Best Paper Award
 

優秀論文賞

『 コミュニケーションシステムの形成過程に見る知識共創の基盤 』
Basis of Knowledge Co-Creation in Formation of Communication Systems

北陸先端科学技術大学院大学
金野武司,森田純哉,橋本敬

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2013年度FoKCs最優秀論文賞受賞論文は編集委員会が定めた複数の評価者による厳正なる論文評価のもと,上記論文に対して与えることを決定致しました. 本賞は知識科学研究の発展に大いに寄与することが期待される論文に対し与えられるものです.

これまでコミュニケーションの研究といえば,会話の質的な側面に注目してその成立過程を記述することが多くなされてきました.これに対し,本論文は実験的手法を用いて,コミュニケーションを定量的に評価しています.実験では2人がペアになり,会話などの通常のコミュニケーション手段が制限された状態で,別々の部屋からノートPCを使って簡単な調整課題のゲームに取り組むことになります.実験の結果,意味を分かり合えるコミュニケーションの成立のためには3つの段階,(1)2者間の暗黙的な調整に基づき慣習的行動が成立する段階,(2)言葉通りの意味が分かり合える段階,(3)言葉が含んでいる多様な意味も理解しあえる段階,が含まれていることがわかりました.こうした取り組みは,「コミュニケーション」というものを説明したり,あるいは予測したりすることを可能にし,今後新たな仮説を生みだす可能性を持っています.その意味で,本論はコミュニケーション自体の基礎として,そして,更なる研究の基礎として十分な意義があるでしょう.また論文後半では,知識創造プロセスを野中の知識創造モデルと対比して説明しているところも非常に興味深いといえます.著者自らの専門領域内での論証ではなく,FoKCsの多様な参加者に対して開かれた議論を呼び起こすことにつながっています.