産学官連携の取り組み

2020年 12月1日

(前編) 「人間らしさ」を備え人間に合わせるゲームAIの研究は、ゲーム分野以外での活用も期待

本学はビジネスや日々の生活で欠かせない存在になっている情報技術を、「楽しく学び、楽しく暮らせる社会」に活用する研究にも取り組んでおり、今回は、ゲーム・エンタテインメント領域の池田心准教授が進めているゲームAIの研究を紹介します。ゲームAIとはプレイヤーの敵になったり、仲間になったり、環境を作ったりするプログラムのことですが、「強い」だけではなく、プレイヤーを「楽しませる」「教える」ゲームAIの実現を目指す様子を見ていきます。

 

ゲームAI研究に進むきっかけは厳しかった父の囲碁の指導
子どもの頃に遊んだRPGも満足できるものではなかった

今のようなテレビゲームが登場する前は、将棋や囲碁、ボードゲーム等がゲームの主流でした。池田准教授も子どもの頃に父親から囲碁を教えてもらいましたが、その教え方はとても厳しいものでした。「何にしても厳しい教え方をする父でした。いくらハンデをもらっても勝てないので、囲碁はつまらないゲームと感じていましたね」と当時を思い出します。また、小学生の時に有名なRPGで遊んでいると、登場人物が望んでいない行動を取るケースが多く、自分ならこういう動きをさせるのに、と何度も不満を覚えたそうです。「ゲームを対象とした情報処理の研究であるゲーム情報学の分野は、これまで強さを求める研究が主流で、楽しませる、教えるといった研究は始まったばかりなのです」と池田准教授はゲームAI研究の現状を指摘し、「私が研究で重視するのは、ゲームのプレイヤーはどんなことができたら嬉しいかです」と、こだわりを示します。

ゲーム・エンタテインメント領域の池田心准教

 

ゲームを研究している人がほとんどいなかった時代
「最適化」を研究テーマに掲げて今の素地を整える

池田准教授が研究者としてスタートを切った当時、ゲームを研究している人はほとんどいなかったと言います。そのような中で研究に取り組んだのは「最適化」でした。最適化とは、制約条件の下で複数の選択肢を組み合わせて成果を出す際、その成果が最大になるようなものを見つけることです。私たちの身近なところでは、池田准教授も開発に携わったエレベーター等に見られます。複数機設置されたエレベーターが時間帯やフロア毎に効率的に利用できるように最適化されているのです。池田准教授が最適化の研究に従事していた2000年代に入った数年後、コンピュータ将棋ソフトのBonanza(ボナンザ)が現れ、以降、将棋や囲碁のAIが強くなり、ゲームAIの研究が本格化します。当時を振り返りながら池田准教授は、「敵としてのゲームAIをプログラムする時、プレイヤーである人間に合わせて強くしたり、弱くしたりして、しかも不自然ではないように良い勝負を演出することが大事です」と語り、ゲームAi開発のポイントを指摘します。

エレベーター等最適化の技術は身近なところで活用されている(イメージ)

 

研究者であると同時に熱心なゲーマーであることが強み
目指すゲームAIの研究は「人間らしさ」の定義から

ゲームAIの研究を始めた頃、池田准教授の心を揺さぶることがありました。「任天堂の故岩田聡社長が講演で、ご自身がゲーマーであることを誇らしげに公言されたのです」と語る池田准教授は、「ゲーマーだから分かる“ゲームやゲームAIの問題点”があるので、ゲーマーとしての立ち位置はとても大きな力になります」と続けます。つまり、ゲーマーではない研究者が強さや点数といった機械的な指標だけでゲームAIの研究に取り組むケースと違い、ゲーマーのように素直にゲームを楽しむプレイヤーとしての目線が、研究を進めるうえで大きなモチベーションになると言います。「AIの技術を理解する時、その着眼点は弱いゲーマーのものも含まれるべきです」と話す池田准教授は、ここでも強さを優先するゲームAI開発に疑問を呈します。「人には思考の癖や勘違いし易いといった弱いところがあります。このような人間らしい側面を考えずに無慈悲に対応するゲームAIを使うと、たとえそれが仲間として行動するゲームAIでも不愉快になりますよね。当然ですが、人間がゲームAIに合わせるのではなく、ゲームAIが人間に合わせなければならないのです」とする池田准教授は、いまゲームAIが持つべき「人間らしさ」にこだわっています。

池田研究室では、現在19名の学生が学んでいます。池田准教授が彼らに求めるのは、「人間らしいゲームAIを作成するためには何が大事か?」ということです。このテーマで全員が自らのゲーム体験をもとに議論を重ねています。「新しいゲームの知識は学生が詳しいですが、ゲームAIの歴史や技術は私が詳しいですから、お互いに刺激し合って研究を進めていきたいですね」と話す池田准教授は、学生の議論を見守りながら、人間らしいゲームAIの追求に忙しい日々を送っています。

池田研究室のゲームに関する研究の方向性をマップ上に示した図

 

次回は、「人間らしいゲームAIとは何か」とその開発に向けた研究の模様をお伝えします。

 

本件に関するお問い合わせは以下まで

北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部
産学官連携推進センター
Tel:0761-51-1070
Fax: 0761-51-1427
E-mail:ricenter@jaist.ac.jp

■■■今回の研究に関わった本学教員■■■

ゲーム・エンタテインメント領域
池田心 准教授

https://www.jaist.ac.jp/areas/et/laboratory/ikeda.html