産学官連携の取り組み

2020年 12月8日

(後編) 「人間らしさ」を備え人間に合わせるゲームAIの研究は、ゲーム分野以外での活用も期待

前編で「人間がゲームAIに合わせるのではなく、ゲームAIが人間に合わせなければならない」と指摘した池田准教授は、「人間らしいゲームAI」の実現を目指しています。池田准教授が考える「人間らしさ」とは何か、そして、ゲームAI技術の応用についても見ていきます。

 

人間とプレイしている感じを与えられるAIを目指す
研究を進めるうえで大切なのはゲームに不満を感じること

池田准教授が考える人間らしいAIとは、ゲームをしている時、プレイヤーがあたかも人間とプレイしている感覚になれるものです。具体的には「極端な例ですが、AIは元々何の迷いもなく決められた通りに動くものです。そうではなくてミスをしたり、反応が遅れたり、あえて無駄に悩んだり、後悔したり、くよくよするような心の機微や、怒ったり、悲しんだりする感情を持っているように見えるAIです」と、考えている人間らしいAIを話し、さらに「プレイヤーを挑発したり、カッコイイ動きをしてみようとするような、人間臭いAIができたらいいですね」と、これからの抱負を口にします。一方で、池田准教授はゲームAIの研究には、ゲームに不満を持つことが大切だと言います。その不満を解消することが、人間にAIを近づかせる一つのきっかけになるからです。この点では、テトリスの国内ランキングで上位に入った経験がある研究室の学生が、「テトリスは初心者には優しくないと感じました」と指摘するなど、池田准教授の指導が学生に十分に伝わっていることが分かります。

ゲームプレイにおける“人間らしさ”の例」スライド資料

 

人間の感情をいかに汲み取ってゲームに反映させるか
ゲームをする目的はスコア狙いではなく、楽しむこと

「人間とコンピュータの間には、単純にどちらが強い、弱いということではなく、思っている以上に多くの違いがあります。例えば、人間がミスをする時は頭の中ですることもあるし、画面から目に入ってくる時の認識のミス、適切な行動をしようとしても操作でミスをすることもあります」と人間とコンピュータの違いを指摘する池田准教授は、人間らしいゲームAIを作るだけではなく、人間のミスをサポートする仲間のようなAIの有益性にも言及します。「仲間としてのAIが、人間が持つ弱みや意志、感情を上手く汲み取ってあげて、人間の思いに合わせることが大事になると思います」と求めているゲームAIの姿を語ります。

いま、囲碁のゲームAI開発の分野では、相手の強さに応じて手加減するものや、またコーチングをするようなAIが完成に向かっているといいます。「プロ棋士を強くさせるような、ゲームの対戦相手を強くする開発は誰でもできます。そうではなくて、あまり上手ではないプレイヤーが囲碁をもっと楽しめるように、ゲームAIが上達を支援する“教えるプログラム”の開発が世界的に進められています」と話す池田准教授ですが、その実現には課題があることを指摘します。それは「強いプログラム」は点数等で順位が付けやすいものが多いのに対して、「楽しませるプログラム」は評価軸が一つではなく、ケースバイケースで楽しさの評価が異なってくることです。現在は、池田准教授や研究室の学生たちが意見を出し合って、個別に「楽しませるプログラム」の評価基準を設ける取り組みを進めています。

そして、「ゲームの本来の目的は、ゴールに到達すること、高い点数をあげること以上に楽しむことのはずです。そのためには、人間らしさを意識してゲームはデザインされるべきで、ゲームを単純に早く、上手く進めることを目的とする現在のゲームAIは、まだまだ改善の余地があると思います」と話します。

「碁を教えるロボット」のイメージ資料

 

「楽しさ」をゲームAIに教えることで広がる可能性
ゲームAIの研究で培った技術の応用は多方面に渡る

今後の研究について池田准教授は、「私や学生がいま行っている研究を進めるだけで、面白いものになるでしょう」と自信を示します。その際にポイントになるのが、「楽しさ」とはどういうことかを定義し、それをコンピュータに教えて理解させ、プレイヤーに還元することだと言います。例えば、ゲーム中にコインを拾ったり、敵を倒したりする時、現在はその動作一つひとつを考えてプログラミングをする方法がとられていますが、そもそもなぜコインを拾ったり、敵を倒したりするのかというと、それは楽しいからです。そうなると、定義された「楽しさ」をコンピュータに教え込んで応用できれば、動作のあれこれをいちいちプログラミングする必要はなくなります。池田准教授は、「現在、楽しさをベースにプログラムされたゲームAIであれば、統一的に人間らしさの多くの部分を体現させられるのではないかという仮説があります。そしてその先に、よりよく人間らしさを説明するためのモデルの構築ができればと思います」と、高度な人間らしさを備えるゲームAIの開発に向け、着実に歩を進めていることを示します。

ゲームAIの研究は、今後様々な分野で応用されることが期待されています。前編の最適化に関する箇所でエレベーターの制御について触れましたが、当時から池田准教授はエレベーター運用の最適化の開発に携わり、現在はその後に開発された新しい技術システムを基に、エレベーターの待ち時間を20%削減するような研究にも取り組んでいます。そのうえで、今後の共同研究先としては、一緒にプレイして楽しいコンピュータプレイヤーの作成やゲームステージ(構成)、パズルを自動生成する技術が活用できるゲーム会社や教育系企業、そしてエレベーターに限らずシステムの制御に関する開発を行っている会社をイメージしています。人間らしさにこだわった人間に合わせるゲームAIの研究は、さらに幅広い分野から注目を集めそうです。

囲碁を題材に学生と議論する池田准教授

 

<シーズレポート> 「人間らしさ」を備え人間に合わせるゲームAIの研究は、ゲーム分野以外での活用も期待(前編)はこちら。

 

本件に関するお問い合わせは以下まで

北陸先端科学技術大学院大学 産学官連携本部
産学官連携推進センター
Tel:0761-51-1070
Fax: 0761-51-1427
E-mail:ricenter@jaist.ac.jp

■■■今回の研究に関わった本学教員■■■

ゲーム・エンタテインメント領域
池田心 准教授

https://www.jaist.ac.jp/areas/et/laboratory/ikeda.html