JAIST Nishimoto Laboratory

「批判歓迎」なブレインストーミングでよりよいアイデア創造を!

西本研究室

オズボーンが考案したアイデア生成技法のブレインストーミングは,今でも多くの企業などで活用されています. ブレインストーミングには,4つのルールがあります.すなわち,1)批判厳禁,2)自由奔放,3)質より量,4)結合改善です. このルールに従うことによって,幅広い視点からの多様なアイデアが得られると言われています. 第1のルールである批判厳禁は,批判されることによってアイデア生成者が萎縮してしまうことを防ぐために設定されています. しかしながら,一方で,アイデアに対する「建設的」批判は,アイデアの改善やさらなる発展的アイデアの創造に有効であることも示されています. なんとかアイデア生成者を萎縮させることなく有用な批判を行うことはできないでしょうか.

Criticism Climber は,この矛盾した要請を満たすことができる,電子ブレインストーミングシステムです. このシステムを用いたブレインストーミングは,2段階に分けて実施されます. 第1段階は,通常どおりのブレインストーミングを行う段階です.このブレインストーミングは,対面口頭で行うのではなく, Criticism Climber の遠隔会議機能を用いて非対面で実施されます. 同時に,ブレストを行うのとは別のグループが,やはりCriticism Climber が提供する機能を用いて, ブレストで生成されるアイデアを逐次チェックし,批判を行います.ただし,このような批判が行われていることや,批判の内容そのものは, ブレストを行っているメンバーには一切知らされません. こうして第1段階が終了すると,第2段階では,ブレストを行っていたメンバーに対し,ブレスト中で提案された個々のアイデアに対して なされた批判を提示します.ブレストのメンバーは,提示された批判を考慮して,その批判を乗り越えるためのアイデアを案出します.

Criticism Climber を用いた批判付きのブレストを,従来どおりの批判無しのブレストと比較した結果, 期待通り批判を乗り越える新たなアイデアが案出される様子が確認され,提案手法の基礎的な有効性が示されました.

提案手法の概要
DiCoMo2017シンポジウムで発表中の生田君
生田泰章,神田陽治,西本一志:アイデア発想におけるツッコミの効用:電子ブレインストーミングにおける批判的発言の活用に関する基礎検討,情報処理学会DICOMO2017シンポジウム予稿集,pp.17-24,2017.