21世紀に向け、日本発の一大文化事業
『デジタルアーカイブ構想』が始動開始

−−『デジタルアーカイブ国際会議’95』開催

昨年の12月に引き続き、今年で2回目を迎える『デジタルアーカイブ国際会議'95』が 芸術研究振興財団、マルチメディアソフト振興協会、ハイビジョン普及支援センター の3財団法人と、さらに今回は地域デジタルアーカイブとして「石川新情報書府構想」 を推進する石川県の参加により、11月28日に東京・青山のTEPIAホールと石川県・ 石川ハイテク交流センターの両会場をTV会議システムで結んで同時開催された。


専門家により新たな未来像を探究

この会議は、懸命な努力にもかかわらず崩壊・消失してしまう数多くの文化遺産を マルチメディア技術を駆使してデジタル映像の形で記録保存し、さらに情報ネット ワークを利用して随時閲覧可能なシステムを造りあげようという「デジタルアーカイ ブ構想」の実現に向けて本格的な足掛かりを構築するのが目的。東京芸術大学の平山 郁夫学長や国立民族学博物館の杉山繁治教授といった日本を代表する芸術や民族学の 第一人者と東京大学の月尾嘉男教授などマルチメディアの専門家が参画し、文化資産 とマルチメディアとの融合による、新たな未来像を探り合った。


TV会議システムで石川会場にも同時中継

東京会場では、キャスターとして活躍中の宮崎緑氏が進行を勤め、冒頭にマルチメ ディアソフト振興協会の山本卓眞会長が、また石川会場では石川県商工労働部の大塚 忠寿部長がそれぞれ開会の挨拶をし、引き続き東京芸術大学の平山郁夫学長による 基調講演が行われた。この講演はTV会議システムにより、石川会場にも同時中継され た。


両会場で活発な討論が繰り広げられる

このあと、パネルディスカッションが第1部は東京会場が「これからの日本社会と デジタルアーカイブ」をテーマに、また石川会場では「石川新情報書府構想の近未来 像」をテーマにそれぞれの会場で白熱した討論が行われた。第2部は「国内外に見る デジタルアーカイブ」がテーマ。石川会場から月尾教授が映像参加し、東京会場と 同時中継された。
なお、東京会場では歴史文化財のハイビジョン映像をはじめ、ハイビジョン立体物 美術品鑑賞システムや最新PC検索システムなどのデジタルアーカイブの各種先行技術 システムを展示・実演。入場者数は東京会場が約250名、石川会場が約200名を数え、 成功裏に幕を閉じた。


できるところから
実現させていきたい

−−財団法人マルチメディアソフト振興会・
山本卓眞会長の力強い開会の挨拶で
会議がスタート

まず、当会議の開催に先立っての山本会長の開会の挨拶の概要は次の通り。「文化財 を取り巻く状況は、特に発展途上国では厳しいものがあります。後世に残しておくべ き、遺跡、美術品、伝統工芸、あるいは古典芸能などが急速に消滅の危機にさらされ ている一方で、保護の観点から正倉院の宝物のように一般に公開されていない文化財 もあります。これらの文化財のうち、国宝級のものばかりではなく、地方に埋もれて いるものや伝統芸能など、保存・修理だけではなく、さらに研究の領域まで範囲を 広め、そのための情報源をつくろうという趣旨で始められたのがデジタルアーカイブ です。


実現には莫大な費用が必要

この活動には莫大な資金が必要ですし、ある程度のコマーシャリズムを導入せざるを 得ないだろうと考えています。節度をわきまえた適度なコマーシャリズムを投入して 、民間の力で文化財の保護、さらには研究までやっていきたいと思っています。しか も、わが国だけではなく、世界レベルで行われるように、日本が中心となってその先 鞭をつけるべきであろうと考えています。
 デジタルアーカイブ構想の実現に向けていろんな方々と準備を進めていたところ、 通産省が関心を示し、さらには、デジタルアーカイブ連絡協議会を来年の8月にスタ ートさせたいと考えていたところへ文化庁も強い関心を示すようになってきていま す。ただ、膨大な構想ですから、“できるところから実現しよう”というのが正しい アプローチではないかと思っています」



【全体報告】

【東京会場:第一部パネルディスカッション】

【石川会場:第一部パネルディスカッション】

【第二部パネルディスカッション】