産学官連携の取り組み

2020年 4月14日

(前編)熱をエネルギーに変える材料開発に挑む


JAIST-NETのホームページに新設した「産学官連携の取り組み」のページでは、JAISTの産学官連携本部が携わっている具体的な個々の事例を各2回に渡って紹介していきます。第1回目は、環境・エネルギー領域の小矢野幹夫教授の研究グループと(株)白山、石川県工業試験場による熱電材料の開発に関わる共同研究をお送りします。産学連携に至った経緯や、その実際を見ていきましょう。

 

熱を電気に、電気を熱に変換する熱電変換
環境に優しい発電を可能にする材料開発

人が生活を送るうえでエネルギーは欠かせません。そのエネルギーには様々なものがありますが、中でも熱エネルギーは一番たちが悪いものだと小矢野教授は言います。例えば光は100%をモーターで運動エネルギーに変えることができますが、熱エネルギーは絶対に100%を使うことはできない。この一番使いづらいとも言える熱から発電して電力に、つまり質の良いエネルギーに変えていくことは、環境問題等を考えると、とても大事なことだと分かります。
「体温のような熱でも発電できるようになれば、人々の暮らしにとって最も良いエネルギーになる」と小矢野教授が語る固い信念とともに進められているのが、熱電材料開発の共同研究です。

 

きっかけは金沢駅前オフィスでのセミナー
資金的な課題はNEDOの補助事業で解消

2015年6月。JAIST金沢駅前オフィスの開設記念として「エネルギーや環境問題に対して熱電技術で何ができるか?」と題したセミナーが開かれました。セミナーでは、新しい熱電材料の開発に取り組んでいる小矢野幹夫教授が、排熱から直接電力を得る「熱電発電」について講演し、それを聞いた(株)白山の関係者が熱電材料の共同開発の相談に来られました。既に熱電材料の開発に取り組んでいた(株)白山は、研究に必要となる資金を補助事業で確保することを思い立ち、様々な公募を調べたと言います。そのような中で目に留まったのがNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」プロジェクトでした。すると、応募したNEDOから石川県の大学に熱電を研究されている先生がいると教えられたのが小矢野教授であり、金沢駅前オフィスでの出会いにつながります。

 

産業側が期待したのはサイエンスと装置
大学が関心を寄せたのは製品化のプロセス

今回の共同研究で(株)白山の内田氏は2つのことをJAISTに期待したと言います。一つはサイエンス、もう一つが装置です。「私たちは新しいモノを作ることはできますが、なぜそうなるのか? といった成果物の背景やバックグランドの理解が追いついていないことが多いです。一方のJAISTは、原理、原則、物理に関する幅広い知見を有しているので、それらをベースにした指導を何度もいただきありがたかったです」と内田氏は感心します。また、JAISTはスーパーコンピュータをはじめ材料解析ができる非常に高度な装置を持っており、内田氏の職場ではできない数々の解析や分析ができたことも大きな力になったようです。
小矢野教授の指導の下、(株)白山との研究を担当したのは小矢野研究室の宮田全展助教でした。元々、理論と実験の両面から材料の探索をしていた宮田助教は、(株)白山から、「材料の理論的な予測や、性能を向上させるための材料の設計指針を予想して欲しい」との要望を受けたと言います。このことは正に自らが普段から携わっていることであり、企業の製品化のプロセスに携われることもモチベーションを高めたそうです。(後編に続く)

 

> 後編は、世界初の創製につながった産学連携の模様をお伝えします。

 

 

■■■今回の共同研究に関わった本学教員■■■

環境・エネルギー領域 小矢野幹夫教授
https://www.jaist.ac.jp/areas/ee/laboratory/koyano.html

小矢野研究室 宮田全展助教
https://fp.jaist.ac.jp/public/Default2.aspx?id=678&l=0