保持している事が確認された.

O2-6:申昇燁, 生天目章(防衛大学校)
題目:進化手法によるネットワークの最適化
概要:近年の複雑ネットワークに関する研究により,我々の生活に密接に関係している多くのネットワークの間に,様々な共通の性質が存在していることが明らかになってきた.これらのネットワークで大切なのは,その構造である.つまり,ノード間のつながり方によって,ネットワークの性質が大きく変わるためである.今までの研究では、任意のパケット発生量に対して,通信効率が高く,また様々なタイプの故障などに対してロバスト性の高い,理想的なネットワーク構造については,まだ明らかになっていない.本研究では,進化的手法を用いて,最適なネットワークを設計する方法を提案する.対象にした問題領域は,(1)最適な通信ネットワークの設計,(2)同期問題に対する最適なネットワークの設計である.それぞれの問題において,リンクコストの最小化の制約を加えて,最適なネットワークの構造について明らかにする. (1)最適な通信ネットワークの設計問題においては,ノード中心性を基づき,様々な値のパケット生成率の下,混雑度指数を求める.そして,リンク密度の最小化の制約を加えた,二つの評価関数の同時最適化問題を解く.そして,進化的な手法を用いてに逐次ネットワークを進化させながら,最適なネットワークの構造を求めた. (2)同期問題においては,ノード間の隣接関係を表す行列から求まるラプラシアン行列の第2最小固有値が高い時,同期問題の解への収束性が高いことが知られている.また,最大固有値が小さくなると,頑健性が上がることも知られている.このことから,最大固有値を第2最小固有値で割った代数的連結指数と平均リンク数の同時最小化問題を進化的な手法で解く.そして,進化的手法により求めた最適ネットワーク構造の特徴について分析する.

一般講演 3:時系列分析(司会 木村)

O3-1:鷲崎誠司, 森下慎次, 藤岡健吾, 長谷川雅一, 林良一, 綱川光明(NTTサイバースペース研究所)
題目: コンテキスト依存の情報構造化技術
概要: ユビキタス社会の到来に伴い、利用者の各種行動は、当該状況に関連する一般情報や利用者の個々の位置測位情報、生体情報等の多様なセンサ情報と同様に複数のサービスを介して分散蓄積されるようになると想定される。本発表では、状況に依存して関係する情報を個々の群としてとらえまとめて蓄積することにより、利用者の行動を意味のある単位で整理/利用することを可能とする状況依存型の情報構造化技術についての検討結果を報告する。

O3-2:森俊勝, 馬場崇徳, 高階勇人, 瀬良浩太(株式会社 構造計画研究所), 水野誠(明治大学)
題目: iPhone 3G に関する会話ネットワークはいかに変化したか? -組織内コミュニケーションの分析
概要:デザインやフォーマットにおいて画期的な特徴を持つ新製品に関して、いかに情報が消費者間で伝播し、選好形成に影響を与えるかのケーススタディとして、iPhoneを取り上げる。ある企業組織内で、iPhone 発売直後のクチコミがどのような会話ネットワークを通じて流れ、その結果どのような知覚や選好の変化が起きたかを二度にわたる調査を通じて観測した。その結果から、消費者間に画期的な新製品が普及する場合の傾向や、コミュニティの形成など会話ネットワークの変化について報告する。

O3-3:井庭崇, 北山雄樹, 伊藤諭志, 西田亮介, 吉田真理子(慶應義塾大学環境情報学部)
題目:オンラインストアにおける商品の共購買ネットワークの分析
概要:本研究の目的は、書籍、CD、DVDの販売や購買の背後にある「隠れた法則性」を探ることにある。オンライン書店「楽天ブックス」における販売データをもとに、商品の共購買関係のネットワークを分析する。共購買ネットワークは、書籍、CD、DVDのそれぞれについて、同一顧客に購入された商品同士にリンクを結ぶことで作成する。分析に際しては、対象期間中に同一顧客に購入されたすべての商品同士にリンクを張る「全結合ネットワーク」と、対象期間中に同一顧客に購入された商品を購買順序に従ってリンクを張る「時系列ネットワーク」の2種類を取り上げる。なお、複数の顧客が同じ組み合わせを選択している場合には、そのリンクには購入した顧客の数に応じた重み付けを行う。ネットワークを分析した結果、次数分布や重み分布に興味深い特徴があることがわかった。顧客が自由に商品を購入しているにもかかわらず、全体としては一定の特徴が見られるということから、創発的に秩序が形成されていることを意味する。最後に、本研究は楽天技術研究所における分析研究の一環で行われたものであること、および個人情報の含まれるデータは一切用いていないことを付記しておく。

O3-4:橋本康弘, 長田一登, 陳Yu, 大橋弘忠(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)
題目:SNSにおけるコミュニティ構造の時系列分析
概要:ソーシャルコミュニケーションのイベントログからソーシャルネットワークの時系列を構成し、各時刻のネットワークに対してクラスタリングを行うことで、コミュニティ構造の時系列分析が可能になる。発表ではソーシャルネットワーキングサービスのログデータからコミュニティの時間発展を求める方法について議論し、そこから個人とコミュニティの関係性を明らかにするための新しいアプローチを提案する。

O3-5:石川孝(日本工業大学)
題目:成長するネットワーク上の協調モデル
概要:SNSやソーシャルブックマークなどのソーシャルソフトウェア上での利用者の協調行動を適確に予測できるような成長するネットワーク上の協調モデルは研究途上にある.この発表では,(Holme and Newman, 2006)*に始まる協調モデルの研究をサーベイし,ソーシャルソフトウェアに適用できる協調モデルについて検討する. *Holme, P. and Newman, M. E. J. "Nonequilibrium phase transition in the coevolution of networks and opinions," Phys. Rev. E 74, 056108 (2006).

ポスター発表

P1:奥村浩徳, 林幸雄(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:地理空間上のネットワークモデルのいくつかの特性
概要: 地理空間上に通信ネットワークを作る場合には、1)設置や運用のコストがかからない事、2)ノード間で素早く情報伝達ができる事、3)不慮の故障や悪意のある攻撃に対してネットワークが頑健なものである事が主に要求される。また、人口の密集箇所ではパケットの送受信要求が多くなるので、その部分にノードを集中して配置するのは自然な考え方である。これらの事を踏まえた地理的ネットワークモデルが近年提案された。具体的には, 人口メッシュデータ上に初期の正三角形(または正方形)を置き、内部の人口に応じた確率で正三角形(正方形)を選び、それを4つの正三角形(正方形)へと分割することを繰り返すという手法に従いネットワークが生成される。ここで人口メッシュデータというのは、どの部分にどれだけの人口がいるかを表した実際の統計量である。例として選んだ4つのエリアの人口メッシュデータにおいて、1)と2)の性質を満たしているかを、100回シミュレーションによって、その各エリアについてリンク長の分布とその平均値、Stretch Factorの値を調べた。ここでStretch Factorとは、2ノード間の直線距離をネットワーク上の最短経路の距離(リンク長の和)で割った値である。また、三角形分割(または四角形分割)で生成したネットワークでは各ノードの次数(ノードの持つリンクの数)がほぼ同じになるが、ネットワーク上でのトラフィックを考えた場合には、中心的な(攻撃対象となりやすい)ノードやリンクが存在する可能性がある。そこで、通信の混乱等を引き起こさないために、パケット転送のシミュレーション実験を行って、負荷のかかりやすいノードやリンクについて検討した。

P2:赤間啓之(東京工業大学大学院社会理工学研究科)
題目:連想辞書から複雑ネットワークへ--次数分布のシミュレーション
概要:連想辞書における単語対をもとに形成された複雑ネットワークは、中程度の次数でローカルピークを持つ、奇妙な形状の次数分布曲線を示す。連想辞書は、様々な分野での活用が期待されている以上、その原因を見極めた上で新たな連想辞書をデザインすることが望ましい。本稿では、一般的な連想辞書の形式を踏まえ、その次数分布をシミュレーションし、連想辞書の企画をサポートする方法を考察する。

P3:上山憲昭 (NTTサービスインテグレーション基盤研究所)
題目:キャッシュ配置に効果的なトポロジ構造に関する考察
概要:近年,インターネットにおける動画配信の急増が目覚ましく,今後,大容量リッチコンテンツ配信の普及が予想される.リッチコンテンツ配信の所要伝送帯域は大きく,ISPにとって消費NW資源量を最小化する効率的な配信システムの構築が急務である.このためにはNWトポロジ等のNW情報を利用することが可能なISP自身が,大容量のキャッシュサーバを自身のNW上に最適配置し,サーバを最適選択することが有効である.本稿では31のISPのNWトポロジを対象にキャッシュを最適配置し,キャッシュの配置が効果的なノードのトポロジ構造上の特性について分析した結果について報告する.

P4:片平昌幸, 中村彰(秋田大学医学部 社会環境医学講座医科学情報学分野)
題目: 複数のネットワークが介在する情報流通のMonte Carloシミュレーション
概要:論者は「口コミ」や「書き込み」が複数のネットワーク(SNS)が介在して拡大する様子をMonte Carlo法により再現し,その「伝播力」を表す指標と初期パラメータとの関連性を定量的に評価してきた. そのための具体的なネットワーク伝播の環境として,1)3種類のSNSを考え,2)これらの複数のSNSを跨ぐ閲覧者/発言者をSNS毎に3種類を準備した.実験に際しては,3)同一条件での多数回の試行を行い,4)統計学的な評価を取り入れた.更に、これら情報の流通のパターンを視覚化することで幾つかの情報流通の類型化が行えることから,多くの人の耳目の注目を集める情報の伝播力との関係を明らかにできた. ポスターセッションでは,simulationの実演を含め,方法論の新規性と有用性について主張したい.

P5:中川帝人, 鈴木泰博(名古屋大学情報科学研究科)
題目:複雑ネットワークの方法を用いたネットワークの構造による分類
概要:Webページのネットワークを対象にして、各ドメインごとにネットワークを取得し、それらのドメインの構造を複雑ネットワークの方法を用いて解析し、分類した。結果、Webページのネットワークは3つのパターンに分類することが出来た。

P6:伊藤政志, 木村昌弘(龍谷大学), 斉藤和巳(静岡県立大学), 中野良平(中部大学), 元田浩(大阪大学産業科学研究所)
題目:コメント情報に基づくブログ空間の情報伝搬分析
概要:ブログ空間上での情報の流れを分析することは注目されている研究課題の一つである。本研究では、実際の大規模ブログデータを用いて、ブログ記事上にリンクとして貼られているURLがコメントリンクを通しての伝搬パターンについて分析する。

P7:津田洋平, 瀬戸秀孝, 熊野雅仁, 木村昌弘(龍谷大学)
題目:ゲストブックネットワークの成長分析
概要:本研究では、ブログユーザ同士を繋ぐゲストブックネットワークについて調べる。ゲストブックネットワークは成長する社会ネットワークの一例である。有効直径やクラスター係数の時間変化など、その成長ネットワークとしての性質について検証する。

P8:山崎正晃, 瀬戸秀孝, 熊野雅仁, 木村昌弘(龍谷大学)
題目:ミニブログのネットワーク構造分析
概要:近年、Web上でソーシャルネットワークを抽出し、その特徴を分析する手法が注目されている。Web上のソーシャルネットワークとしては、ブログやSNSが代表としてあげられるが、SNSについてはmixiに関するネットワーク構造の抽出と分析が行われている。本研究では、新しいブログとしてミニブログが注目されていることから、ミニブログの「もごもご」に着目し、「もごリンク」ネットワークと「もごワード」共起ネットワークの抽出と構造分析を行い、mixiとの比較検討を行う。

P9:山本和紀, 伊藤政志, 熊野雅仁, 木村昌弘(龍谷大学)
題目:イノベーター理論を用いたブログユーザの行動予測
概要:本研究では、過去のアクセスデータからユーザの将来の行動を、イノベーター理論を用いて予測する手法を提案する。実際の大規模なブログアクセスデータを用いた実験により提案法の有効性を検証する。

P10:瀬戸秀隆, 木村昌弘(龍谷大学)
題目: ミニブログのネットワークコミュニティの分析
概要:本研究では,日本での主要なミニブログサービスである「もごもご」に注目し,そこでのミニブログユーザ間のコミュニケーションについて調べる. 特にブログロールネットワークにおける主要コミュニティとコメントネットワークにおける主要コミュニティを比較検証する.

P11:鈴木徳一(日本大学理工学部)
題目:地震の複雑ネットワークのダイナミカルな発展
概要:地震データを複雑ネットワークに写像し、クラスター係数のダイナミカルな振る舞いについて調べた。その結果、クラスター係数の値は、メインショック前には定常的に推移するが、メインショックが起きたところで突然大きな値をとり、やがて、再び定常的になるまで、ベキ則的に減衰することがわかった。

P12:豊田規人(北海道情報大学)
題目:p-Clustering, String and Adjacent Matrix Formulation
概要:次数が一様でない場合の青山さんらの人間(猫)のつながりののモデルにたいし、ループの効果、つまりクラスタリング効果を加味し、遠距離の次数相関を無視した簡単な場合で再考した計算を発表。

P13:山川修(福井県立大学 学術教養センター)
題目: SNSを利用した大学間学習コミュニティの可能性
概要: 福井県内の5つの大学・高専は、学習コミュニティを核にした、大学間連携プロジェクトを10月から開始した。このプロジェクトでは、SNSを利用しながら教職員、学生、卒業生、地域住民、地域企業、NPO等の大学を越えた人間のネットワークを構築し、それを核に連携を行おうというものである。現在、大学における学生の活動をサポートするためのSNSは多くの大学で開設しているが、成功している例は少ない。本発表では、プロジェクトの目的と概要を説明し、効果的な運営方法、波及効果などの議論を行い、大学SNS運用に関する知見を整理できたらと考えている。

P14:相馬亘(NiCT/ATR CIS 応用ネットワーク科学)
題目:擬相関行列を基にしたネットワーク推定
概要:インターネット・トラフィック,株価,地震,気象,脳波などの時系列データから構成される相関行列に対してランダム行列理論を応用し,擬相関行列を定義する.この擬相関行列は,例えば株価時系列の場合,市場自体,グループ構造,ノイズという性質を反映していて3種類ある.そして,これらの擬相関行列を基にして,背後にあるネットワークを推定する手法について議論する.

P15:佐藤恵介, 林幸雄, 小野泰正(北陸先端科学技術大学院大学)
題目:大規模なネットワーク解析ツールをオープンソースとして開発・利用するプラットフォームの開発と参加者募集
概要:大規模なネットワーク解析ツールをオープンソースとして開発・利用する方法を紹介する。今までのネットワーク解析ツールは、アプリケーションとして使い易い半面、拡張性に乏しく、目的あった解析が効率的にしにくいという欠点があった。また、ネットワークダイナミクスや有向グラフ・2部グラフの解析など既存のツールにない機能で解析したい場合も拡張性に富んだ解析ツールが必要である。我々の解析ツールは、javaクラスパッケージとして提供され、javaの特性とソースコードでの提供により、それを共有的に開発・利用していくことで、このパッケージはより多機能になっていく。さらに、オープンソースとして提供し、オンライン上で大人数が議論し意見交換することで、より多機能・共有化され、より多くの人の利益にかなうパッケージとなることが期待される。我々はそのためのプラットフォームも提供する。それをこの場で紹介し、これの参加者を募る。しかし、パッケージ開発・利用のみでなく、そのアプリケーション化・ドキュメント化・他アプリケーションとの連結などプログラム技術に関心がないユーザーに対しても、簡単に利用できるような環境の開発も目指したい。そのために、技術的な立場の議論だけでなく、利用者の立場の議論なども行いたい。すなわち、プログラムの技術に興味ない人でも積極的な参加を期待する。

P16:河内佑美, 吉村真弥, 吉井伸一郎(サイジニア株式会社)
題目:商品開発リンクによるECサイトのビヘイビア変化
概要: 様々なECサイトにおける実データを用いて、ユーザの閲覧履歴の解析と特徴抽出を行う。複数のサイトを見ることで、差異を超えて共通するユーザビヘイビアについて検証する。また、サイト内のコンテンツへの導線を増やすことによって起こるユーザビヘイビアのダイナミクスについて議論を行う。

P17:花房真理子, 井庭崇 (慶應義塾大学総合政策学部)
題目:アニメ声優の共演ネットワークの可視化と分析
概要:本研究では、アニメ声優の共演ネットワークの可視化と分析を行う。1990~2000年に日本国内で放映されたテレビアニメ番組を分析対象にし、声優をノード、共演関係をリンクとしたネットワーク図を作成している。分析は、声優ネットワークの特徴分析、時系列の構造的変化の分析、声優の共演にもとづくアニメの分類の3つを行う。声優ネットワークの特徴分析では、俳優ネットワークとの比較分析を行うことで、声優ネットワークの特徴を抽出する。時系列の構造的変化の分析では、11年分のデータを1年ごとに区切り、声優のネットワークの時系列での構造的変化の特徴を抽出する。これら2つの分析をもとに、声優の共演関係にもとづくアニメの新しい分類を試みる。

P18:澤井秀文(NICT神戸研究所未来ICT研究センター)
題目:創発ネットワーク研究が果たすべき役割と今後の研究課題についての一考察
概要:創発ネットワーク研究の果たすべき役割と今後の研究課題について、筆者の研究のバックグラウンド(大規模神経回路網と進化計算理論の研究)と複雑ネットワーク科学との関係について言及しながら、それらを統合することにより自然に創発ネットワーク科学研究へつながることを説明する。また複雑ネットワーク科学から得られる知見として、自然界と人間社会のあらゆる階層間をつなぐ「接着剤」としての役割が、ミクロ・メゾ・マクロスケールでの現象を縦横無尽に説明するための有力な手段となり得ることを述べる。今後の研究開発課題として、「ネットワーク版データマイニング」技術を開発し、人類知識の①分類、②構造化、③体系化・理論化、④可視化を行い、一般に解決困難な実世界の問題に対する⑤解決支援システムを構築する必要性について述べる。これにより、「創発ネットワーク科学」が現代の諸問題の解決への貢献と合わせ、「現代文明社会システム」を本来あるべき姿に再構築するために貢献できることについて考察する。

P19:広瀬隼也, 井庭崇(慶應義塾大学 環境情報学部)
題目:コードを基にした楽曲ネットワークの可視化と分析
概要: 本研究では、コードを基にした楽曲ネットワークの作成手法を2つ提案し、その手法を用いた分析を行う。第一の手法は、楽曲におけるコードをノード、コードの遷移をリンクとして捉える「コードの遷移ネットワーク」である。第二の手法は、コード進行をノード、コード進行の遷移をリンクとして捉える「コード進行の遷移ネットワーク」である。本発表では、これら2つのネットワークを用いて実際の楽曲を分析することで、これらの手法の特徴を明らかにする。

P20:岩田学, 秋山英三(筑波大学大学院システム情報工学研究科)
題目:「協力度」を考慮した戦略による, ネットワーク上での協力の進化
概要:本研究では、Reglar、Random、Small-world、Scale-free等、様々な形態のネットワークを持つ社会集団において、協力行動が如何に進化するかを分析する。この社会集団において、各プレイヤーは各々の対戦相手の「協力度」を考慮して、その相手に対する行動(協力/裏切)を決定することとする(プレーヤーの「協力度」は、過去の対戦における協力行動の割合として定義する)。本研究では、以上のような「集団のネットワーク構造」と「相手の協力度を考慮する意思決定機構」のそれぞれが協力行動の進化に与える影響を分析し、さらに、これらの間の相互作用について分析する。

P21:井手勇介(横浜国立大学),藤原明広(関西学院大学), 内田真人(九州工業大学),巳波弘佳(関西学院大学), 増田直紀(東京大学),今野紀雄(横浜国立大学)
題目:極値理論によるしきい値モデルの漸近解析
概要:しきい値モデルは,n個の頂点からなる単純グラフである.各頂点は独立同分布な確率変数を重みとして持ち,異なる2つの頂点はその重みの和がしきい値を超えたときに限り,辺で結ばれる.このモデルに関する,次数・クラスター係数・平均頂点間距離などの,nを充分大きくとった場合の漸近挙動は既に調べられており,例えば,重みの分布が指数分布やパレート分布の場合にスケールフリー性を持つことが知られている.本発表では,極値理論を用いることで新たに得られた,しきい値が頂点数に応じて変化するモデルの次数に関する弱収束定理を紹介する.

P22:山本仁志, 諏訪博彦(立正大学), 小川祐樹(電気通信大学), 岡田勇(創価大学)
題目:SNSにおけるコミュニケーションネットワーク成長過程の分析
概要: ソーシャルメディアとしてのSNSは、その社会ネットワーク構造およびコミュニケーション構造の追跡が可能であることから、様々に興味深い分析が可能である。 既存のSNS分析においては単一のSNSサービス内のネットワーク構造を分析することが主流であった。しかしこのアプローチでは、分析したネットワークの特徴が普遍的であるのか、また構造がどのようにコミュニケーションのダイナミクスに影響を与えているかの分析が困難である。我々は、複数のSNSネットワークを分析対象とし、SNSの成長過程にはどのようなパターンがあるのか、ネットワークの成長過程とSNSの活性化にはどのような関係があるのかを分析する。

P23:中河嘉明(筑波大学大学院生命環境科学研究科), 横沢正幸(農業環境技術研究所), 麹子茂(法政大学), 原登志彦(北海道大学)
題目:植物個体群における競争ネットワークの構造分析
概要:植物は固着性のため、主に近隣の個体同士が局所的に消費競争をしている。その個体間の競争は、鳥瞰的にみると網のようにめぐらされ、それが総じて個体群のダイナミクスを形成している。したがって、個体間の競争のネットワークを個体と個体群の層をつなぐ中間層としてとらえ、それを調べることによって、植物個体群を新たな視点で理解することを目的とする。

P24:井上寛康(大阪産業大学)
題目:科学的発見と発明を行う集団は相互に影響するのか
概要: 科学的知見の貢献がなかったならばイノベーションの10%は起きなかったか,あるいは大きく遅れたといわれるように,科学的知見がイノベーションおよび経済成長の原動力になっていることは広く認知されている.そのため政府の学術研究支援の大きな動機となっている.その1つが産業クラスター計画であるが,そのネットワークにおいて,科学的知見がいかにイノベーションに発展しているかの過程はいまだよくわかっていない.そこで本研究では,科学的知見がイノベーションに発展する際に,どのように産と学が連携を成熟させていくのかという過程を,新しい分析手法である多重ネットワーク分析により解明することを目的とする.これに則した形で,本発表では産と学が科学的知見の共同生産を表す論文の共著ネットワークが,いかにイノベーションにつながる共同特許出願ネットワークに発展するのかという,多重のネットワーク分析を行う.具体的には,これらネットワークの間でロジスティック回帰分析を行い,どのようなネットワークのトポロジの関係性があるのかを分析する.

P25:三宅桐子, 井庭崇(慶應義塾大学 環境情報学部)
題目:実空間における人々の行動ネットワークの可視化と分析
概要:本研究では、実空間の「場」における人々の行動データから描き出される隠れた関係性を、ネットワークとして可視化する。具体的には、場所を介した人と人の関係性と、人の移動を介した場所と場所の関係性のふたつを、それぞれネットワークとして捉える。行動データは、大学キャンパス内に設置されたRFIDシステムを用いて抽出する。人と人のネットワークでは、わずかな時間のずれによって同じ場所を共有する機会を失っている人と人の関係性を「すれ違い」と定義し、人をノード、「すれ違い」をリンクとして、「すれ違い」の関係性をネットワークとして可視化・分析する。場所と場所のネットワークでは、人々の行動データをもとに、場所をノード、滞在時間をノードの大きさ、場所から場所への移動をリンクとして、場所のネットワークを可視化・分析する。これらの結果から、実空間における人々の行動をもとに描き出される関係性を多角的に可視化し、実空間コミュニケーションにおける「場」の影響について考察する。

P26:伊原彰紀, 大平雅雄, 小山貴和子, 松本健一(奈良先端科学技術大学院大学)
題目:OSSの障害修正における開発者ネットワークの分析
概要:一般的なオープンソースソフトウェア(OSS)は地理的に分散した環境で開発がおこなわれているため,開発中に生じたOSSの障害に関する情報を開発者間で共有・管理するために障害管理システムが利用される.本稿では,効率的に障害修正をおこなうための知見を得ることを目的として,障害の修正における開発者ネットワークの分析を行う.

P27:大平雅雄, 柗本真佑,松本健一(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)
題目:コミュニティ媒介性:OSS開発における協調作業への媒介度を評価する指標
概要:LinuxやApacheをはじめとする大規模なオープンソースソフトウェア(OSS)開発コミュニティには,参加者の役割(開発者,バグ報告者,ユーザなど)に応じたいくつかのサブコミュニティが存在する.高機能・高品質なOSSを開発し続けるためには,各サブコミュニティにおける活動から得られるアウトプット(ソースコード,バグ報告,ユーザフィードバックなど)を有機的に機能させOSSに反映させることが重要となる.OSSコミュニティのコアメンバは,いくつかのサブコミュニティに参加しコミュニティ全体の秩序の形成や組織化に貢献しサブコミュニティ間の協調作業を円滑化している.我々の先行研究から,複数のサブコミュニティを媒介するコアメンバのコミュニケーション構造は,成功コミュニティと衰退コミュニティとでは大きく異なることが分かった.また,異なるサブコミュニティの参加者をコアメンバが媒介する度合いを評価する指標として,従来の媒介中心性は適切ではないことも明らかとなった.本発表では,サブコミュニティ間の協調作業を円滑化するコアメンバの媒介度合いを定量的に評価するためのコミュニティ媒介性指標を提案する.

P28:大塚一路, 西成活裕(東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻)
題目:複数の確率過程を含んだ混雑に対するゲーム理論的評価
概要: 我々はこれまでの研究で、ASEP(asymmetric exclusion process)と呼ばれる可解モデルと金融工学におけるオプション理論の考え方を融合させて将来の混雑状況を加味した、人の混雑に関する評価理論の構築に成功している。しかしながら、この理論はある特定の場所における、1種類のダイナミクスに対する理論なので、戦略的な意思決定という見地から、いくつかの拡張の余地が残されている。そこで本研究では、複数の確率過程、例えば、イベント会場とそこにつながる道路状況の同時評価や、 相反する評価基準(運搬量と快適度など) のトレードオフなどを定量化すべゲーム理論的な手法を用いて、混雑状況において何を優先すべきかを考察する ことを目標とする。

P29:友寄全志(琉球大学理学部物質地球科学科物理), 藤本祥司, 石川温(金沢学院大学)
題目:経済ネットワークの生成モデル構築へ向けた企業成長メカニズムの研究
概要:経済や企業ネットワークにおいて、ネットワークの構成要素は企業である。構成要素である企業の成長ダイナミクスを取り入れたモデルを作ることは、経済ネットワークの成長を理解する上で重要である。将来、企業成長のダイナミクスを取り入れたネットワークの生成モデルを構築するために、我々はその構成要素である企業の成長のメカニズムについて調べている。これまでの企業所得分布とその成長率分布の研究の結果、パレート則、ジブラ則、詳細釣り合い則が高額所得領域において成り立つことが実データの分析によって報告されている。我々は、これらの法則を満たすモデルの構築を行っている。上のパレート則を満たすシミュレーションモデルとして高安-佐藤-高安(TST)モデルがある。このTSTモデルは、乗算ノイズと加算ノイズを含むランジュバン方程式で定義されている。我々は、企業所得の高額領域において、このTSTモデルが残り2つの法則も満たすことを数値的に確認した。また、中額所得領域において非ジブラ則と詳細釣り合い則が成り立つことも確認した。さらに、TSTモデルに含まれる乗算ノイズと加算ノイズの統計的性質がパレート指数に与える影響について調べている。以上の結果について報告する。

P30:目黒有輝, 田中敦(山形大学工学部情報科学科)
題目:エージェントモデルを用いた情報伝播のモデル化
概要:本研究は拡散モデルをベースに、情報伝播のモデルを構築することが目的である。小規模な友人関係ネットワークに対して情報伝播実験を行い、実験結果を基にモデルを構築する。そして、構築したモデルに対してマルチエージェントシミュレーションを行い、モデルの妥当性を検証する。 考察する際は、伝播対象である情報に興味感心を持っている割合(存在率)と、情報に対する興味感心をリンク間で共有している割合(共有率)に焦点をあてる。シミュレーション結果から存在率と共有率が伝播範囲にどのように影響を与えるのか議論する。

P31: 五十川ゆかり,宮田真衣,上林憲行(東京工科大学メディア学部メディア学科)
題目:ソーシャルネットワーク分析を用いた大学生の就職活動パフォーマンスの実証調査
概要:就職活動を上手く行うにはどうすればいいのか. 就職活動対策として,就職活動マニュアル本などを活用する大学生が多いが,それ以外に就職活動を上手く行う要因はないのだろうか.そこで,本大学生を対象にした就職活動のパフォーマンスについて,ソーシャルネットワーク分析を用いた比較的大規模な実証調査を行った.就活パフォーマンスの評価指標としては,内定数・内定率・初内定獲得時期・初内定獲得までの期間の4指標を採用した.主にソーシャルキャピタル指標(実効サイズ・密度)及び 個人プロフィールの属性(プロジェクト演習・サークルなど)との関係性を明らかにした.特に顕著な分析結果としては,内定率が高い人はネットワークの実効サイズが高く,密度が低いという傾向が明らかになった.

P32:佐藤一憲 (静岡大学工学部システム工学科)
題目:複雑ネットワークから見た生物の保全
概要:食物網に代表されるように,生態系における生物間相互作用は,複雑なネットワークで構成されている.今回の発表では,生態学における複雑ネットワークのレビューをおこない,生物の保全を目的とした提言を与えたい.

P33:市川憲人, 内田真人, 鶴正人, 尾家裕二(九州工業大学)
題目:一般の複雑なネットワークに対するウィルソン流繰り込み群の方法に向 けた研究
概要: 繰り込み群の方法は素粒子物理や統計物理などの多岐にわたる分野において、重要な基礎をなす理論である。特にウィルソン(Kenneth Wilson)らによるウィルソン流の繰り込み理論は、格子状に並んだ粒子の相互作用による力学現象、その中でも特に臨界現象の解析に遺憾無くその威力を発揮する。上記の繰り込み群の方法は主に規則的な格子をなす粒子の相互作用を記述するためのものであった。しかし、一般の複雑なネットワークにおいても社会ネットワークにおける伝染病のアウトブレークなど、臨界現象とみなせるような力学現象が起きており、繰り込み群の方法を一般の複雑なネットワークにおいても使用できるような理論を構築することが試みられている。本発表においては、そうした試みの概要について紹介していく。