お知らせ

JAIST社会人ストーリー vol.4

出産による働き方変化もあって“強み”の必要性を痛感、
社会人学生が指導を受けやすいとの評判からJAISTへ

池田理恵

池田 理恵 さん (白肌研究室

総合オフィスメーカー勤務
サービス経営(MOS)プログラム(博士前期) 2018年9月修了予定

研究テーマ 「小さな行動から大きなうねり(変化)をつくりだすアプローチの研究 郊外住宅地における市民活動を事例として(仮)」

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  • 仕事と育児を両立させる日々、さらに大学院での研究を決意されたその動機は?

    池田 理恵さん(以下 池田) 私はオフィス家具メーカーで、オフィスの空間設計に携わっています。今まさに働き方改革が注目されていて、“働きやすさ”の追求も重要視されるようになりました。さらなる知識の必要性を感じる一方で、出産を機に私自身の働き方がガラリと変化して出産前のように我武者羅に働くことはできない。ならば、空間設計のデザイン以外にも自分の強みを持った方がいいのではないかと。知識を少しでも広げたいと思うようになりました。クライアントを説得するためにも、もっと理論や知識が必要なのではないかと考えたのです。息子が保育園に通っていた2年半前のことです。

  • 時間量を確保できなくなった代わりに、仕事の質を高めていこうという考え方でしょうか。そんな新たなチャレンジには躊躇するワーキングマザーも少なくないと思うのですが、不安は無かったですか?

    池田 私にはできないと諦めるのではなく、まずやってみよう。やってみてできないかどうかを考えてみようじゃないか。やりたいと思ったらできるんだということを周りにも認めてもらいたい……そんな気持ちで進学を決心しました。先ほどもお話したように、ここ数年で日本の企業での働き方もかなり変わって効率化が進んでいると思います。遅れている方だと思える私の勤務先もノー残業を推奨していますし。出産後は17時20分で仕事を終える短時間勤務を選んでいたこともあり、社会人コースの受講には差し障りがないという判断もしていました。家族の協力と理解もありました。ちなみに学内でまだ女性の学生は少ないのですが、昨年秋から同じ研究室にはもうひとりワーキングマザーが増えています。

  • 家事はご夫婦でシェアしながら、ですね。

    池田 夫もひとり暮らしの経験がありますし、分担しています。結婚前は家事をシェアできることが大切だと特には思っていなかったのですが、後になって、これはとても重要なことだと気づきました(笑)。勉強は夜中と、通勤時間で文献を読むなどして時間をやりくりしています。JAISTの2年目は修士論文に集中するため、必要な単位は1年目で取ってしまおうと考えたのですが、さすがに疲れが出たときもありまして。夫から「講義を取りすぎて疲れている」という苦言はありましたが、 「あなたがしなければならないことはたくさんの講義に出て満足することではなくて、研究でしょ」といった内容でしたね。

  • 進学先をJAISTに決めた理由は?

    池田 先生と学生との距離がとても近く、指導を受けやすい環境が整っているという話を知人から聞いていたことは決め手のひとつとなりました。国立なので授業料が安いという点、勤務先からの遠くないという点もありましたし。それならできるかもしれない、と。決断したら、あとは速かったです。

    池田理恵

  • 研究のテーマは、どのように決められましたか?

    池田 オフィス空間の設計では、完成した空間がその後、どのようにマネジメントされているか我々にはわかりません。そこに興味があったので、フューチャーセンターなどのマネジメントがどうなされているかを研究したいと考えました。しかし、企業内の調査は想像以上に難しいという事実に直面して。調査の対象がパブリックなものである方がデータを得やすいということも考え出しました。やがて私が興味を持ったのは、市民が行政からの働きかけではなくボトムアップとして何かアクションを起こすことがコミュニティの強さに繋がっていく、ということ。小さいアクションから変革へと繋げるにはどうすればよいか、ということでした。しかし、なかなか研究のフィールドに入り込めない状態が続いたのです。どう調査すればよいかもわからずにいたのですが、自分でやってしまえばよいのだと気づいて、そこから研究は動き始めました。

  • “小さなアクション”を起こして、自ら研究対象にもなってしまおう、と。

    池田 小さなアクションとして、昨年末に私が住む地域での多世代交流を仕掛けてみました。どういう人に来てもらいたくて、そのためにはどのようなサアービスを提供したらよいかなどアプローチの方法を、自分自身が理論と実践を行ったり来たりしながら、点を繋いで線、そして面に繋げていくことが必要だなと今、実感しているところです。JAISTで先生方の指導を受けながら、ブレイクスルーできたと思います。学校の講義以外でも、研究に関わる内容のフォーラムやセミナーに足を運んでいるのですが、どなたも実際に行動したことに基づいた話をされていて実に説得力があることに気づかされます。

  • JAISTの講義で、どんな収穫がありましたか?

    池田 理論に基づく説明によってクライアントは納得してくれる、というのはJAISTで学ぶようになってわかったことです。どのような根拠を示せば自分のアイデアを人に理解してもらえるか、少しずつですが勉強してきたなと思います。また、仕事と密接している講義内容で、職場での実践レベルに置き換えるとどういうことなのかを具体的に考えるところが、大学とは大きく違う点だと感じました。組織のマネジメントにも興味が湧いて来ました。会社での私のポジションでは経営に関わることになかなか介入できませんが、いつかはそこに携われればいいなと思います。

  • JAISTへの進学を検討する人たちに伝えたいことがあればお願いします。

    池田 迷っているのであれば、興味のある講義を「科目等履修生」として受講してみればいいと思います。その後、入学する場合には単位もそのまま加算されます。個人的には、吉田夏彦先生の「科学哲学・科学史」の講義に感動しました。数学とも科学とも哲学とも言わない領域を扱った内容で、実にエネルギッシュな1週間の講義でした。その素晴らしさが伝わりそうな知り合いの何人かには、すでに熱くすすめています。

    池田理恵