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◇ M-BIP Stories Vol.8 2021年度 優秀賞、ISICO賞、北陸銀行賞 金沢大学

【M-BIP Stories vol.8】 2021年度 優秀賞、ISICO賞、北陸銀行賞 
金沢大学大学院 人間社会環境研究科 博士後期課程1年 髙野里紗さん

「M-BIP Stories」では、毎年Matching HUB Hokurikuイベントに合わせて開催される、学生を対象としたビジネスアイデアプランコンペティションM-BIP(Matching HUB- Business Idea Plan Competition)の歴代受賞学生のその後のストーリーをご紹介します。

今回は、2021年度のM-BIPで優秀賞、ISICO賞、北陸銀行賞を受賞した、
金沢大学大学院 人間社会環境研究科 博士後期課程2年  髙野里紗さんにお話を伺いました。

―現在、M-BIP受賞プランを形にした株式会社LFORの代表取締役CEOとしてご活躍されている髙野さんですが、同社について詳しく教えてください。

髙野里紗さん(以下、髙野):株式会社LFORは、金沢大学の金間大介教授の研究室に所属するメンバーを中心に構成されています。2022年2月に創業、現在は6名 で活動しています。私たちのミッションは、より多くの女性が心身ともに健やかに生きる社会を実現すること。そのためにも、忙しい日々の中で鈍感になりがちな自分の心身に目を向けることで、自分自身への理解を深めながら、心と体を自分自身で労わるきっかけを提供することが必要だと考えています。「心と体を一体として根本から不調にアプローチする」という漢方のコンセプトを日常生活に取り入れやすくするために、国産紅茶と国産生薬の非薬用部をブレンドした漢方茶「百草紅茶」の開発・販売だけでなく、オンラインサロン事業、美容事業など、女性の健康に寄り添う事業を中心に展開していきたいと考えています。

―創業から半年ほど経ちましたが、進捗はいかがでしょうか。

髙野:百草紅茶事業に関しては、2022年6月1日から高級化粧品メーカーである株式会社アルビオンと共同研究を開始し、様々な製品やサービスの開発に向けて取り組んでいます。石川県内では、金沢市・小松市のショッピングモール内にあるアルビオンの店舗で製品を販売しており、国産生薬に関するワークショップなども開催しました。さらに、M-BIPの北陸銀行賞の副賞としてチャレンジしたクラウドファンディングでも、「国産生薬を有効活用する」というストーリーで、全国から89万円のご支援をいただきました。

―そもそも漢方に興味を持たれた理由はなんだったのでしょうか。
髙野:創業にあたって、私たちは女性の心身の健康維持を阻害する「未病」という課題にアプローチしたいと考えました。未病とは、通院するほどではないけれども、倦怠感などの体調不良が続いている、いわば「病気」と「健康」の中間のような状態のことを指します。養命酒製造株式会社の調査によると、30代から50代の84.8%が未病に悩まされているそうです。創業メンバーの個人的な経験などから、未病へのアプローチとして「漢方」に注目し、漢方内科医として活躍される医師 にお話を聞きに行きました。元々漢方についての知識はなかったのですが、お話を伺う中で、「頭が痛くなったから痛み止めを服用する」といったような対処療法的な薬の使い方ではなく、食生活や生活習慣などを含めた「暮らし方」の改善を通じて健康にアプローチする漢方の考え方に共感し、漢方を女性の生活に取り入れやすくするための事業をはじめたいと考えるようになったのがきっかけでした。さらに、私自身が長年、国産紅茶を事例に研究を行っている中で農家さんとの信頼関係やつながりが持てたこともあり、国産紅茶と国産生薬の非薬用部をブレンドしたお茶の開発を通じて、日々の暮らしの中で「ほっとする時間」を提供できるのではないかと考え、百草紅茶事業を立ち上げました。

―M-BIPにご応募いただいた時点では、起業しようとお考えだったのでしょうか。M-BIP応募の経緯について教えてください。

髙野:当時は考えていませんでした。私たちが所属する金沢大学金間研究室は、イノベーションやマーケティングを研究しており、その一環としてビジネスコンテストにチャレンジすることになりました。ビジネス自体もまだまだ構想段階だったので、ビジネスコンテストへの応募には少しハードルがあると感じていましたが、同時に自分たちのビジネスに対する外部からの評価をいただきたいという思いがありました。そこで、全国で様々なビジネスコンテストが開催されているなかでも、ビジネスアイデアを評価していただけるというM-BIPの特色に魅力を感じ、応募しました。また、結果として優秀賞をはじめ3つの賞をいただくことができ、さらにクラウドファンディングにも挑戦できることになったことで、起業という選択肢が現実的なものになりました。そこから、6名を創業メンバーとして2022年2月に創業し、現在に至ります。

ー株式会社LFORは「あなたの真の健康をあなたと共に創る」をミッションとして掲げていますが、今後のビジネス展開についてはどのようにお考えでしょうか。

髙野:百草紅茶事業に関しては、現在「春夏秋冬」の4種類のブレンドを販売しておりますが、今後は全国各地の農家とコラボレーションしながら、プレミアムラインとしてご当地ブレンドを展開していきたいと考えています。当事業は、女性の健康のほかにも、国産の紅茶や生薬を取り巻く様々な課題の解にも貢献できると考えています。国産生薬に関しては、現在輸入品への置き換えなどによる国内市場の縮小やそれに伴う農家の収入減が喫緊の課題となっています。そこで、私たちの製品では地元石川県白山市産のトウキの、本来であれば捨てられてしまう葉の部分を使用しています。最近話題となっている国産紅茶ですが、実は事業の存続に危機感を抱く緑茶農家が転身するケースが多いんです。その需要増に貢献することで、日本の農業の課題解決にも取り組んでいきたいと考えています。今年11月5日(土)6日(日)に南九州市知覧で開催される第20回全国地紅茶サミット in 南九州市にもLFORとして出展予定です。 もし会場に足を運ばれる際にはぜひお立ち寄りください!

髙野:株式会社LFORのビジョンに関しては、将来的には一人一事業体制で多角的な事業展開を進めていきたいと考えています。私たちのメンバーのほとんどが女性ということもあり、女性に寄り添う会社として、女性がやりたいと思うことをどんどん実現できる「場」づくりにも貢献していきたいと考えています。

―現在、金沢大学大学院の博士後期課程に所属し、イノベーションやマーケティングの研究にも打ち込まれている髙野さん。ご自身のキャリアビジョンについてはいかがですか?

髙野:私自身、紅茶好きが高じて国産紅茶を事例に取り上げ研究を始めたのが、金間教授に師事するきっかけでした。ですので、より多くの女性にお茶の魅力を感じてもらいながら、忙しい日常の中で自分を振り返る時間を提供する百草紅茶事業には、大きなやりがいと感じていますし、ライフワークにしていきたいと考えています。一方、実業家としてだけではなく研究者としてのキャリアも追及していきたいと考えておりますので、研究と実践としてのビジネスという両輪を大切にしながら、自身のキャリアを形成していきたい です。

―最後にM-BIPにチャレンジしようとしている学生の皆様に向けて、メッセージをお願いします!

私たちはM-BIPを通して、より現実的に起業を考えられ、貴重な機会となりました。このコンテストへの出場を機に応援してくださる方も増え、参加して良かったと思っています。ぜひ、迷われている方は出場することをお勧めします!

―ありがとうございました。今後のより一層のご活躍を楽しみにしています!