Beyond M-BIP

「学生の自由な発想から生まれる“ワクワク”をたいせつに」 中小企業基盤整備機構 いしかわ大学連携 i-BIRD チーフインキュベーションマネージャー・大西直之氏インタビュー

産学官金連携マッチングイベント「Matching HUB」で開かれる学生ビジネスプランコンテストMatching HUB Business Idea Plan Competition、通称「M-BIP」は、学生のアイデアや研究成果をビジネスへとつなげ、若い力で地域にイノベーションを起こすことを目指しています。入選者は、Matching HUB 会場内のポスターセッションの場で企業に直接アピールでき、ファイナリストに選ばれた学生は、副賞として地元企業との会談や他ビジコンへのシード権といった、アイデア実現の足掛かりを掴むことができます。

今回は、「M-BIP」のメンターとして学生たちを多角的にサポートする 中小企業基盤整備機構 いしかわ大学連携インキュベータ(以下、i-BIRD)の大西直之さんにお話をうかがいました。大西さんはチーフインキュベーションマネージャーとして、起業を目指す大学の研究者や地元の中小企業のイノベーション創出を支援するため、コンサルティングをはじめとした幅広いサポートを行っています。

 

昨今スタートアップを目指す学生が増えていますが、若い世代が「起業」することの強みとはなんでしょうか。

大西:学生起業家の強みは実行力です。人は年齢や経験を重ねると保守的になり、それが新しいアイデアを生む弊害となりますが、若い人たちにはそれがありません。“後先を考えない”と言うと聞こえは悪いですが、実際に世の中を変えるレベルで成功した企業の多くは、学生をはじめとする「若い力」によって生まれたものでした。世界を変えるイノベーションを実現した名だたる起業家たちは果たして最初から緻密なビジネスプランを組み立てていたでしょうか。私はそうではなく、自分のやりたいことを実現させるために突き進んだ結果が、成功へとつながったと思っています。

「M-BIP」ならではの魅力や、他のビジネスコンテストとの違いはなんでしょうか。

大西:M-BIPには2017年の初開催時から携わっていますが、採算性などのビジネス的な側面よりも、まずは学生が日々の生活や研究活動から得たアイデアを評価しようではないかというのが「M-BIP」のコンセプトです。ですので、これまで興味はあっても二の足を踏んでいた学生のチャレンジを受け入れる土壌が「M-BIP」にはあります。それによって、学生らしい自由なアイデアが集まるだけでなく、彼らをサポートする我々のようなメンターにとっても、ビジネスプランに多くの「伸びしろ」が残されている状態からブラッシュアップに携わることができるわけです。実際参加した学生さんからは、“大人の方々が真剣に、自分たちのアイデアに耳を傾け、考えてくれることに感動した”という声も聞きました。

ビジネスプランのブラッシュアップにあたって、大西さんが大切にしていることを教えてください。

大西:「M-BIP」は、学生にとっては、どういったプロセスでビジネスが成り立っていくかを考える貴重な場にもなっています。どのようにしてモノをつくるのか、ターゲットはどこなのか、利益を出すにはどうすれば良いか…そういった部分を「大人の視点」からフォローしながらも、せっかくの新しいアイデアを潰さないように、こちらが思うビジネスプランを押し付けるようなことはしません。そのために心がけているのは、学生さんの思いを絶対に否定しないことです。学生自身がどう考えているか、なにをやりたいのか。そのアイデアがビジネスとして大成するかどうかの前に、発案者本人がワクワクしているかが大切なのです。

「M-BIP」にチャレンジする学生さんはどのような方が多いのでしょうか。

大西:自分のやりたい事に向かって突き進んでいく姿勢というのでしょうか、とにかく目の色がキラキラと輝いている学生さんが多いように感じます。そして主体性がある。言われた通りにやるのではなく、自分自身で物事を考えて行動をするタイプの学生さんが多いですね。中でも印象に残っているのが“ウォーキングアプリを使った道路の損傷や危険箇所を共有できる仕組み”というアイデアを生み出した学生チーム。もともと同じ岐阜高専に通っていたメンバーが、卒業後地元を離れてそれぞれ別の大学に進んだ後も、アイデアの実現に向かって手を取り合う姿に感銘を受けました。街にある道路の損傷を地元住民が見つけてアプリに登録し、自治体に報告するというビジネスアイデア自体も面白く、地域コミュニティへのアプローチを具現化したビジネスとして、今後の展開に期待しています。

学生のきらりと光るアイデアの実現を支援する「大人」たちが、「M-BIP」に携わることで得られるものはなんでしょうか。

大西:企業が「M-BIP」に参加する大きなメリットは大きく分けて2つあります。1つめは、学生の自由な発想をベースにビジネスの「種」をつくる絶好の機会を得られること。そして、そうしたアイデアを自ら発案し、さらに行動に移せる人材とも出会えることです。学生たちとビジネスアイデアをカタチにするだけでなく、彼らをパートナーとして迎え入れることで自分たちの会社にも変化を与えてくれる。組織内にイノベーションを起こすためには、柔軟な発想を持つ若い人たちのアイデアが必要なのです。

最後に、今後の「M-BIP」に期待することを教えてください。

大西:コロナ明けムードが強まるなか、過去3年間に実現できなかった新しい挑戦を求める企業も多いのではないかと思います。学生の熱意あるビジネスアイデアに対して参加企業が興味を示し、銀行からも出資の話が出て、最終的にビジネスに結びついていく、そんなエコシステムが生まれることを期待しています。i-BIRDならびに(独)中小企業基盤整備機構としては、国が掲げるスタートアップ支援の一環として、とくに学生の起業やアントレプレナーシップの醸成を支援する「M-BIP」の取り組みは、たいへん意義のあることだと感じています。100のアイデアを100とも成功させるのは難しくとも、100のアイデアから1でも成功させ、残りの99をしっかりとケアしていく。私自身はそういった視点で「M-BIP」とこれからも関わっていきたいです。

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大西さん、お忙しい中ありがとうございました!今年の「M-BIP」は、北海道から九州まで全国の学生から、昨年を上回る62の提案がありました。数々のきらりと光るビジネスアイデアの中から、28提案が入選、そのうちの12提案がファイナリストとして選ばれました。ファイナリストの最終審査はMatching HUB Hokuriku2023会場内で11/9(木)、入選者のポスターセッションは翌日の11/10(金)に行われます。来場登録は専用ポータルサイトより受け付けております。学生の熱意と若い発想が生み出すワクワク感をぜひ会場でご体感ください!

入選者ならびに機関賞についてはこちらからご覧いただけます。