JAIST Nishimoto Laboratory

人工知能の時代を生き抜くための創造活動支援手段の実現

深層学習(Deep Learning)に代表される近年の人工知能技術や,ロボット技術,センサー技術などの急速な進歩と普及により, 近い将来多くの仕事が機械に取って代わられることが指摘されており,すでに一部では現実のことになりつつあります. 一方,そんな時代においてもまだまだ人間でなければうまくこなせない分野があることも指摘されています. それは,新しいモノゴトを産み出す「創造活動」と,その実行過程で必要な「社会的活動」です.
†Frey, C. B., and Osborne, M. A.: The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation?, Technological forecasting and social change, Vol. 114, pp.254-280, January 2017.

人間は,新しいモノやコトを創りだすことが得意です.

アーティストのように世界的な名画・名曲を作ったり,ノーベル賞受賞者のように画期的な発明・発見をすることばかりが創造活動ではありません. われわれの日常は,創造的な活動で満ち溢れています.
 たとえば,散歩しながらなんとなく口ずさむ,自分自身も初めて聞くメロディ.
 たとえば,ありあわせの材料で作る,夕食の名もない料理.
 たとえば,友達や同僚たちとの雑談で生まれる,新しい遊びや仕事のアイデア.

このように,人間は新しいモノゴトを創り出すことがとても得意で,大好きなのです. つまり,誰もが創造的能力を持っています. ただ,その能力を思うままに駆使し,発揮することができていない人はたくさんいます. なんらかの手助けが必要です.

人工知能の時代を生きるわれわれに必要不可欠な創造活動支援技術

そこで当研究室では,人間の日常生活に埋め込まれた大小様々な創造行為をより高度な創造活動へと展開可能とし, 人工知能の時代においても人々が活き活きと活躍できるようにするための,創造活動支援技術の研究開発を推進しています. 我々の研究室でも必要に応じて人工知能などの先端技術を扱うことはあります. しかしそれは,それらの先端技術の性能向上を目的としているのではなく, 人を創造的にするためには先端技術をどう使うべきかという先端技術の使い方を考案することを目的としています.

現在推進している研究テーマは,大きく以下の5つの分野に分かれています.それぞれについて,より詳しく知りたい方は,各項目のタイトルをクリックしてください.

創造性発掘・支援技術

人はだれでも創造的能力を持っています.でも,その能力をうまく活用できなかったり,そもそもそんな能力を持っていること自体に気づいていなかったりする人もたくさんいます.このような「埋もれた創造性」を発見し,発掘し,発揮可能とする技術の研究開発を行っています.あなたも,自分の中に埋もれている創造性を探しだして,もっとクリエイティブな暮らしを楽しんでみませんか?

雑談がもつ創造的側面の強化拡張

学校や職場,家庭などで日々あたりまえに行っている「雑談」.ほとんどは天気や昨日見たテレビ番組などについてのたわいもない話に終始しますが,でも,ときどき有益な知識を得たり,さらにはすごいアイデアが生まれたりすることがありますよね?このような,雑談が持つ知識創造場としての機能を強化・拡張する技術の研究開発を行っています.雑談をもっとクリエイティブにしましょう!

音楽創作支援

音楽大好き!という人はたくさんいます.でも,ほとんどの人は既存の音楽を聴いて楽しんでいるだけ.でも可能であれば,楽器の演奏や作曲などの「音楽を創る」喜びを味わってみたいと思う人は,多いのではないでしょうか.そんな願いをかなえる,誰でも簡単かつ思い通りに音楽を生み出し,奏でることを可能とする技術の研究開発を行っています.あなたもきっと,ミュージシャンになれる!

妨害による支援

ある作業を「支援」するために,一般的にはその実行の障害となる妨害要素を除去したり軽減したりする手段をとります.しかし,妨害要素を除去すると別の問題が生じたり,妨害要素を採り入れた方がむしろうまくいったりすることがしばしばあります.我々は,妨害要素を有効活用して,より知的に活動できるようにする技術の研究開発を進めています.「艱難汝を玉にす」ですよね!

「知的ゴミ」の活用

人間は,いつも新たな知識を創りだしています.でも現実的にその大半は,活用されないままに忘れ去られてしまいます.このような,せっかく創造されたにもかかわらず用いられなかった知識(不用知)を余すところなく活用可能とする不用知の活用支援環境の構築を目指しています.「物質的もったいない」問題だけではなく,「知的もったいない」問題を解決して,知的資源の有効活用を実現しませんか?