北陸先端科学技術大学院大学

先端科学技術研究科 博士前期課程2年 大西 翔太さん

留学先機関名:Kemuri Technology(インド)、 Code for America(アメリカ合衆国)
留学期間:2018年4月1日~2019年1月2日

トビタテ!留学JAPAN応募のきっかけ

 留学のきっかけは博士前期課程1年生の終わりに参加した神戸市主催のシリコンバレーツアーでの投資家へ向けたビジネスプランの提案と、ツアー後に行った「シビックテック」というITを活用した市民活動についての調査でした。それまではるか遠い存在だったアメリカという国との距離感を掴んだことで、英語を使ったコミュニケーション能力の強化や現地でのネットワーク構築を通じてこの国で働くための土台作りがしたいという思いや、研究テーマであるシビックテックについても先進地域であるアメリカでの取り組み、特に教育と市民活動の関係性を現地で学びたいという思いが強くなりました。当時就職活動も終えていたため、もう一度就職活動をしなければならない、修了が周りと遅れるなどの不安もありましたが、海外に出たい気持ちがどうしても抑えられず、博士前期課程2年生の秋に大学を1年間休学してシビックテックをテーマにアメリカに留学することを決めました。
 トビタテは、一般的な研究留学奨学金には含まれていないような語学学習やフィールドワークなどを組み込んだ自分独自の留学計画を立てることができることや、トビタテに参加した学生によってシェアハウス運営や地域内連携など、多様なコミュニティが形成されていることに魅力を感じ、応募しました。

大西1.jpg トビタテ!留学JAPANの事前研修打ち上げの様子

活動内容

 私の留学は3段階に分かれており、まず2018年4月からはアメリカ留学に向けた語学力とITへの理解を高めることを目的として、インドのバンガロールに拠点を置く Kemuri Technology というIT企業で技術者としてインターンシップを行いながら、現地の語学学校で英語を学びました。インド留学終了後には台湾でアジア最大のシビックテックイベントである g0v summit への参加とプレゼン発表を通じて国際的なシビックテック、特にアジアでの取り組みを学びました。台湾でのイベント終了後にはアメリカのサンフランシスコに拠点を置きシビックテック活動を行うNPO組織である Code for America の活動に3ヶ月ほど参加し、アメリカ国内のシビックテックが盛んに行われている10都市で実践者へのヒアリング調査や質問紙調査、参与観察などのフィールドワークを行いました。

大西2.jpg       インドでのインターンシップ先の社員旅行の様子

大西3.jpg      アメリカでの調査の成果報告会の様子

成長したこと

 日本にいるときは基本的にリスクを取らないことを心がけて生活していましたが、海外のシビックテックについての現地調査というほとんど前例がないことを、英語やITスキル、ネットワークも無い中で実施するという先の見通しがつかない状況の中、さらに体調管理や日々のコミュニケーションなど日本にいるときには気を使わなくてもよかったことまでうまくいかないという環境に身を置いて生活したことで、ひとまず自分の限界を決めずやってみること、そしてうまくいかなかったら改善を繰り返すという習慣が身につきました。その結果、留学中には新たな調査対象の発見や現地でのイベント開催、それを通じたネットワーク形成など、留学前には思いもよらなかった成功体験を何度も得ることができました。
 また、留学前は日本にとどまらず海外に出て活躍したいという思いを強く持っていましたが、留学中何度も海外の方に「あなたが日本人だから」という理由で助けてもらったり、日本にいるときは当たり前にしていたことを「礼儀正しい」と賞賛されるなどの経験を経て、自分が「日本人」であるということに誇りを持てるようになったと共に、自分の力で日本をもっと良くしたいという思いが強くなりました。

留学先での生活面について

 宿は初めの1ヶ月ほどは会社から用意していただいた社員寮に住んでいましたが、現地の生活にもっと馴染みたいという思いが強くなり、2ヶ月目からは現地の大学生などが暮らすシェアハウスに移住しました。価値観や生活習慣の違いなどで苦労しましたが、現地の文化に対する理解の向上やコミュニケーション能力の向上など得るものも大きかったです。
 食事については、インドでは衛生面の問題、アメリカでは価格の問題から留学中は毎日最低1食は自炊することを心がけました。また、自炊を始めてから日本にいた時と同じような食生活ができるようになったことで体調を崩すことが無くなりました。
 また、休日は海外で人気の meetup というアプリで面白そうなイベントを探して参加する、現地の友達と観光するなどできる限り外に出ることを心がけました。初めのうちは言葉の壁が厚く、会話についていけない、一緒に盛り上がれないなどの辛い思いもしましたが、そうしたアクティビティを通じて徐々にその国やその国に暮らす人のことを理解し、好きになっていったことで英語でのコミュニケーションへの抵抗がなくなっていきました。

これから留学を考えている学生へ伝えたいこと

 私は留学の内容も時期も個性的なものであったため、留学前には周囲にいた多くの人から反対されました。ただ、留学をしてみるとうまくいったこともいかなかったことも全てが糧になり、留学前に思い描いていたよりもはるかに大きく成長することができました。また、留学前に最も大きな不安であった「就職」についても実際に海外に出てみるとボストンキャリアフォーラムを始め、日本企業とマッチングする機会がとても多くありました。
 そうした点について帰国後にトビタテの研修や海外で出会った人と話している中で気づいたことは「日本はまだまだ留学に対する固定概念が強い」ということです。これから日本自体がグローバル化していくためには、制度面の整備だけでは無く私たち自身が多様な留学の成功事例を作っていくことで海外留学に対するハードルをもっと下げ、誰でも不安無く海外留学にチャレンジできるような環境を作っていくことが必要だと思っています。
 これから留学を考えている方には、ぜひ私のような留学の形もあるということを安心材料にすると共に、トビタテを始めとした多様な留学支援制度を存分に活用して、これまで誰も考えつかなかったような新しい形の留学成功事例を作ることに挑戦してほしいと思っています。また、私自身もみなさんがもっと留学をしやすい社会づくりに向けて今後も活動をしていきたいと思っていますので、ぜひ相談や質問等ありましたらご気軽にご連絡ください。

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