2022.08.02 by 高棹 玄徳 Gentoku Takasao遺伝的アルゴリズムによる広域探索とDFT計算による局所探索の組み合わせは、固体触媒のような複雑系の非経験的構造決定を可能としました。しかし、実触媒サイズの系における構造決定においては、探索空間の拡大と局所解の増大による遺伝的アルゴリズムの早期収束が大きな障害となっています。本研究では、構造データベースからの移住による分散型遺伝的アルゴリズムの実装により早期収束の問題を解決、実触媒サイズのTiCl4終端MgCl2ナノプレートの構造決定を実現し、Ziegler-Natta触媒の一次粒子を表現する現実的な構造モデルを獲得しました。
2022.05.17 by 瀧本 健 Ken Takimoto高分子材料に耐久性を付与するためには、相乗効果のある安定化剤の組み合わせが不可欠ですが、耐久性試験のスループットが低いことや組み合わせ数が膨大であることから、系統的な研究が妨げられてきました。本研究では、マイクロプレートへの溶液製膜とマイクロプレートリーダーによる吸光度測定に基づいたハイスループット実験プロトコルを確立し、遺伝的アルゴリズムと組み合わせることで、透明プラスチックの黄変抑制に関する安定化剤配合の大規模探索に成功しました。得られた7年間に相当するデータを解析し、相補的かつ相乗的な安定化剤をできるだけ多く配合することが重要であるという配合設計指針を導ました。
2022.03.02 by Dongzhi Zhu車載の薄膜キャパシタには、絶縁破壊電圧が高く誘電損失の少ない、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)が主に使われています。本研究では、二酸化チタンナノ粒子を分散させたBOPPナノコンポジットを調製し、その誘電特性を詳細に検討しました。ナノコンポジットは理論値を遥かに超えた比誘電率を示し、その鍵がインターフェーズと呼ばれる中間層にあることを突き止めました。PPナノコンポジットの延伸は非常に難しく、BOPPナノコンポジットの研究はほとんど報告されていませんでした。独自技術であるリアクターグラニュール技術を用いることで技術的な課題を突破し、薄膜キャパシタに関する重要な知見を得ることに成功しました。
2021.11.01 by 和田 透 Toru Wada複雑で不均一な構造を持つZiegler-Natta(ZN)触媒の分析は難しく、未だに完全な構造解析は達成されていません。我々は、原料であるMg(OEt)2がZN触媒へと変換される過程を様々な分析法によって多面的に捉えることで、ZN触媒の活性構造の起源解明を試みました。本研究によって得られた成果、すなわち、担体であるδ-MgCl2の形成と成長、表面に存在する化学種の種類と存在比、不純物の生成と除去の過程といった観測事実を各ステップにおける重合性能と結び付けた系統的な情報は、触媒の系統的な設計を実現する上で非常に重要です。
2021.10.28 by Hui You有機金属構造体(MOF)を用いたthin-filmナノコンポジット(TFN)膜は、海水淡水化における透過性と選択性のトレードオフを解決するための有望な材料です。しかし、MOF自体の分散性や化学的安定性、および高分子マトリックスとの界面接合に課題がありました。本論文では、ポリドーパミン(PDA)でMOFナノ粒子をコーティングすることでこれらの問題を一度に解決できることを実証しました。実際、選択性を犠牲にすることなく、膜の透過性をほぼ2倍にし、耐ファウリング性を向上させることに成功しています。